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著名経営者の経営者インタビュー

スタートアップスクエア株式会社 代表取締役 / 投資家 恵島 良太郎【番外編】

出口のその先に 第10回 番外編
~創業者が送った最後のメール~

覆面調査サービスを主力事業とするROI社を創業。2017年に同社をバイアウト(会社売却)した恵島氏は、ROI社を去る間際に最後のメールを送っていた。今回はその最後のメールを全文そのまま公開。恵島氏が最後にメンバーたちに伝えたかったことは何なのか。

→この記事は「出口のその先に 第10回 本編」の番外編です。本編はこちら




本日共有会で説明を行ったように株式会社ROIの代表取締役を退任することを決断いたしました。

理由は大きく二つあって、
① 株式会社ROIの利益の最大化と
② 恵島のライフプランの実現のためです。


① 株式会社ROIの利益の最大化とは

背景としては現在の株式会社ROIの置かれている経済環境を鑑みて一番成長を達成できる、経営理念に基づき物心両面での幸福の追求にふさわしい経営陣を想定した場合にLさんが最もふさわしくFさん、Cさんのサポートが最も成長を実現できる組織になるとの判断です。

会社の成長のプロセスにて、皆様にもしっかりとした成長のステージが用意され、またメイン事業のファンくるの確固たる収益モデル、クライアント様への期待に十分に応えられる環境を残せることとなることを確信しています。

顧問や社外取締役という選択肢もありましたが、役員との入念な打ち合わせの結果、私が中心となって組成するファンドという立場からの、株式会社ROIの支援を選択させてもらいました。

代表取締役からは退任をすることになりますが、しっかりとした責任ある立場から皆様を支えますので、お別れではありません。役割の変更と捉えてください。

多くの選択肢があり、役員陣全員で情報を集め、何度もディスカッションを行い最終的に三人の役員陣への経営権の完全譲渡、株式の譲渡に近い形でのファンドからの支援をえるスキームの構築を持って私の退任を迎えることになりました。

皆様の処遇については一切変更なく、それより今後は株式会社ROIのみに経営資源、時間を集中できるという意味では、最も自由度が高くなり、成長の機会を拡大できる機会ととらえてください。

日本でこのような創業者の退任をドラスティックに行った事例があまりにも少ないため 皆様がどんなに正確に今回の私の決断を誰かに話したところで、正確なフィードバックは得られないことと思います。しっかり私のことを信じて受け入れてくれることを願します。

また、現時点で私共は最適な判断を行っており、私情のない組織の利益の最大化を将来的に公的に行った判断であることを自信を持って伝えてることができます。

② 恵島のライフプランの実現のために

私の最後の我儘である 退任をぜひ皆様快く受け入れてください。ライフプランの実現とはある意味我儘なのだと思います。
自身のライフプランという我儘を会社の事業計画、組織作りに、しっかり時間をかけて話し合う場が株式会社ROIには実現しております。私もそのプロセスの元、多くの話し合いの時間を持って前述の会社の利益の最大化と私のライフプランの実現を同時に満たすことのできる解が私の退任でした。
同時に実現できる解を長い時間をかけて話し合ったということをしっかり覚えておいてください。

経営者にはいくつかのタイプがいます。
創業期に力を発揮するタイプ、成長期に発揮するタイプ、成熟した拡大期に発揮するタイプ恵島は間違いなく創業期のタイプと認識しています。

今後ドクストの拡大、海外のアシアナテック、F&B事業、国内でのベンチャー企業へのジョインを繰り返し シリアルアントレプレナーとして自身のビジネススキルを上げ続けていく夢を追ってまいります。

独立系ベンチャーの創業者でこれだけの実力あるボードメンバーを揃えることができて、気持ちよく退任できた人を私は見たことがありません。

今回の私の退任を私の実力不足と自身の我儘と捉えています。役員の皆様、実力で私を上回ってくれて有難う、そして我儘を受け入れてくれて本当に有難うございます。

Fさんへ
私の元上司でありながら、失礼ながらもジョインを打診させてもらいました。前職での関係などを一切無に、私のことを社長と呼んでくれて有難うございました。
多くの我儘を受け入れながら、会社を正しい判断に導いてくれたことに感謝の念が付きません。
三年前の面談の際に、決算数値の悪化を受けて、三者とも年俸の減額を希望してきました。
会社経営をしていて一番辛い面談でしたが、皆様の覚悟と意思を受け入れる最後のスイッチの入る面談でした。
今後プロの経営者のとして入口に立つのだと思います。
ファンドとのやり取りの中での最適解をどのようにFさんが導くのかを楽しみにしております。

