GLM株式会社 代表取締役社長 小間 裕康

死ぬほど「おもろいこと」に 没頭できているか?

GLM株式会社 代表取締役社長 小間 裕康

2017年10月、成長企業の経営者約200名が一堂に会する経営者イベント西日本ベンチャー100カンファレンス 2017が開催されました。

販売実績は100台程度。だけど世界中の投資家が熱視線を注ぐ最先端のEVベンチャーが古都・京都にあります。国産EVスーパーカーの世界販売を2019年に計画しているGLM株式会社です。同社代表の小間さんは、かつて人材派遣業を起業し、年商20憶円に育てた後、京都大学大学院でビジネスを学び直します。なにがあったのでしょうか。世界から注目を集めるEVベンチャーの“起業の内幕”を赤裸々に語っていただきました。

※本記事は INOUZ Timesから転載しており、記事は取材時のものです。

世界中の投資家からの支援

――最初に、事業の状況を聞かせてください。

当社は「京都大学ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー」で発足した京都電気自動車プロジェクトを事業化した、大学発ベンチャーです。設立は2010年4月です。

2015年に国産初のEVスポーツカー「トミーカイラZZ」を99台限定で国内向けに量産・販売し、2016年のパリモーターショーで4シーターのEVスーパーカー「GLM G4」のコンセプトカーを出展。2019年に量産化する計画です。

「トミーカイラZZ」は、走る、曲がる、止まるという車の基本機能だけを徹底してつくりあげました。屋根もありませんし、エアコンもありません。ABSや横滑り防止機能など、いろんな制御はなにもありません。こんなスパルタン(質実剛健)な車が好きな人は日本に100人くらいはいて、予約開始当初、限定販売数を上回る予約数を獲得しました。

2019年に販売する次の「GLM G4」の目標販売台数は1,000台。世界市場で販売します。「GLM G4」には屋根がつきました(笑)。エアコンやABSもあります。前後のドアは海原を疾走するヨットの帆をイメージさせるアビームセイルドアを採用したほか、0-100km/hまで3.7秒しか要しません。これ以外にも、心躍る先端のテクノロジーが詰め込まれています。「GLM G4」は感度の高い、豊かな時間を楽しむ方が乗るクルマとして、4人でも楽しめる新しいラグジュアリーを提案します。予定価格は1台4,000万円。ぜひ、みなさんには予約することをオススメします(笑)。

パリモーターショー2016で発表された「GLM G4」

しかしながら、実は車の販売だけでは採算が取れません。「GLM G4」の開発費は大手の自動車メーカーと変わらない開発費がかかります。それに対して販売目標台数は1,000台ですから、目標台数をクリアしてもまったく採算があわない。

では、どうしているのか。「GLM G4」で開発した先端のプラットフォームや、部品ユニットを他の自動車メーカーなどに販売するビジネスモデルを利益の軸にし、ビジネスを成り立たせているのです。

これまでに累計100億円を上回る資金調達をしてきました。調達先は、国内VCや事業会社、中国、香港、台湾、サウジアラビアなどの投資家や政府系ファンド、機関投資家など。世界中の投資家から支援をいただいています。

超優秀なメンバーたちが後ろ盾

――事業を成長させていくうえで、いちばん大きなポイントはなんだと考えていますか。

一流の人、優秀な人を集めることです。資金調達をして数百億円を開発費に充てられている現状も、一流の人、優秀な人が集まってくれて、できた結果だと思います。

GLMを設立する前、最初はミュージシャン専門の、次いで家電量販店を対象にした人材派遣業を起業して年商20億円くらいまでになりました。でも、リーマンショックの前ぐらいに「知識がなさ過ぎる」ことに気づいて、京大の大学院に入ってイチからビジネスモデルを勉強し直しました。そこでEVとめぐり合ったのですが、モノづくりをやる、EVメーカーをつくるといったバカなことを言った時に、ただただ否定することをしない、可能性を追い求める一流の人たちが集まってくれたんですね。

私自身、はじめは自動車のことなど全然わかっておらず、3億円くらいあればEVなんてつくれるんじゃないかなと安易に考えていました。それで人材派遣ビジネスで蓄えた1億円の私財をつぎ込み、2億円くらいを外部から資金調達したのですが、1年くらいですぐに底がついてしまった。でも、われわれのビジネスモデルに投資家が興味をもってくれて、その後も資金調達することができました。

