経営のプロフェッショナルたちによる
「経営力を上げる」メディア ❘ Since2009
著名経営者の経営者インタビュー

株式会社ライスカレー 代表取締役 大久保 遼

出口のその先に 第11回

既定路線を捨て、自分のオリジナリティを発揮できる場所を探す。現状に満足せず、高みを目指して挑戦し続ける。そんな大久保は東京大学出身の秀才だ。大学時代は学生起業に挑戦。世界のトップ大学の授業を視聴できるサービスを開発した。しかし、これはあえなく失敗。お金について知る大切さを痛感し、ゴールドマン・サックスに新卒入社する。だが巨大な組織で働く中、日に日に自分にしかできないことを模索するようになった。そしてついに一流企業の肩書を捨て、2014年にMomentumを設立。事業を軌道に乗せると、3年後にSyn.ホールディングス(KDDIグループ)にバイアウトした。その後はライスカレーの経営者に就任し、現在もIPOを目指し奮闘中。世間的にはエリートと呼ばれる人生を歩んできた大久保だが、意外にも「これまでの人生で自分が1番と感じられたことはない」と語る。貪欲に挑戦し続ける32歳の起業家。今回はそんな大久保の「出口のその先に」を聞いた。

IPOを目指すためにバイアウトを決断

―2017年7月にMomentum社をSyn.ホールディングスにバイアウト(会社売却)されました。どういう経緯でバイアウトしたんですか?

 実はMomentum(モメンタム)では設立時からIPO(株式上場)を目指しており、バイアウトする気はありませんでした。僕自身、事業家としての道を歩む以上はIPOを経験したいという想いがあった。パブリックカンパニーになることで、投資家の評価に晒されながら資本市場と対峙したいと思っていたんです。

 一方でバイアウトという選択肢は自分の会社を手放すことになります。僕は事業づくりだけじゃなく組織づくりもやりたかったので、できれば会社を手放したくなかった。それらの理由でIPOを目指していたんです。

 Momentumではアドテク領域のアドベリフィケーション(※)という分野でサービス展開してました。具体的なサービスとしては広告主のブランド価値を毀損するようなサイトを特定し、そういったサイトへの広告出稿を回避する手助けをする。そして広告投資効率を改善するというサービスです。

※アドベリフィケーション:広告掲載先の品質チェックのこと。
→詳しいMomentum社の事業についてはこちら(ベンチャー通信59号)

ad:tech tokyo international にて

 でもしばらくやっているうちに、このニッチな市場でIPOできるのかと疑問を持ち始めたんです。マーケットサイズ的にこの事業でIPOは難しいんじゃないかと。それからバイアウトという選択肢を少しずつ意識するようになりましたね。

 このままIPOするには新規事業を立ち上げ、新たな収益の柱をつくるしかない。僕は共同創業者の高頭君と話をして、またゼロから大変な新規事業の立ち上げをやるのか。本当にそこまでしてIPOしたいのか。真剣に話し合いました。

 そして何度も議論し合った結果、今の事業はIPOに向いていない。バイアウトしよう。そう意思決定したんです。それが2016年くらいのこと。2017年に実際にバイアウトする1年前くらいに決めましたね。

―当初はIPOを目指していた。でも既存事業では難しい。だからバイアウトを考え始めたというわけですね。

 そうです。バイアウトを決めたものの、高頭君は既存事業に強い思い入れがありました。一方で僕はこの事業をあと4、5年続けるより、IPOを目指せる新しい事業をやりたいと思っていたんです。だから僕がマジョリティーの株式を保有していたにも関わらず、実際にバイアウトする1年ほど前に、社長を高頭君と交代しました。事業に対してモチベーションが高い人が社長になったほうが、買い手企業にとっても良いですから。

 こうして僕は社長を退いた。Momentumを経営する立場から、Momentumの買い手企業を探す立場になったんです。僕はいくつかの企業と面談し、最終的に譲渡先となったKDDIグループのSyn.(シンドット)さんに出会いました。Syn.さんに出会ってからは、話がとんとん拍子に進みましたね。出会って3カ月後にはバイアウトが完了していたと思います。

―ちなみにMomentumの株主はバイアウトすることについてどんな反応だったんですか?

