GMOインターネット株式会社 代表取締役会長兼社長・グループ代表 熊谷 正寿

「なくてはならない事業でNo.1になる」これこそ会社が長く発展できる道

GMOインターネット株式会社 代表取締役会長兼社長・グループ代表 熊谷 正寿

上場企業9社を擁し、グループ売上高は1,900億円を超える。いまや押しも押されもせぬ日本を代表するメガベンチャーといえるGMOインターネット。先ごろ発表された2019年12月期決算では、11期連続で過去最高益を更新し、その勢いは止まらない。しかし、代表の熊谷氏に笑顔はない。厳しい視線のその先に描く、会社の将来像とは。企業成長にかける想いや、将来ビジョンなどについて同氏に聞いた。

※本記事はベンチャー通信ONLINEから転載しており、記事は取材時のものです。

「今までよりも10センチ深く頭を下げろ」

―2019年は上場20周年を迎えたほか、グループ第2本社がオープンするなど、グループにとって節目の年になりました。

 すべては、すばらしいパートナーに恵まれ、多くのお客さまや株主のみなさまに支えられた結果です。創業から25年が経ちましたが、産業界全体で見れば、当社などまだまだ小さな存在。グループ第2本社ができたことで、勢いを感じるのは結構なことですが、それにともなって頭が高くなるようでは、徳がない。グループ第2本社ができて、取締役会や幹部会などで私が伝えたのは、「今までよりも10センチ深く頭を下げるように」ということ。勘違いは厳に戒め、慢心せず、淡々と世の中の役に立つ会社であり続けたいと願っています。

―足元の業績(2019年12月インタビュー実施時点)をどのように評価していますか。

 決して満足はしていません。我々が社内で掲げている高い成長目標を念頭に置くならば、まだまだ改善の余地があると感じています。  一方で、インターネットインフラをはじめとする我々の「岩盤事業」において、1,240万(2019年12月発表時点)を上回るお客さまにご利用いただいている事実については、感謝とともに高く評価しています。日々、経営にまつわるあらゆる数字が私のもとにあがってきます。そのなかで、新規契約数はつねに注目しています。なぜなら、それはお客さまの間での当社の人気度にほかならないからです。

100年存続させるために、今なにをすべきか

―従来の主力事業にくわえ、金融や仮想通貨といった「新規事業」も顧客数の伸びをけん引しているようですね。

 まだまだ、緒に就いたばかりです。金融事業は新規事業といっても、30年近く前から構想していたもの。日本の旧財閥系企業をはじめ、国内外で長く続く事業体を研究するなかで、インフラ系事業と金融事業とを組み合わせる事業モデルに、企業成長への示唆を得てきました。そういった事業体にならい、現在のIT時代に置き換えた場合、どのようなカタチになるべきかを研究した末に推進しているのが、現在のインターネット金融事業です。たまたま実行フェーズに入ったのが今というだけで、私のなかで新規事業に乗り出している意識はないんです。

―ならば、熊谷さんが現在もっとも力を入れている経営テーマとはなんですか。

「会社を50年、100年存続させるために、今なにをすべきか」。それに尽きます。統計学的に見ても、会社というものは元来長くは続かないもの。起業してから、10年後も存続しているのは、100社中わずか2~3社というのが統計的に見た現実です。そのなかで会社を長く発展させるにはどうしたらいいのか。それだけが私の追い求める経営テーマと言っていいですね。

No.1しか生き残れない時代

―現時点で、どのような答えが見つかっていますか。

 「世の中になくてはならない事業を手がけること」です。極論すれば、事業というものは、「世の中になくてはならないもの」と、「あってもなくてもいいもの」の2つに分けることができます。長く存続する企業体に共通しているのは、前者の事業を手がけていること。私も、基本的に「思いつきの事業」はしないようにしています。本気で手がける事業は、あくまで仕組みとしてなければ世の中が困る事業。たとえば、ドメインがそうです。これがなくては、インターネットは動かない。なくてはならないものだから、提供させていただいているんです。ただし、そうした事業はなにも当社が提供しなくても、必ず代わりにほかの事業者が提供するもの。だから、その市場で選ばれ、生き残るには、No.1になるしかありません。ネット銀行だって同じです。なくてはならない事業だが、私がやらなくても誰も困らない。だから、GMOにしかできないサービスを提供しないと生き残れないし、やる意味がない。

―だから、GMOは「圧倒的No.1」を信条にしていると。実際、インフラ事業では多くの分野でシェア1位を獲得しています。

 ええ。とてもシンプルな話なんです。我々が普及に貢献したインターネットは、モノやコトの比較を格段に容易にしました。距離や環境といった制約を乗り越え、時間やお金などの比較を瞬時にできるようにした。それこそがIT革命の本質です。自分が買ったモノ、受けたサービスが世の中でどれだけの価値があるか、何番目の価値なのかが、場合によっては手にする前からわかってしまう時代です。そこで生き残るには、お客さまに喜んでもらえるNo.1のサービスを提供し続けるしかないんです。

―これからの時代に、起業家や事業家を目指す若者にメッセージをお願いします。

起業家や事業家を目指す人ならば、真剣になりたいと思い、それに打ち込んで努力してください。人は、自分の思った通りの人になれます。何事も深く考え、ゴールを決め、覚悟をもってのぞめば、できないことなんてありません。誰もが「空なんて飛べるはずがない」と思っていた時代に、「必ず飛べる」と信じたライト兄弟が飛行機を生み出しました。高校中退の私が上場企業9社をつくり、1,200万人を超えるお客さまをもつサービスを生み出すこともできました。大事なのは、限られた時間をいかに有効に使うか。1日は誰にでも平等に24時間しかありません。自分を強く律し、その時間をいかに使うかで人生は大きく変わってくる。「できない」のではなく、自分が「やらない」だけ。クチで言うほど簡単なことではないですが、結局は自分次第。想像できることは、すべてかなうのですから。

熊谷 正寿(くまがい まさとし)プロフィール

1963年、長野県生まれ。東証一部上場のGMOインターネット株式会社を中心に、上場企業9社を含むグループ全112社、パートナー(従業員)6,058名(2019年9月末時点)を率いる。1991年、株式会社ボイスメディア(現:GMOインターネット株式会社)を設立、代表取締役就任。1995年、インターネット事業を開始。1999年に「独立系インターネットベンチャー」として国内初の株式上場。「すべての人にインターネット」を合言葉に、インターネットインフラ事業、インターネット広告・メディア事業、インターネット金融事業、仮想通貨事業を展開。2018年7月には、「No.1テクノロジーバンク」を標榜する新しいネット銀行事業を開始。

GMOインターネット株式会社

設立 1991年5月
資本金 50億円
売上高 1,961億7,100万円(2019年12月期)
従業員数 6,058名
事業内容 インターネットインフラ事業、インターネット広告・メディア事業、インターネット金融事業、仮想通貨事業
URL https://www.gmo.jp/
※このサイトは取材先の企業から提供されているコンテンツを忠実に掲載しております。ユーザーは提供情報の真実性、合法性、安全性、適切性、有用性について弊社(イシン株式会社)は何ら保証しないことをご了承ください。自己の責任において就職、転職、投資、業務提携、受発注などを行ってください。くれぐれも慎重にご判断ください。