Cさんへ
採用の段階で笑い声の小ささが気になっていましたが、本当に一緒に仕事をしてくれて有難うございます。
難しい仕事は全部Cさんという私の思考回路でした。
本当に難しい仕事は全部お願いをさせてもらい、ずいぶん楽をさせてもらえまして。特に海外の立ち上げで、誰も情報のないまま思い切りよくアクションできたのはCさんのお蔭です。
できればハラルナビなどを最後まで一緒に完成させたかった思いは正直心残りですが、是非暖かく見守ってください。
いつもの頼りにしてました。

Lさんへ
私の最大の理解者でした。Lさん無しでは今回の退任には踏み切れませんでした。
営業力ではなく、人間力という言葉の体現には、私には到底追いつけない才能を感じていますし、そのための影の努力には頭が下がります。今後は私には訪れなかった、さらなる成長ステージに合わせた試練を迎えることになります。
私が行ってきたマネジメントは過去のものであり、書籍やどんなに立派な経営者の助言よりも経営者としてのLさんの責任と情熱が正しい経営判断になります。
自分らしさと、メンバーへの成長の機会の提供、クライアント満足度の向上などなど多くの利害関係の者のすべての利益の拡大を行うのが経営者です。
私に実現できなかったことを、LさんがLさんらしく実現することを楽しみに見守っていきますね。
また、Lさんは経営者は孤独という言葉を忘れさせてくれた存在です。言い表せないくらいの感謝!幸運でした。


共有会は和やかで楽しかったです。
私は常に経営者として感情、特に私情を入れない判断を経営判断としています。
今までの判断の背景には私情を挟むことなく組織の利益の最大化のみに焦点を宛ててメッセージを書いています。
以下空は、自身の感情の部分を書かせて頂きます。

昨日の日曜、一人オフィスにて涙を流しながら、私の退任のメッセージを書いていました。

13年間自分の人生の中で一番大切に守ってきた宝物を手放すことはただただ言葉にできない寂しさで、どの人と話をしても同じ気持ちを正確に共感できない寂しさを感じます。

13年間会社に行くことが楽しくて、どんなに体調が悪くても、いやなことがあっても笑顔で出社できました。

私は皆様ご存知のように一人では本当に何もできない人間です。みんなが支えてくれて、期待に応えたくて、強い自分を演じているうちに本当に強い経営者に育ててもらえました。

家族と会社の組織を重ね合わせて考えることが多々あります。
今回の私の退任は子離れと考えてください。
私が成長した子供であるROIから離れなくては、ROIの成長を妨げることになるのです。
そこに子供の成長を願うのか、自身の寂しさから子供を手元に置くようにするのか。
子供には子供の人生、使命があるのに、私自身でそれを妨げるとこはしたくありません。
その別れが一時的に感情として寂しく、悲しいものだったとしてもまた、そのことにより子供は多くの苦労をしなくてはならないとしても、5年後、10年後には正しい判断だったといえるように、日々最大限の努力を行っていきたいものです。
そして、いつでも、どこにいても子供の幸福を願わない親はいないと思います。

そして親と子の別れには、多くの別れがあります。
親が最後に子供に伝えることは、人生の有限性だと思います。永遠に続くと思われた関係も、人生のどこかで必ず終わりを迎えることは必然です。
人生は有限であり、その有限があるから生まれてくる感情が、人生を美しいと思える感謝の気持ちと 人生一日一日を大切に過ごしたいと思う気持ちだと思います。
私の退任をしっかりよい機会に捉えて、もっと良い関りがあったのでは無いかを少しの時間でもよいので振り返って頂き、その中に少しでも反省があったとしたら、その反省を今いるメンバーとの関わり合いに是非活かしてくださいね。
前述のとおり正確には別れではありませんが。