 実は株主にはバイアウトすることを事前に伝えてなかったんです(笑)。当然ながら相当怒られました。IPOするって言ってたのに勝手にバイアウトしちゃったわけですから。

 特に僕は社長という立場を他の人に任せ、自分は新規事業をやると言っていた身です。株主からすると、大久保は好き勝手やりやがってという感じで。もちろん僕もそれは自覚しており、ごもっともなので何も言い返せませんが(笑)。

 ただMomentum時代の株主の多くは、現在僕がやっているライスカレーという会社にも投資してくれてるんです。ライスカレーはMomentumをバイアウトした時の資金を有効活用し、現在IPOを目指せるほど順調に成長している。だからこのままライスカレーがIPOすれば、その株主により大きなリターンを生むことができると思います。

 そう考えると、僕はバイアウトという決断は間違ってなかったと思いますね。バイアウトしたからこそ、もう一度リターンを得る機会をつくれている。でもこれは結果論なので、自分からこんなこと言っちゃいけないかもしれませんけど(笑)。

―なるほど、大久保さんハート強いですね(笑)。

 いえいえ(笑)。でも僕が好き勝手やっただけではなくて、Momentumにとっても良い意思決定だったと思っています。というのも、MomentumはSyn.さんの傘下に入った後しっかりと成長してるんですよ。Syn.さんのようなシナジーが見込める会社にバイアウトしなければ、これほどの成長は難しかったと思います。もちろんバイアウト後もMomentumに残り、経営を舵取りした高頭君の頑張りが大きいのは言うまでもありませんが。

 あと当時のバリュエーションも高すぎず、ちょうどよかったんです。大抵のスタートアップはバイアウト時のバリュエーションが高すぎて、後々のれん代で減損(※)してしまう。それだと会社を譲渡したオーナーはハッピーですが、買い手企業は損することになります。Momentumはきちんとバリュエーションに見劣りしない収益を出せているので、Syn.さんにもしっかりと収益を生み出せている。結果、全員にとって良かったと思いますね。

※のれん代:企業が保有する無形固定資産のこと。買収で支払った金額と買収先企業の純資産との差額。
※減損:投資金額を回収できないと認識した時点で、回収可能であると判断した金額まで、固定資産の価値を減少させること。

バイアウト後も間髪いれずに次の挑戦へ

―Momentumをバイアウトした後は、すぐライスカレーをやっていたということですか?

 はい。実はライスカレーでやっている事業は、もともとMomentumでIPOを目指すための新規事業だったものが源流になっているんです。だから僕としてはMomentumをバイアウトしたことは通過点でした。よく会社をバイアウトすると燃え尽き症候群みたいになる人もいますが、僕はそんなこと全くなく、IPOを目指して変わらず事業をやってましたね。

ライスカレー創業メンバーと誕生日祝い
(中央右が大久保)
ライスカレー1周年祝い
(左上が大久保)

―ライスカレーではどんな事業をやってるんですか?

 コミュニティ関連サービスをやってます。コミュニティというと定義が曖昧ですが、現代で最も活発なコミュニティはSNSだと考えているので、SNSを軸としたマーケティングやメディア、アプリ、アパレル運営などをやってますね。

 最初のきっかけはMomentum時代に広告を研究する中で、あるデータを目にしたことでした。それは広告のクリエイティブのクリック率を測定した時に、プロが撮った写真を使うよりも、素人である一般ユーザーが撮った写真のほうがクリックされやすいというデータです。

 こういった一般ユーザーが生み出したデータのことをUGC(user generated contentsの略称)と言います。僕はそのデータを見て、UGCで広告効果を上げるサービスを思いついたんです。そして早速サービス化し、売り始めました。

 しかし、結果あまり売れなかった(笑)。顧客の話を聞いてみると、実はそこにニーズはなかったんです。思考錯誤する中でたどり着いたのが、現在ライスカレーの主力事業となっているSNSアカウントの運用支援サービスです。今でこそ似たようなサービスはあるものの、当時はまだアカウントの運用支援に特化したサービスは珍しかった。このサービスに早めにピボットしたことで、ライスカレーは順調に成長したんです。

