近年の物価高により、経費削減は喫緊の課題に
―経費削減に悩む、中小・ベンチャー企業の経営者は多いのでしょうか。
多いと感じます。大手企業ほど資金的な余力がない中小・ベンチャー企業の経営者は、会社の競争力を維持・向上させるため、売上アップを図ると同時に、キャッシュフローの改善に努めようとしています。そのために経費削減を考える経営者は少なくありませんが、会社を経営していくうえで固定費の大半を占める人件費は、人材不足の昨今、簡単に下げることはできません。そのため、経費削減をしたくても、なかなか良い手立てを打てていない経営者は多いようです。しかも、近年の物価高により、たとえ売上は変わらなくても出ていくお金が増えるばかりで、経費削減は経営者が着手すべき喫緊の課題となっているのです。
―良い方法はありますか。
社会保険料を抑えるのは、有効な方法の一つです。そのために私は、企業年金制度、なかでも企業型確定拠出年金(以下、企業型DC)の導入を推奨しています。企業型DCは、企業が掛け金を拠出し、従業員が自らその資金を運用して年金を形成していく制度です。そして、従業員が給与の一部を積み立てる「選択制」の場合、その積み立て分は給与から除外されるため、結果として企業と従業員双方の社会保険料の削減が見込めます。たとえば、従業員数100名規模の場合、おおよそ毎月900万~1,000万円くらいの社会保険料を企業が払っています。私が導入を支援した会社の事例では、全社員が加入していないにもかかわらず、年間百万円単位で削減したケースがあります。掛け金額や給与の額によって変動するのが前提ですが、従業員数の加入率が上がれば、さらに社会保険料を下げることは可能です。そして企業型DCの導入は、単に経費を削減する以上のメリットがあります。
―それはなんでしょう。
従業員に対する老後の資産形成が望めるため、結果として「従業員の将来を考えてくれている企業」としてのアピールになり、人材の定着に加え求職者への訴求にもつながります。データによると、2023年度末における厚生年金保険を適用している事業所数は279万1,000ヵ所(※)である一方、企業型DCを導入している事業所数は、2025年3月末時点で5万8,326ヵ所(※)です。厚生年金保険を適用している事業所は、企業型DCを導入する資格を満たしているという点を考慮すれば、約2%の事業所しか企業型DCを導入しておらず、他社と福利厚生で差別化を図るための好機だといえます。また、厚生年金保険の被保険者であれば、経営者や役員も加入可能なため、自身の退職金準備や個人の節税対策として活用できます。実務の煩雑さから、導入するには専門家のサポートが必要ですが、会社の経費削減だけでなく、従業員や経営者の将来における資産形成に役立つ企業型DCは、おすすめの企業年金制度といえるでしょう。
※279万1,000ヵ所 : 出所/厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
※5万8,326ヵ所 : 出所/運営管理機関連絡協議会「確定拠出年金統計資料(2025年3月末)」
不動産の提案や相続対策など、幅広く伴走支援を行う
―専門家を選定するにあたってのポイントはありますか。
企業型DCを導入するには、従業員の方々の理解と納得を得られるようなサポートまで請け負う専門家を選定すべきでしょう。たとえば当社の場合、企業の状況に合った制度設計や各種手続き代行はもちろん、事前に従業員の方々向けに説明会を開催して意識調査を行い、加入希望者がどれくらいいるのかヒアリングを行ったうえで研修を実施。「なぜこの制度を導入するのか」「自分たちにどんなメリットがあるのか」を、私も含めたIFA(※)が直接説明します。また、金融教育研修を定期的に行うほか、LINEアカウントを作成し、運用商品や掛け金額の相談、そのほか別途NISAとの併用といった資産形成の相談も個別で行います。
また、それだけにとどまらず、もっと幅広い伴走支援も行います。
※IFA : Independent Financial Advisor(独立系ファイナンシャルアドバイザー)の略で、特定の金融機関に所属することなく中立的な立場で金融アドバイスをする専門家のこと
―詳しく教えてください。
資産運用向けの不動産および金融商品の提案や、相続対策といった相談にも対応します。私は新卒で大手総合不動産会社に入社し、個人向けに不動産を提案する業務を行っていました。仕事にやりがいを感じていましたが、富裕層のお客さまから生前相続対策の相談を受けるようになり、不動産だけでなく金融商品の知識も必要だと感じるようになりました。その後、より多くの人たちの「将来の不安」をなくしたいと思うようになり、「経済不安をなくし、彩りある今と幸せな未来を共創する」というビジョンを掲げ、ウェルスゲートを立ち上げたのです。
―永続的な会社経営を目指す中小・ベンチャー企業の経営者にアドバイスをお願いします。
ぜひ、企業型DCを活用することで、会社の経費を削減するとともに、従業員と自身の老後の資産形成に役立ててほしいですね。企業型DCは大手企業で普及は進んでいるものの、中小・ベンチャー企業ではそうではありません。それは企業型DCの認知度がまだ低いことに加え、大手企業に比べて従業員数の少ない中小・ベンチャー企業に対し、費用対効果の面から金融機関などが積極的に提案をしてこなかった背景があります。当社は、従業員の方々や経営者のライフプランに長く・深くかかわっていくことで、自社の成長につなげようと考えています。ですから、中小・ベンチャー企業に向けて積極的に提案できるのです。企業型DCを広く普及させ、老後の安心を手にする方々を一人でも多く増やすことで、働く人の未来を支え、企業の成長、そして社会全体の活力向上に貢献していきたいですね。