ファンくるの立ち上げは本当に辛く、不安だけの毎日でした。28歳の私には6000万近くの借金があり、その資金の大部分は資本政策による失敗の補填として消えていき、正味2000万近くでファンくるを開発しなくてはならない状況でした。
毎週資金繰り表を更新して、いつまでに入金がなければ会社が倒産して私には借金だけが残る最悪の結末をイメージしていました。
金銭的なピンチに加えて、当時に組織のメンバーが夢を実現できる組織でないと、永続した成長が実現できないことを学びました。
金銭的なピンチと、体験したことのない経営者としての判断の連続は、少しでも心に隙ができて逃げの姿勢になると、永遠に戻れなくなる恐怖を感じてました。眠れない夜が続きました。

正面から課題をとらえ、一つ一つの課題に最短で答えを出すことに集中しました。
正直どのようにして乗り切ったかを思い出すことはできないというのが事実で、それほど目の前に集中していたのだと思います。ただただ、愚直に一日一日を真剣に集中して、誰よりも多くの時間働いたことだけを覚えています。

ファンくるの初受注と初のポイントバック、グルリザの初回申請と承認はその苦しさを一切忘れさせてくれる歓喜の瞬間でした。1分間に1回くらい管理画面を更新していました。

今では多くのクライアント、会員、そしてROIの従業員を幸せにしてくれる存在になりました。

大切に大切にしてきたROIを、より良い会社にしてくださいね。

ピンチはチャンスとよく使う言葉ですが、体験、経験をもってピンチが自身をトレーニングしてくれたから、今の私があると本当に感じています。
そして多くの仲間が私を支えてくれたから感謝の気持ちを仕事を通じて知ることができました。

多くの失敗を皆様には容認してもらいました。
ファンくるの間違いだらけの立ち上げ、ぐるりざの立ち上げの苦労、震災の際のリカバリの遅れ、ファンくるの販促媒体への舵取り、書き出すと枚挙に暇がないくらいのピンチを招いてしまいました。
その多くの失敗から多くの成功まで持っていくプロセスを共に経験できたこの組織が過去最高にて最強のメンバーだと思います。

最大限のチャレンジには失敗がつきものです。
今後もチャレンジする数と同じ数の、幾多の失敗が訪れると思います。

何をもって失敗なのか?失敗のまま終えたら失敗が確定、そこから学び成功まで持って行けば失敗を糧にした成功となるのです。

経営に正解はない。どのような選択をしたとしても、必ず成功するもの。時間軸だけが選択肢によって変わることがある。
経営者の判断に組織が一糸乱れずアクションすることが正解に最も早く辿り着くのです。つまり、経営者は明確な判断を行い、そして経営者を信じる組織が最も短期間で成果を実現できるということです。
今のROIにとって私は私自身の実力の不足を感じています。
その実力を補って余りあるのが、Lさんの営業力、チームビルディングでありFさんの管理、分析力、Cさんのマーケ力、バランス感覚なのです。

新たな経営陣を信じて 新たな株式会社ROIの歴史を永遠に築いてください。

誰よりも株式会社ROIを応援している人間であり続けようと思います。
最大の応援者として、いつまでも同じ喜び悲しみを分かち合えることを願います。

いつも一緒に仕事をしてくれてありがとう
いつも一緒に笑ってくれてありがとう
最後まで我儘をうけいれてくれてありがとう

涙なく笑顔で送り出してくださいね(^^)

→この記事は「出口のその先に 第10回 本編」の番外編です。本編はこちら

恵島 良太郎(えじま りょうたろう)プロフィール

プロフィール:恵島 良太郎(えじま りょうたろう)
1976年生まれ。宮崎県出身。大学卒業後システム開発会社に就職。その後コンサル会社を経て2004年に株式会社ROIを設立。覆面調査サービス「ファンくる」をリリースし、主力事業に成長させる。2012年、マレーシアの首都クアラルンプールに移住。マレーシア進出支援事業と現地での飲食事業を開始。2017年にROIの代表取締役を退任。現在はスタートアップスクエアで日本のスタートアップのショートイグジット活性化を支援する。

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