―顧客のニーズを汲み取ってサービスをピボットしたと。

 もしMomentumの中のいち新規事業としてライスカレーの事業をしていたら、今とは違う結果になっていたかもしれません。なぜなら既存の広告事業とのシナジーを考えると、全く新しいSNSアカウント運用という分野に、即座に方向転換する決断はしづらかったでしょうから。

 でもMomentumをバイアウトし、ライスカレーは完全に切り分けてIPOを目指すと意思決定した。それによってSNSアカウントの運用支援サービスに速やかにピボットできたと思っています。そういう意味でもMomentumはバイアウトしてよかったと思いますね。

バイアウトは事業づくり、IPOは組織づくり

―バイアウトを目指す経営と、IPOを目指す経営では何か違いがあると思いますか?

 僕はバイアウトとIPOを目指すうえで、あるべき経営は異なると思ってます。バイアウトを目指すのであれば正社員は少ないほうがいい。たとえば、よく売り買いされているキュレーションメディアなどの例を見ても正社員は数名。その他はアルバイトやインターンで経営するケースが多いですよね。

 バイアウトにおいては正社員を多く抱えるよりも、できるだけ多くの利益を生んだり、ユーザーを獲得することが重要なんです。実際Momentumも技術寄りの会社だったこともありますが、創業時からずっと数人の社員で経営してました。創業時からバイアウト向きの事業だったんです。

―IPOを目指す場合はどうですか?

 IPOはバイアウトと思考回路が全然違います。僕も最近は外部の専門家と話すことが多くなり、そこでは「ちゃんと社員全員と雇用契約書を結んでますか?」など、組織の仕組みが整っているかを問われるんです。他に例を挙げると、労務問題を抱えていないかとか、稟議書や権限規程の整備ができていて、実効性のあるコーポレートガバナンスがきちんと効いてるかとか。

 でもバイアウトを目指す場合、こういったことが上場審査ぐらいの水準で求められることはありません。もちろん相応の組織体制やコンプライアンス体制は必要ではあるものの、IPOを目指す場合と比べれば管理や組織体制の整備に重点を置く比重が変わってくる。だから僕は、バイアウトは事業づくり、IPOは組織づくりだと思ってますね。

まずバイアウトしてからIPOを目指せ

―大久保さんはバイアウトしてIPOも目指されてますよね?今後そういったケースも増えるのでしょうか?

 最近の若手起業家を見ていると、IPO志向ではなく、ハナからバイアウト狙いで起業する人が増えたと感じます。僕自身もバイアウトしてからIPOを目指すというキャリアを歩んでみて、いきなりIPOを目指すよりもそうしたほうが良いと思ってますね。というのも、やはり個人のお金の心配がなくなるというのは非常に大切なことだなと。

 ライスカレーでは、早い段階からデットによる資金調達を進めてきました。本来、資本コスト(※)の概念で考えれば、事業成長に伴い必要になる運転資金は借入で賄われるべき部分も多いはずです。資金需要の性質を考え、借入を有効に活用することで、株式をむやみに手放さず必要な資金の手当てを計画的に行なっていく。Momentumの時は、急場をしのぐ為に、安いバリュエーションで自分の株式を手放さざるを得ない状況もありました。あれはつらかった。せっかく頑張ってもどんどん自分の株式が希薄化していきますから。

 仮にあのままIPOできていたとしても、上場時には僕の株式は相当薄まっていたでしょう。それなら「もっと早めの株式をたくさん持っている状態でバイアウトしたほうがよかったじゃん」という話にもなりかねません。これはお金のことだけを考えた極端な話ですが、実際こういう例は結構多い。苦労してIPOさせたのに、創業者が得られる利益はごくわずかという事例は少なくないんです。

※資本コスト:企業の資金調達に伴うコストのこと。たとえば借入に対する利息の支払い。株式に対する配当の支払い、株価の上昇が期待される価格など。

―まずはバイアウトして資金力をつける。その後でIPOを目指せということですね。そもそもバイアウトは再現性があるものなのでしょうか?

