日本近代化の立役者《第3回 大正~昭和前期 編》

【まとめ】王と呼ばれた経営者たち

日本近代化の立役者《第3回 大正~昭和前期 編》

 アメリカの石油王ジョン・ロックフェラー、発明王トーマス・エジソン。彼らは自らの才覚で一代にして巨万の富を築き、「〇〇王」と称された。そして実は日本にも「〇〇王」がいた。今回は日本近代化の立役者となった日本の「〇〇王」たちをまとめてみた。

鉄鋼王 大谷 米太郎 (おおたに よねたろう)

 1881年生~1968年没。富山県小矢部市生まれ。大谷重工業の創始者。大谷製鋼所、大谷製鉄などを創業した。1923年の関東大震災後、復興のための鉄鋼需要で成長。また1964年に東京オリンピックの開催が決まると、ホテルニューオータニを建設した。巨万の富を得た大谷は「鉄鋼王」、「日本の三大億万長者(※)」と呼ばれた。

※日本の三大億万長者:関東大震災の復興や太平洋戦争などで財を成した菊池 寛実、南 俊二、大谷 米太郎ら3名の実業家たちのこと。

石炭王 菊池 寛実 (きくち ひろみ)

 1885年生~1967年没。栃木県那須郡生まれ。辰ノ口炭鉱、三友炭鉱、高萩炭鉱などを創業した。戦後は日本炭鉱を買収し、一大グループを築き上げる。南俊二、大谷米太郎と並び「日本の三大億万長者」と称され、「石炭王」と呼ばれた。

重工業王 鮎川 義介 (あゆかわ よしすけ)

 1880年生~1967年没。山口県山口市生まれ。鮎川財閥の創始者。日産自動車、日立製作所、日本冷蔵(現 ニチレイ)など、数多くの企業を傘下に置く日産コンツェルンを形成し、「重工業王」と呼ばれた。

タイヤ王 石橋 正二郎 (いしばし しょうじろう)

 1889年生~1976年没。福岡県久留米市生まれ。ブリヂストンの創始者。 ブリヂストンタイヤ、日本足袋(現 アサヒシューズ)などを創業した。靴底にゴムを用いた地下足袋を考案するなど、ゴム工業を中心に一大で石橋財閥を築き上げた。ゴム産業や自動車産業の発展に貢献し、「タイヤ王」と呼ばれた。

紡績王 武藤 山治 (むとう さんじ)

 1867年生~1934年没。岐阜県海津市生まれ。三井財閥で活躍した実業家。三井銀行に入行し、三井中興の祖である中上川 彦次郎らの下で、三井財閥の改革を推進する。鐘淵紡績(後のカネボウ)の再建を任されると、他の紡績会社を次々と吸収合併し、国内トップクラスの紡績会社へと成長させ、「紡績王」と呼ばれた。

製紙王 藤原 銀次郎 (ふじわら ぎんじろう)

 1869年生~1960年没。長野県長野市生まれ。富岡製糸場の元支配人。王子製紙の初代社長。王子製紙・富士製紙・樺太工業の3社を合併させ、日本国内の8割以上を握る製紙会社を築き上げ、「製紙王」と呼ばれた。

製紙王 大川 平三郎 (おおかわ へいざぶろう)

 1860年生~1936年没。埼玉県坂戸市生まれ。大川財閥の創始者。中央製紙、樺太工業などを創業した。浅野セメント、札幌ビール、日本鋼管など数多くの企業に携わり、一代で大川財閥を築き上げた。最盛期には経営する製紙会社が国内市場シェアの45%を占め、「製紙王」と呼ばれた。

電力王 松永 安左エ門 (まつなが やすざえもん)

 1875年生~1971年没。長崎県壱岐市生まれ。東邦電力(現 九州電力)の元社長。東京電力の元取締役。『電力統制私見』を通じて、民間主導の電力会社再編を訴えた。GHQ占領下で日本発送電会社(※)の民営化が迫られると、吉田茂首相の命で電気事業再編成審議会会長に選出された。9つの電力会社による分割民営化を実現した功績から「電力王」と呼ばれた。

※日本発送電会社:国家総力戦体制の構築を目論む日本政府によって、電力国家管理政策が計画され、それに基づき設立された半官半民のトラスト。

鉄道王 小林 一三 (こばやし いちぞう)

 1873年生~1957年没。山梨県韮崎市生まれ。阪急阪神東宝グループの創始者。阪急電鉄、阪急百貨店、宝塚歌劇団、東京宝塚劇場(現 東宝)などを創業した。鉄道の沿線に住宅や百貨店、娯楽施設などを開発し、相乗効果を生む私鉄経営モデルを創り上げた。JRがこの私鉄経営モデルを採用するなど、日本の鉄道経営に大きな影響を与えただけでなく、日本人のライフスタイルを大きく変え、「鉄道王」と呼ばれた。

鉄道王 五島 慶太 (ごとう けいた)

 1882年生~1959年没。長野県青木村生まれ。東急グループの創始者。東急電鉄、東急百貨店などを創業した。池上電気鉄道や玉川電気鉄道、小田急電鉄などを次々と吸収合併し、一大鉄道網を築いた。沿線の魅力を高めるため大学誘致に力を入れ、一例として慶應義塾大学に日吉台の土地を無償提供し、そこに日吉キャンパスが開設された。阪急グループの小林一三と並び「西の小林・東の五島」と称され、「鉄道王」と呼ばれた。

鉄道王 堤 康次郎 (つつみ やすじろう)

 1889年生~1964年没。滋賀県愛荘町生まれ。西武グループの創始者。箱根土地(後のコクド)、多摩湖鉄道などを創業した。武蔵野鉄道や旧西武鉄道を吸収合併し、一大鉄道網を築いた。また軽井沢や箱根など、日本を代表するリゾート地を開発した。西武グループを一代で築き上げ、「鉄道王」と呼ばれた。

証券王 第2代 野村 徳七 (のむら とくしち)

 1878年生~1945年没。大阪府八尾市生まれ。初代野村徳七の長男として、両替店の野村商店を引き継いだ。大阪野村銀行(現 りそな銀行)、大阪野村銀行証券部(現 野村證券)などを創業した。野村財閥を築き上げ、「証券王」と呼ばれた。

水産王 中部 幾次郎 (なかべ いくじろう)

 1866年生~1946年没。兵庫県明石市生まれ。マルハニチロの創始者。林兼商店を創業した。漁業、海運、水産物加工などを手掛ける一大グループを築き上げた功績から、「水産王」と呼ばれた。

時計王 服部 金太郎 (はっとり きんたろう)

 1860年生~1934年没。愛知県名古屋市生まれ。セイコーホールディングスの創始者。服部時計店、精工舎などを創業した。日本を代表する時計メーカーを築き上げ「時計王」と呼ばれた。

雑誌王 野間 清治 (のま せいじ)

 1878年生~1938年没。群馬県桐生市生まれ。講談社の創始者。報知新聞の元社長。『雄弁』、『キング』などの雑誌を創刊した。数多くの雑誌を創刊し、出版業界をリードしたことから「雑誌王」と呼ばれた。

編集王 宮武 外骨 (みやたけ がいこつ)

 1867年生~1955年没。香川県綾歌郡生まれ。編集者、新聞記者、ジャーナリスト。『滑稽新聞』、雑誌『スコブル』などを創刊した。言論の自由を訴え、数多くの雑誌や新聞を創刊したことから「編集王」と呼ばれた。

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