直営店を中心に 国内800店舗をめざす
―消費増税で流通業界に逆風が吹くなか、2015年の2月期は計画どおりに直営店の前期からの純増が50店舗、2016年2月期は同100店舗を予定し、拡大路線を続けています。外部環境が悪化しても、強気の手が打てるのはなぜでしょう。
店舗数がまだまだ少ないからです。現在、FC加盟店107店舗を含めると約460店舗ですが、これはあくまで通過点。なぜなら、1994年に会社を設立した当初から「5年以内に全国500店舗を展開する」という目標を立て、1999年9月には実際に達成したからです。
会社を立ち上げて間もない当時は、FC加盟店を中心に店舗を展開。とにかく店舗数を増やして、認知度を上げる戦略をとったのです。おかげさまで近年は「ガリバーブランド」も定着し、店舗をまかせられる人材も育ってきました。古株となったFC加盟店の跡取り不在という問題もあり、徐々に直営店へとシフトしてきたのです。
2018年までには、直営店を中心に800店舗を出店する予定です。
―これ以上出店を続けると飽和状態になりませんか。
ならないですね。中古車ビジネスは、まだまだ開拓の余地がある市場です。
たとえばトヨタの販売店舗数はディーラーを含め、全国で5000店を超えています。自動車メーカー1社だけでこの数字ですよ。一方、我々が手がける中古車ビジネスは、すべてのメーカー車をあつかえるわけです。競合もあるので単純に比較できませんが、それでも1000店舗だって全然たりない。
だからこそ、積極的に店舗展開しているのです。たとえ景気の悪化や消費増税といった影響があっても気にしません。そこにまだ大きなマーケットがあるのですから。社内体制が整ったいま、一気に拡大を図っていきます。
「不透明さ」を排除した 独自のビジネスモデル
―中古車業界において、1550億円超と圧倒的な売上高を誇っています。なぜ他社の追随を許さないのでしょう。
当社が「買取専門」のビジネスモデルだからです。エンドユーザーから買い取った車は、すぐに全国のオークションに出品するので在庫をもちません。買取査定は本部で一括して行うため、同じ種類の車で似たような状態なら、全国どこでも同じ値段で買い取ります。在庫リスクや販売経費がかからないぶん、高く買い取ることができる。結果、エンドユーザーも安心して車を売ることができるのです。
一方、自社で中古車を販売する場合は、売れるまで車を展示場に置き続けなければなりません。早く売れればいいですが、売れないかもしれない。時間が経てば経つほど車の価値が下がり、展示場を運営する人件費や宣伝費もかかる。そうしたリスクをふまえると、「できるだけ安く買い取って高く売りたい」となってしまうのです。
―結果的に、不透明な取引になりかねないということでしょうか。
もちろんすべてがそうだとはいえませんが、起こりえる話です。私自身も昔、車を安く買い叩かれた経験がありますから。そうなると、エンドユーザーから信頼を勝ち取るのは難しい。「買取専門」を掲げる会社も増えていますが、多くは中古車販売との兼業なのです。
当社の事業は、不透明さをいっさい排除したビジネスモデル。それが評価され、実績にも反映されているのだと思います。
在庫を減らすために 販売チャネルを拡大する
―近年は、展示場での小売も積極的に行っています。「買取専門」のビジネスモデルからの転換を図っているのですか。
いいえ。当社の主軸はあくまで「買取専門」です。ただ、オークションに出品するまで1週間から10日くらいの待ち時間があります。その間、モータープールに寝かしておくのはもったいない。1998年から「ドルフィネット」というインターネット上での小売を開始していますが、さらに展示場に置いて販売し、少しでも待ち時間を短縮する手段を増やそうとしているのです。
現在、積極的に展開しているのが、車の乗り換えというイベントを楽しんでもらうための大型展示場「WOW!TOWN(ワオタウン)」です。さらに、車体にキズがあったり走行距離が長い車は「ガリバーアウトレット」で販売するなど、さらに販売チャネルを拡大中です。
小売で販売すれば、任意保険やカーナビなど付帯サービスの販売が見こめ、リピーター獲得も期待できます。しかし、これらはあくまで小売で「在庫」を抱えるのではなく、在庫を減らす手段だという位置づけは変わりません。