 あると思います。もし「3年あげるから10億で売れる会社をつくれ」と言われたら、三社はつくれると思いますね(笑)。その時々で流行りはあるものの、コツさえ分かれば何度でもできるかなと。

―そうなんですね(笑)。少しだけそのポイントについて教えてください。

 たとえばマーケット選定の話でいくと、大きく2パターンあると思います。1つ目のパターンは海外のサービスで、まだ日本にないものを日本国内で展開することです。いわゆるタイムマシーン経営に近いですね。たとえば米国や中国などの先進的なサービスを研究し、日本に持ってくるんです。

 日本は少子高齢化が進んでいるものの、依然としてGDPは世界第三位。そんな魅力的なマーケットがある割にローカル性が高い。たとえばMomentumでやっていたアドベリフィケーションの領域は、日本でやるには日本語対応が必要。でも外資はそれができないので参入しづらいんです。言語の壁によって海外の競合から守られていました。

 2つ目のパターンは転換期にある業界で、大手企業に買ってもらえるようなサービスをつくることです。たとえば大手企業を脅かすベンチャーが現れた業界があったとします。ポジションを脅かされたその大手企業は、新規事業を立ち上げて競争優位性を保たないといけない。しかし大手企業の体質上、なかなかスピーディーな展開はしづらく、スピードでベンチャーに負けてしまいます。だからそれを見越して、その大手企業が買いたくなるベンチャーを先につくるんです(笑)。

―大手企業のニーズを見越してサービスを立ち上げると。

 そういうことです。そうやって最初から逆算して考えることが、バイアウトを目指すうえでとても重要だと思いますね。

物理学者の夢を断念。学生起業で挫折

―話は変わりますが、大久保さんの生い立ちについて聞かせてください。

 神奈川県で生まれ、いわゆる普通の家庭で育ちました。もともと起業家の家系というわけではなく、父は研究者で母は看護師です。小学校は地元の学校に通い、中学は受験して聖光学院という中高一貫校に入学しました。

父親にお風呂に入れてもらう生まれて間もない頃の様子

 聖光学院ではOBが講演に来るのですが、今でも記憶に残っているのがオイシックス高島さんの講演でした。当時のオイシックスの年商は10億円くらい。高島さんはそれについて「まぁまぁですね。」とおっしゃったんです。今ならその意味も理解できますが、高校生の僕にとっては10億という数字があまりにも衝撃でした。起業家はそんなに大きなお金を世の中にもたらしているのかと衝撃を受けたんです。それからは頭の片隅に起業という二文字が残り続けた。でも当時の僕には物理学者になるという夢がありました。

―もともと物理学者になるのが夢だったんですね。

 そうなんです。当時は物理を学べる学校を探し、日本の大学だけでなくアメリカの大学も受験してました。そして、ちょうど受験の時期にアメリカでリーマン・ショックが起こったんです。

 ニュースでは毎日のように混乱する世界経済の状況が報じられ、徐々にその波は日本にも押し寄せてきました。アメリカ留学のための奨学金も申請していたのですが、僕が申請していた奨学金はリーマン・ショックの影響で瞬く間に受付停止に。

 僕はたった一つの会社が潰れただけで、いち高校生の奨学金までなくなるのかと驚きました。アメリカの大学に行きたかったですが、奨学金がないと難しい。こうして僕はやむなく国内の大学を選択することになったんです。そして東京大学を受験し、無事に合格。物理学者を目指して理系の学部に進学したんです。

―大学在学中は何をしていたんですか?

 実は物理学者になるという夢は早々に打ち砕かれてしまったんです。というのも東大には僕なんて到底及ばない天才がゴロゴロいた。僕はすっかり心を折られてました(笑)。世の中には天才っているんだなと思いましたね。

 その時オイシックス高島さんの講演を思い出したんです。物理学者がダメでも起業家という道があるんじゃないか。そう思って、僕は起業仲間を見つけるため情報収集を開始しました。そして大学2年になった頃、友人二人と学生起業したんです。

 ちなみにそのうち一人は、中国関連の話で最近メディアによく出演されている黄 未来(こう・みく)さんです。彼女とは違う大学でしたが、どこかでたまたま出会って一緒にやることになりました。あまり覚えていませんが、当時はお互い競い合って取り組んでいた気がしますね(笑)。

―どんなサービスをやっていたんですか?

