トップの考えが理解されず 元社員が悪意のカキコミ
―ネット上の風評被害に関する最新事情を教えてください。
大野 企業が巻き込まれるリスクが高まっています。2014年の当社へのネット風評に関する相談件数は、前年比で170%増。その7割が企業からで、ほとんどが離職者による掲示板や転職サイトへのカキコミに関するものです。たとえば、「社長がワンマン」「同族会社なので情実人事が横行」のように、一方的な価値観で否定的にとらえたもの。あるいは「あの会社は上司が帰るまで帰れない」「毎日、終電帰りだ」など、ブラック企業を連想させるようなカキコミ。「そのようなものを見つけたが、どうしたらいいのか」という相談です。
木戸 離職者のカキコミのなかには、「辞めさせられた」という恨みから悪意をもって陥れようとするものも見受けられます。そんなカキコミが拡散し、知らぬ間にネット上でブラック企業よばわりされて、採用内定者の辞退が相次いだ企業から相談されたこともありました。ネットの評判が成長戦略に多大な打撃を与えた一例です。拡散してしまった風評被害からの回復には、時間もお金もそれなりにかかるので、日ごろから巻き込まれない予防対策を講じるべきです。
―どうすれば予防できるのですか。
大野 ネガティブなカキコミをされない社内体制づくりがもっとも重要です。離職時に守秘義務契約を交わすのは当然ながら、そのうえで会社が目指す方向性やトップの考えを社員一人ひとりに理解させることが、離職後の風評被害を防ぐ第一歩。会社と個人の間に価値観のギャップがあればあるほど、風評被害にさらされるリスクは高まります。
木戸 日ごろから研修や面談を通して、会社の姿勢を理解してもらうことが大切です。また、労働環境への不満はカキコミの原因になりがちです。社内にヘルプラインを設け、そうした声に耳を傾ける体制づくりをする企業が最近増えてきました。
風評被害の監視を社員がすると 精神的ダメージを受ける場合も
―ネット風評被害対策は弁護士に相談すればいいのですか。
大野 裁判を通じて悪意あるカキコミをした人物を特定させたいときなどは弁護士に依頼するべきでしょう。ただし、それは風評被害が起きた後。私たちは社内の内部改善支援など、原因となる根本的な問題とその対策についてもアドバイスしています。それにより、風評被害を未然に防ぐことができます。
木戸 被害発生後の対処も支援します。「悪意あるカキコミを見えなくしたい」という相談には、技術的に対応します。たとえば、「逆SEO対策」。検索結果のトップページに企業のポジティブで良質なサイトを上位表示させることで、結果的にネガティブなサイトを下位表示にします。「ネガティブワードが検索の際に関連で出てくる」という案件で、見えなくさせた実績もあります。
―ネット上の風評に不安を抱く経営者にアドバイスをお願いします。
木戸 ネットの掲示板などにネガティブな情報が表示されていないか、日ごろからチェックしておくことが大事です。風評被害対策を専門とする企業に依頼すれば、監視を専門とするスタッフがそろっているので、情報が拡散し炎上する前に手を打てます。
大野 監視を自社の社員にやらせると、ネガティブなことにかかわったせいで、精神的なダメージを受けるリスクもあります。万が一、風評被害に遭ってしまったとき、すぐ相談できる、信頼できる風評被害対策会社であれば、どういう手を打てるか、施策を具体的に開示し、アドバイスできます。たとえいまは被害に遭っていなくても危機管理の一環として風評チェックは必要です。気軽に相談してほしいですね。