「ベクトル合わせ」が、難しくなる
―「成長の壁」とは具体的にどのようなものでしょう。
端的に言うと、人数が増えることによって、全社員が同じ想いにベクトルを合わせていくのが難しくなる事象です。人数が少ないうちは、経営者と従業員との距離が近く、密にコミュニケーションが図れます。しかし、30名を超えたあたりから、経営者が全社員を管理するのは難しくなる。そこで、経営者と従業員の間に、新たにマネジメント層ができる。その階層ができることによって、さらに経営者と従業員との距離が開く要因になりえるのです。
マネジメント層も、新たな業務が増えることで、本来もっていた想いや熱量よりも、管理や社内ルールの設定を重視してしまいがちに。結果、創業当時にみんながもっていた想いや熱量はどんどん薄くなり、会社に安定を求めたり、タスク処理をすること自体が目的化した人材が出てきたりする(下図参照)。高い目標をもってがんばるというよりは、目の前しか見えていない人材が増えていくのです。
―解決策を教えてください。
従業員数が増えても、共通の目的にベクトルを合わせながら一人ひとりが高い目標をもって働き続けられるようなマネジメントツールが必要になってくるでしょう。代表的なものでは「MBO(※)」が有名で、多くの企業で導入されていますよね。確かにMBOは運用しだいで効果的なツールになりえますが、扱うには注意が必要です。
※MBO:Management by Objectivesの略。従業員が自身の数値目標を設定し、その目標の到達度に応じて人事評価を行う制度のこと
―どのような注意でしょう。
従業員が設定した、数値目標を達成すること自体が目的になってはいけないということです。本来であれば「事業で社会に貢献したい」といった大きな想いを達成するのが目的であり、「月に売上100万円を達成する」のはその手段に過ぎないはず。それが主たる目的となってしまうと、現実的な数値を設定しがちになり、チャレンジングな目標を掲げなくなります。また、個人の人事評価・査定を目的としているため、「自分だけ達成すればいい」と個人主義に走りかねません。
そういった背景もあり、近年では新しいマネジメントツールが注目されています。それが当社で提案している「OKR」です。
高い目標に対して、挑戦し続けることが重要
―詳しく教えてください。
「Objectives Key Results」の略語であり、インテルやGoogleなどの企業で導入されているツールです。特徴としては、まず目的が個人の目標達成ではなく、イノベーションを生み出すような組織の目標達成をすえていること。ここでのポイントは、「現状の延長線上ではなくチャレンジングな水準」「プロセスをこまめに共有する」という点です。具体的には「若者に圧倒的に支持されるようなアプリをつくる」といった目標を目指すようなイメージですね。現状を大きく上回る高い目標だからこそ、失敗もするでしょう。その失敗を否定するのではなく、プロセスもきちんとこまめに共有しながら運用する。
さらにそれぞれのチャレンジングな目標を全社に公開することで、社内で応援する雰囲気も醸成できる。それが、個人の成長につながり、結果的に組織の成長につながるのです。
―「成長の壁」を越えてさらなる飛躍を望む、ベンチャー企業の経営者にアドバイスをお願いします。
繰り返しますが、OKRは高い目標を設定しているぶん、プロセスのこまめな共有が重要です。また、こうした新しいツールの導入は、ときに現場の不安や混乱を招きます。そのため当社では、導入から運用まで伴走するので安心してほしいですね。興味のある経営者の方は、ぜひご連絡ください。