これを支えてくれたのが「人」です。GLMは現在30人ほどの会社ですが、ありえないと言われていたさまざまなことを実現させてきました。世界的にも厳しい日本の安全基準をクリアし、ナンバーを取得し、現在、本当にクルマを製造販売できているのはメンバーのおかげです。経験則で言うと“おもろい人”が集まってくれたら、そのビジネスは大体うまくいくのです。

GLMの個々のメンバーは、たとえGLMが潰れたって、なんともないんです。すぐにほかの会社から声がかかる。それほど超一流と言われるようなキャリアをもっている人たちが集まってきてくれました。

だからこそ、僕自身、挑戦できているんです。会社として育てないといけない未熟な従業員がいて、万が一、会社が潰れてしまっては従業員を路頭に迷わすと感じると、どうしても取れないリスクがあると思います。でも、明日会社が潰れても路頭に迷うようなメンバーはひとりもいないという後ろ盾があると、最後まで行けちゃうんですよ。

ただただストイックにやり続ける

――どうすれば、優秀で“おもろいメンバー”を集めることができるんですか。

僕は基本的に人づきあいが苦手。交流会とかも行かないですし、人に会いたいと思うことすらありません。可能ならば知った顔の人たちとだけ、ずっといたいと思うタイプです。

それなのに優秀な一流の人たちが集まってくれたのは、偶然に恵まれたこともいっぱいあったんだと思いますが、基本的には、ただただストイックに、人から「コイツに会ってみたいな」と思われるようなことで実績を出し続けてきたからじゃないかなと思います。

もちろん、私のキャリアを調べれば自動車産業で大きな実績をあげた経営者でないことは明白です。経営者ひとりでつくり上げたのではなく、経営者が託したチームでつくり上げたのだという実績が見えるからです。そのチームに入ればこんなことが担えるのではないかと考える「超一流のヘンタイ」が集まったのだと思います。

大体、僕は「それはダメだよ」「うまくいかないよ」と言われると火がついてですね、てやんでえ、やるよってなっちゃう。人材派遣業の時もそうでした。「ミュージシャンの派遣業なんてニーズがなくてダメだよ」「資本力がある大手でないとうまくいくわけがない」と周囲からは散々な言われようだったんですけど、やり始めちゃった。悔しいのでなんとしてでも成功させようと知恵を絞ってやり続けると事業がうまく回っていくんです。

事業責任者として、経営者として、言ったからには責任を取る覚悟で逃げずにずっとその事業を成長させるまでやっていく。すると、天井をぶち抜いて、次が見える瞬間があるんです。それをブルースカイ(=青天井)って言ってます。

GLMもまったく同じで、「ダメだよ」と言われたんですけど、EVの持つ可能性はすごくおもしろくて、絶対に伸びると確信していました。すべて100%つぎ込んで、週末や寝ている時間もEVのことで頭を使っても全然疲れない。むしろ、どんどんおもしろくなっていく。そんな風に夢中になって本気でやり続けているヤツがいると、そこにさらに“おもろいヤツ”が集まってきてくれるんです。

もし、優秀でおもろいメンバーを集めるコツがあるのだとすれば、飽きずにやれるおもしろい事業に自ら没頭することだと思います。自らが没頭し、ストイックに事業をやっていたら、必ずそれなりの人が集まってくれるはずです。車をつくる、新しい産業をつくるって、つくづくおもしろいと感じます。

――今後のビジョンを聞かせてください。

3年後のビジョンは、10年後のビジョンは、といった質問をよくいただくんですけど、実はGLMにはビジョンがないんですよ。

10年後のことって9年後に考えたほうが、よりいいアイデアやプランでまとめることができると思っているので。だから、あえてなにもつくらないんです。そのほうがメンバーの自由度も高まる。自分のつくったビジョンに縛られることなく、常に今よりも飛び抜けた“おもろいこと”にチャレンジができる方がワクワクしませんか? その自由な環境を広げ、常に未来を作り続けることこそがビジョンです。

小間 裕康(こま ひろやす)プロフィール

1977年8月生まれ、兵庫県出身。2000年、株式会社コマエンタープライズを設立。2010年にグリーンロードモータース株式会社(現・GLM株式会社)を設立し代表取締役社長に就任。

※このサイトは取材先の企業から提供されているコンテンツを忠実に掲載しております。ユーザーは提供情報の真実性、合法性、安全性、適切性、有用性について弊社(イシン株式会社)は何ら保証しないことをご了承ください。自己の責任において就職、転職、投資、業務提携、受発注などを行ってください。くれぐれも慎重にご判断ください。