 アメリカの大学の講義をネットで視聴できるサービスです。講義は無料で公開されていて、ライセンスを取れば使えました。僕たちはその講義を和訳し、ネット視聴できるサービスをつくったんです。また視聴者同士がオンライン上で情報交換できる機能なども開発しましたね。

 しかし結果これは失敗に終わりました(笑)。アメリカの講義は難しすぎて全く視聴されなかった。それにマネタイズのことをあまり考えておらず、とにかくサービスを広めることしか考えてなかったんです。

 また会社経営の仕組みもよくわかっていなかった。当時は資金調達の意味とかも、あまり分かってませんでしたね。学生起業でうまくいっている人を見てみると、お金に詳しい人がいるケースが多いと思います。外部顧問のようなカタチで経験豊富な人からアドバイスを受けている起業家は、学生起業でもうまくいっているんじゃないかと。

―学生起業は失敗に終わってしまい、就職活動を始めたんですか?

 学生起業は大学4年生の最後まで粘ったんですが、並行して就職活動も進めました。起業でお金に苦労し、またリーマン・ショックで奨学金を切られるという経験をしたため、お金の仕組みを学べる会社を探したんです。そして金融の親玉とも言えるゴールドマン・サックス(以下、ゴールドマン)から内定を獲得しました。

自分のオリジナリティを発揮するため一流企業を去る

―ゴールドマンでは何をしたんですか?

 M&Aの部署で2年10ヶ月ほど働きました。お金の仕組みはもちろんのこと、財務戦略や資本政策にも詳しくなりましたね。新聞の一面を飾るような大型のM&A案件にも携わり、あまりのスケールの大きさに驚きました。具体的な案件は言えませんが(笑)。

 一つだけ海外の超大型M&A案件の話をすると、数千億規模の買収がたった数週間で決まったというエピソードがあります(笑)。世界的なIT企業が急成長中のスタートアップを吸収合併する案件で、その経営者の意思決定のスピードには本当に驚かされましたね。悲しいことですが、日本の大手企業が置いていかれるのも頷けるなと。

 ゴールドマンは日本でトップクラスの年収があり、仕事のスケールも大きかった。でも僕自身は正直あまりハッピーではありませんでした。やはり大きなプロジェクトの中では、僕はひとつのコマに過ぎない。仮に僕が居なくても確実にその案件は進んでいくし、僕と同じ役割をやらせれば、僕より上手にできる人が社内にゴロゴロいましたから(笑)。

 僕は自分の幸せの基準として、自分の裁量で意思決定できることを大切にしています。だからゴールドマンで働きながらも起業したい。自分で挑戦したいという気持ちが、ふつふつと湧いてきたんです。

ゴールドマン・サックス時代
GS野球部(中列中央が大久保)
GSの同期とゴルフ(前列中央が大久保)
香港にて(右下が大久保)

―どういうきっかけで独立したんですか?

 M&Aの仕事をしている中で、アメリカのシリコンバレーにあるスタートアップを調べていたんです。そして現地のスタートアップの情報を、日本のクライアントにレポートし「M&Aしませんか?」と提案してました。

 その業務を通じて海外のスタートアップを調べているうちに、海外の先進的なサービスをたくさん知ることができました。これを日本に持ってきたらうまくいくんじゃないか。そう思って起業のネタとなるサービスを同時に探し始めたんです。Momentumでやっているアドベリフィケーションの領域も、その時に初めて知りましたね。

 ちょうど起業のネタ探しをしていた頃、Momentum共同創業者の高頭君とランチに行くことになりました。高頭君は聖光学院の同級生で、当時同じ六本木ヒルズに入居する企業に勤めていたんです(笑)。そのランチで一緒に起業しようという話になり、独立を決意しました。

―大久保さんはゴールドマンという一流企業に勤めていながら、なぜそれを捨ててまで起業したかったんですか?