中古車業界イメージを払拭するための立地戦略
―会社の成長には、優秀な人材の獲得が欠かせません。どのような人材戦略を行っているのでしょう。
ヘッドオフィスの立地場所にこだわっています。私は創業時から「世界の頂点に立つ」と恥ずかしげもなく言い続けてきました。社名に「インターナショナル」とつけたのも、最初から世界を見すえていたから。そこに共感する人材をどれだけ集める環境をつくるかが課題でした。
最初は、私の出身地である福島県に本社を構えたのですが、そこから世界をめざす人材を集めるのは難しい。そこで、1996年に千葉県浦安市に移転しました。しかし、それでも厳しい。中古車業界とイメージが合いすぎるんです。浦安市の広大な敷地にズラーッと車が並ぶなんて、いかにも中古車ビジネスっぽいじゃないですか(笑)。
―それでどうしたのですか。
次は、逆の発想をしました。中古車ビジネスのイメージに、いちばん似合わない場所はどこだろうと。思いついたのが、日本でも屈指のビジネス街である東京の丸の内です。2006年に移転。これが正解でした。
―オフィスを移転するだけで、集まる人材も変わってくるのですか。
まったく変わりました。まず、丸の内に本社を移転することで、当社に対する世間の見方が変わりました。当社はわかりやすくて安心できる買取価格の設定を心がけていますが、世間からすれば中古車ビジネスはまだまだ価格設定が不透明なイメージがあった。それが、本社が丸の内にあるだけで「あの会社は信用できる」となったのです。
信用が高まるとともに、質の高い人材も集まってきました。オフィスの立地は、当社にとって重要な戦略でしたね。
―人材育成についてはいかがでしょう。
一人ひとりの意欲を重視するようにしています。具体的な事例のひとつに「チャレンジ申請」という制度があります。これは、熱意ある人材に異動の機会を与えて成長をうながす制度。実際に、入社3年未満の新卒社員8名が海外で活躍していますよ。
ニュージーランドでは 新人が月40台を販売した
―海外戦略について教えてください。
現在、アメリカ4店舗、タイ5店舗、ニュージーランドとオーストラリアで各1店舗を展開中です。
海外ではそれぞれ現地の事情が異なるため、当社の「買い取ってオークションで売る」ビジネスモデルをそのままもっていっても通用しません。そのぶんやりがいもあるので、じっくりと方策を練っていこうと考えています。
ただ、昨年11月に初めて進出したニュージーランドは、すでに売れ行き好調です。
―要因はなんですか。
日本の中古車輸出先として上位に入る主要市場であり、当社のビジネスモデルがマッチしたからです。ニュージーランドは日本と同じ右ハンドルで、中古車の輸入の95%くらいが日本から。おまけに関税も免除されている。もともと売れる要素はあったのです。
なかでもいちばん売っているのは、アルバイトで入って正社員になったマレーシア出身の26歳の女性。車の素人なのに「ドルフィネット」の使い方を説明しただけで毎月コンスタントに販売数を増やし、今年の3月に40台を売り上げたんです。ディーラーで、月40台をひとりで売ろうと思ったら大変ですよ。
今後は右ハンドルのオセアニアを中心に、海外での拡大を進めていきます。
実現不可能な目標ほどワクワクする
―最後に、中小・ベンチャー企業の経営者にアドバイスをお願いします。
経営でいちばん大事なのは、ロマンをもつことです。極端な話、システムやビジネスモデルなんかは二の次でいいんです。だれでもできることをやっても面白くないでしょ。それはスポーツでも一緒。100mを30秒で走ってもつまらない。どうせやるなら10秒を切るくらいをめざしていかないと。それがロマンです。
不可能と思えることほど、挑戦しがいがありますからね。実現困難な理由を「不景気だから」「消費増税だから」とか、外部のせいにしてもただの言い訳にすぎません。向かい風に対して「もうムリだ」とあえいでいる人と「どうやって乗り切ってやろうか」とワクワクしている人では、結果も異なるはずです。
私の場合は、世界の頂点をめざすという夢を夢で終わらせたくなかった。そのため「絶対にやるよ」って言いきってここまできた。だからあとはやりきるだけなんです。