株式会社 USEN-NEXT HOLDINGS 代表取締役社長CEO 宇野 康秀

「会社の天命」を知る経営者が変化をチャンスに転換できる

株式会社 USEN-NEXT HOLDINGS 代表取締役社長CEO 宇野 康秀

総合人材サービスを出発点に、有線放送、世界初の商用光ファイバー・ブロードバンドサービス、映像配信、コンテンツ制作、スマホ事業、そして電力と、インフラからエンタメまでを網羅し、それらを急成長に導く。表面的にはつながりのない事業展開のように見えるが、底流を貫く強烈な信念が社会の変化を先取りした多様な新規事業を次々と創造する原動力となった。変化という不確実性に勝ち、成長機会へと転換する要諦をUSEN-NEXT HOLDINGS代表の宇野氏に聞いた。

※下記は経営者通信40号(2016年7月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

自前主義にこだわらない

―中核事業である「U-NEXT」の名称で提供している映像配信(VOD)事業(※)、「U-mobile」をサービス名とする、いわゆる❝格安スマホ❞の仮想移動体通信(MVNO)事業(※)とも市場の伸び率を超えるペースで急成長しています。海外企業も日本市場に参入しているなか、継続成長できる要因を聞かせてください。

 VOD市場では、昨年9月にアメリカのNetflix、Amazonプライム・ビデオが相次いで日本市場に進出するなど、国内外のさまざまな有力企業による参入ラッシュが起きています。そのため、メディアなどでVODサービスが取り上げられることが多くなり、サービス認知度が向上。これが当社にとってプラスに作用しました。事実、2016年第1四半期の「U-NEXT」契約者数は大幅増を記録しました。

 MVNO市場も盛り上がっています。2014年9月末の契約回線数(※)は約230万でしたが、2015年9月末には約405万に大幅増加しました。こうした波に乗れたことが当社の成長要因のひとつですね。

※ 映像配信事業:地上波テレビなどとは異なり、視聴者が観たい時にさまざまな映像コンテンツを視聴できるサービスの提供を行う事業。VODはVideo On Demandの略
※ 仮想移動体通信事業:無線通信回線設備を開設・運用せず、自社ブランドで携帯電話などの移動体通信サービスを行う事業。MVNOはMobile Virtual Network Operatorの略
※ 契約回線数:独自サービス型SIM(SIMは固有のID番号が記録された携帯やスマートフォンが通話するために必要なICカード、Subscriber Identity Module Cardの略)の契約回線数。
MM総研の調査による

―パイが拡大中の成長市場にも勝者と敗者は存在します。御社の優位性はどこにあるのですか。

 3つあります。まず私たちなりに自分たちの目線で市場を見て独自のサービスを創造していること。たとえばVOD事業では、より市場にマッチしたラインナップやコンテンツなどのサービスを提供していると自負しています。

 次に、自分たちはベンチャー企業であるという強い自己意識。所詮、当社は小さな会社で力がないのだから、なんでも自分たちでやる自前主義ではなく、力のある企業と組み、その力を借りようという気持ちが強いんです。ですから、NTTさんやソフトバンクさん、ヤマダ電機さんともアライアンスを組んでいます。このように当社では提携先の企業がライバル同士というケースは珍しくありません。節操がないんです(笑)。

 そして、変化をキャッチアップするスピード感。社会の変化についていくスピードが速ければ速いほど勝つチャンスは大きくなります。そのためには意思決定はもちろん、新しいサービスやプロダクトを創造するプロセスのスピードを速くしなければなりません。当社はそれができているので、激しい変化にも対応できるのです。

ベンチャー企業の存在理由

―価値観やニーズはつねに変化し続け、逃げ水のようにとらえどころがありません。そこで重要になってくるのが事業選択の成否。宇野さんの事業選択の基準を聞かせてください。

 自分たちがその事業をやることにどのような意味合いがあるのか。それを見極めることです。

 企業ですから売上や利益の追求は大切。でも、それだけではなく、組織に意味合いをもった成長や進化をしたい。3社の企業の経営を指揮した経験から、そう思うようになりました。

―その経緯を教えてください。

 最初にインテリジェンスを起業したときは少し違っていました。「世の中に新しい価値を生む」という理念は当時もいまも不変なのですが、インテリジェンスを大きな会社にする、立派な会社にすることを考えていました。