 僕は相当負けず嫌いなので、学生起業で失敗した悔しさを引きずっていたんです。学生起業してそのままうまくいく人もいる中、起業に失敗したまま終わってしまったことが嫌だった。

 それにゴールドマンに居続けても、自分のオリジナリティは発揮できないだろうなと。僕は幼い頃から、自分が一番になったと感じたことがないんです。聖光学院でも自分より勉強ができる人はいたし、東大なんて言わずもがな。ゴールドマンでも自分らしい仕事はなかなかできなかった。

 だからド直球じゃなく、アンダースローをやってみたり、いろんな変化球を投げて自分のオリジナリティを追求していたんだと思います。どうすれば自分が一番になれるんだろう。どうすれば自分のオリジナリティを発揮できるだろうって。

 僕は自分がオリジナリティを発揮できる場所を探して、模索したからこそ今があると思っています。企業でずっと勤めあげる道もあるでしょうし、起業する人もいるでしょうが、いずれにせよド直球で挑むのはやめたほうがいいですね。優秀な人なんていくらでもいるから、素直に頑張るだけじゃ絶対勝てないと思います。

自社が買い手になってみたい

―そこから先程伺ったようにMomentumをバイアウトするというわけですね。大久保さんはまだ32歳ですよね。今後の人生で何か目標はありますか?

 30代は事業をやっていたいですね。目下のところはライスカレーをIPOさせることに集中します。ライスカレーは自走する仕組みができていますが、自分で手を動かして事業をつくる余白は残してます。やっぱり僕は事業をつくるのが好きなんです。エンジェル投資家やベンチャーのCFOになるという選択肢もありましたが、今後も自分で事業をつくっていきたいですね。

 またM&Aにおいて、いつかは自分が買い手にもなってみたいですね。僕はゴールドマンでM&Aアドバイザー、Momentumで自社をバイアウトしたという経験があるので、後は買い手をやれば全て経験済みということになる。IPOすれば色んな資本政策のスキームも使えるので、積極的にM&Aしていきたいです。

―ちなみにライスカレーはIPOも視野に入っているとのことですが、売上はどれくらいなんですか?

 それは公開してないんです。でも来期で当時僕が講演を聞いた時のオイシックスさんは追い越したいですね(笑)。それ以上の大きな成長を目標にして頑張ります。

 40代以降はぶっちゃけどうなるか全く分からない。何が起こるか分からないし、生きているかも分かりません(笑)。だから目先のことに集中したい。今は事業家として、IPOを目指して突き進んで行きたいですね。

―ありがとうございました。

趣味はトライアスロン。2019年9月に九十九里トライアスロンを完走(中央右が大久保)

大久保 遼(おおくぼ りょう)プロフィール

プロフィール:大久保 遼(おおくぼ りょう)
東京大学経済学部を卒業後、ゴールドマン・サックス証券投資銀行部門に入社。広告、通信・メディア、テクノロジー関連のM&A、ファイナンシングのアドバイザリー業務に従事。2014年オンライン広告テクノロジー企業であるMomentum株式会社を設立。2017年に同社をSyn.ホールディングス株式会社(現:Supershipホールディングス株式会社)にバイアウト。2016年に株式会社ライスカレー製作所(現:株式会社ライスカレー)を設立。

出口のその先に 第11回

この記事が気に入ったら
いいねをお願いします!

※このサイトは取材先の企業から提供されているコンテンツを忠実に掲載しております。ユーザーは提供情報の真実性、合法性、安全性、適切性、有用性について弊社(イシン株式会社)は何ら保証しないことをご了承ください。自己の責任において就職、転職、投資、業務提携、受発注などを行ってください。くれぐれも慎重にご判断ください。

経営者通信

経営者通信
経営者に贈る、経営者の"経営力"を上げる情報誌

経営各分野における、プロフェッショナルたちのインタビューを掲載。 雑誌とWEBで、約60,000名の経営者へ経営のヒントとなる情報をお届けしております。

経営者通信メールマガジン

経営者通信注目の企業や、ビジネスニュースなど経営者のための情報をお知らせします。

ご登録はこちら

pagetop