Mobilunity(モビルニティ) 創業者 CEO サモフスキー・キリル

テクノロジー立国ウクライナの知られざる実情

Mobilunity(モビルニティ) 創業者 CEO サモフスキー・キリル

インサイダーからの視点 : ウクライナのグローバルIT企業経営者に聞く


ウクライナの優秀なITエンジニアを活用しながら、スイス、ドイツ、アメリカ、日本などにクライアントを持ち、クライアントごとに専門開発チームを組成しているウクライナIT企業のMobilunity(モビルニティ)の創業者兼CEOであるサモフスキー・キリル氏にインタビューした。


サモフスキー・キリル:私はMobilunity(モビルニティ)の創業者兼CEOで、グローバルITマーケットの第一線で10年以上も経営しています。ウクライナ首都のキエフに拠点を置き、グローバルなクライアントを持ちながら、個々のクライアントごとに専門開発チームを組成しています。

 私は過去にベトナムやフィリピン等のITエンジニアとも働いた経験があり、様々な国のITエンジニアの特色や違いを深く理解していると自負しています。そのうえでウクライナのITエンジニアの技術力に強い自信を持っており、最近では自分のことを“オフショアエバンジェリスト"と名乗っています。私の目標は、オフショアモデルを世界中のありとあらゆる企業に知ってもらい、多くの企業がオフショアを活用して新しいソリューションを見つけ、成功するプロダクトやサービスを開発してもらうことです。

―多くの日本企業はウクライナについて詳しく知りません。キリルさんが考えるウクライナのお勧めポイントを教えてください。

サモフスキー・キリル:ウクライナは素晴らしい国ですよ。たくさんお勧めのポイントがありますが、あえて3つに絞るとすれば。

 1つ目は、ウクライナは大きな潜在力を秘めたIT国家だということ。例えば、イスラエルはスタートアップ大国として世界中に知られています。エストニアは電子国家として知られています。いつか将来、イスラエルやエストニアのように世界的IT国家としてウクライナも認められると思います。それだけの潜在力があり、いまもIT産業が急成長しています。

 2つ目は、ウクライナ人はハングリーかつ創造性に富み、世界をより良くするために日夜頑張っているということ。ウクライナのIT産業が近年に急成長した理由の1つは、このような国民性があるからです。

 3つ目は、ウクライナは素晴らしい観光地がたくさんあり、とても美しい国だということ。ビジネスに直接関係ありませんが、国を語るうえで非常に大事なことだと思います。日本も同じだと思いますが、ウクライナでは古代文化や歴史と、大自然の絶景を同時に楽しむことができます。

―先日に発表された「アウトソーシング・ジャーナル」によって、ウクライナは東ヨーロッパのアウトソーシング産業の第1位にランクされました。同時に中央・東ヨーロッパアウトソーシング協会のランキングではアウトソーシング受注量の第1位も獲得したそうですね。なぜそれほど多くの企業がオフショア先としてウクライナを選ぶのでしょうか?

サモフスキー・キリル:ウクライナには膨大なITエンジニアがいます。それらのエンジニアの中には高度な教育を受けたITプロフェッショナルも多く含まれています。単なる受託だけでなく、クライアントのチームをリードできるほどのプロフェッショナルが相当数いるのです。

 もう一つは、やはりコスト面。ウクライナではIT関連職種には特別な税制が適用されます。ウクライナのITエンジニアの給与は他のオフショア先よりも決して低くはありませんが、税制面の優遇に加えて、オフィス賃料などにかかる間接コストも安いので、結果としてウクライナのオフショアの費用対効果は非常に優れています。

 またウクライナ人の国民性も大きいですね。基本的にウクライナ人はオープンマインド。ウクライナのIT開発チームは、グローバルなマネジメントチームと簡単に溶け込み、すぐに仲良くなります。文化の壁を越えて、一緒に成長しようとするマインドもある。こうした理由から、多くのグローバルIT企業がオフショア先としてウクライナを選んでいるわけです。

―他にもウクライナのITエンジニアの特徴はありますか?

サモフスキー・キリル:ウクライナ人は“批判的な思想家"と言われることがあります。つまり国民性としてクリティカルシンキングが備わっており、これは複雑なIT開発に適していることを意味します。問題解決能力が高いのです。「ウクライナのITエンジニアは、そのDNAにコーディング力と問題解決能力の両方がすでに刻み込まれているのだ」と、よく冗談で話したりしますね(笑)。

 またウクライナ人はアジャイル環境に非常に適しており、積極的に技術や問題解決に関する意見や改善方法を提案しますね。ウクライナのサービス品質はそもそも高く、高度なソフトウェアとハードウェアの人材がおり、DXへの変化適応能力と豊富な実務経験もあります。豊富なIT人材のキャパシティ、低コスト、有能な人材の他国への流出が少ないこと(ウクライナは欧州連合の加盟国ではないため)といった点で、ウクライナはグローバルIT企業にとって非常に魅力的なわけです。

―御社Mobilunity(モビルニティ)は既にいくつかの日本企業と協業しているようですが、そもそもどのようにして日本市場に進出したのですか?

サモフスキー・キリル:外国企業である私達が日本市場に参入するのは容易ではないと理解しています。ですので、まず日本人の商習慣を学びました。郷に入れば郷に従えです。

 実は私たちが初めて東京に訪問してからまだ一年も経っていません。その後に日本企業や各種協会とのミーティングを50回以上も行いました。そこで日本市場について多くのことを学び、日本のクライアントのために何ができるかを必死に考えました。

 結果として、ウクライナでは珍しいITブリッジサービスという形態にいきつきました。ウクライナ側で日本語が堪能な現地スタッフがIT開発チームと日本のクライアントの間に立ち、全て無料でサポートするサービスです。その甲斐あって去年2019年にはウクライナの弊社オフィスに日本からの訪問団が20名以上お越しくださいました。

 私達はこれからも積極的に日本市場においてクライアントの開拓をし続けます。日本は依然として、機械学習、AI、ビッグデータなどの高度かつ複雑なITソリューションに対応できるITエンジニアが見つかりにくい現状があります。もちろん日本に高度なITエンジニアはたくさんいます。しかし高度なITエンジニアの採用は非常に競争が激しいため、なかなか思うように開発が進まないわけです。最近では多くの日本企業から直接お問い合わせが来るようになりました。現在までに5社の日本企業と協業しており、さらに2社と契約予定です。

―これからのウクライナIT企業と日本企業の協業について、どのような可能性を考えていますか?

サモフスキー・キリル:日本企業がさらに世界で成長するためには、日本自国だけで今のDXニーズを満たすことはできないと考えています。オフショアが不可欠となるでしょう。

 多くの日本企業はベトナム、台湾、フィリピン、または中国やインドなどへオフショアを検討しているかもしれません。もちろんそれも素晴らしいと思います。ただ国が物理的に近いからと言って、選択肢がそれだけでいいのでしょうか?

 ウクライナは日本から遠く離れていますが、日本企業が必要とする複雑なIT技術に対応する力や文化の多様性を習得する力があります。その点で、非常に魅力的な選択肢の一つだと思います。これからウクライナのIT産業はますます成長していきます。近い将来には次のシリコンバレーになるかもしれません。これからウクライナと日本の関係はますます深くなり、つながりも強くなるでしょう。ウクライナでR&Dセンターを開設する日本企業が増えることを願っています。

(寄稿記事:Mobilunity(モビルニティ))

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