 そうしたときに父の急逝でUSENを事業承継せざるを得ない状況に。当時、USENは巨額の債務を抱えており、私には再建社長というミッションがありました。債務をきれいにしてその役目を果たすと同時に、USENという会社がもっているポテンシャルを引き出すことで、世の中になにか新しい価値を生み出していきたい。そう強く考えるようになりました。

 そして現在のU-NEXT。想いはより鮮明となり、いまは器を大きくすることよりも、ここで働いている人たちや自分たちがもっている資源を最大限に活用して、世の中にどんな価値を生み出せるか、どんなチャレンジができるのか。そうした意味合いが大事だなと考えるようなりました。

―規模拡大よりも、価値創造の追求に組織の意味合いを見出したのですね。なぜ、それが大事なのですか。

 人と同じように企業にも❝天命❞があるからです。それが歴史のある大企業なら、世の中にできあがった仕組みを維持継続していくことが責任のひとつだと思います。鉄道会社を例にとるなら、乗客を安全に時間通りに運ぶとともに、輸送の高速化という命題を進めることが天命でしょう。

 では私たちベンチャー企業の天命とはなにか。それは既存の市場を破壊し、ゼロから新しい価値を生み出すことなのだと思います。たとえば、今年4月からスタートした電力自由化。異業種である電力ビジネスにU-NEXTも取り組んでいます。一見、当社の既存事業と電力ビジネスには脈絡がないように感じるかもしれません。しかし、誰かが手を挙げてチャレンジしないと、政府が制度を変えただけでは世の中は変わらない。ですから、新しい価値を生み出すことを天命としている当社が、たとえ経験のない電力ビジネスであろうとも、そこに進出するのは必然。社会構造が変わるところにビジネスチャンスが生まれるし、そのチャンスを活かすことがベンチャー企業の存在理由なのです。

本気で信じられる将来予測

―変化は不確実なリスクとも言えます。そこで成功するコツはありますか。

 変化を予想し、先んじて事業化することが基本パターンですが、その将来予測に絶対的な自信があるかどうかが大切です。

 事業化が遅すぎては意味がないし、早すぎても失敗のリスクが高い。でも、時間軸は読めません。であるなら「必ずそうなる」と確信できることをやるべき。(変化を先取りしたビジネスを成功させるには)ある時期、我慢は必要で、こらえどころで我慢できれば実りになります。それをやり遂げる原動力は、本気で信じられる将来予測であるかどうか。それがカギです。

―激しい競争にさらされている経営者へのアドバイスを聞かせてください。

 かつては既存の価値や規制を壊すことが許されない時代もありました。ですから、それができ得る「いま」という激変の時代に生まれたことは大変に幸運だと思ってください。

 もうひとつ、企業の成長過程では❝成長痛❞が生じます。それを「そんなことはない」「もっといける」と背伸びするのは危険だということ。痛みはなんらかのアラーム。それを治してから挑戦を再開すればいいのです。自分が一時期、拡大しすぎて成長痛をやせ我慢していましたから。痛みを鋭敏に感じとり、対処することも経営者の大切な役割です。

宇野 康秀(うの やすひで)プロフィール

1963年、大阪府生まれ。1988年に明治学院大学法学部を卒業し、株式会社リクルートコスモス(現:株式会社コスモスイニシア)を経て、1989年に株式会社インテリジェンスを設立し、代表取締役に就任。1998年、父の急逝を受けて株式会社大阪有線放送社(現・株式会社USEN)の代表取締役に就任。2010年、株式会社USENの代表取締役社長を辞任し、同社から会社分割された株式会社U-NEXTの代表取締役社長に就任。2017年12月U-NEXT、USENとの経営統合で株式会社 USEN-NEXT HOLDINGSに商号変更。代表取締役社長CEOを務める。経営にかかわった3社すべてが株式上場を果たす。トライアスロンや登山家としても活躍し、2015年にトライアスロンの世界選手権大会日本代表に選考され完走。2013年にはヨーロッパアルプス最高峰のモンブラン、2015年にはアフリカ大陸最高峰のキリマンジャロの登頂に成功。

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