成長の源泉は、製販一体のビジネスモデル
―事業内容を教えてください。
配置薬販売事業とドラッグストア事業といった医薬品の販売にくわえ、市販薬の製造や、医療用医薬品の研究開発を行っています。主力は「セイムス」ブランドを中心としたドラッグストアと調剤薬局による販売事業で、現在全国に1,350の店舗を展開しています。新薬の開発事業においては、2013年の「トピロリック錠」に続き、2020年には「ユリス錠」を発売。いずれも痛風の薬であり、この領域はさらなる研究を進め、注力しているところです。
―2020年には創業から90年を迎えました。創業から現在までをどのように振り返っていますか。
「自社で開発して自らつくり、販売する」という高収益型の事業モデルを早くから確立したことが、当社の成長につながったと考えています。
1930年、富山県で創業した配置薬事業は、いまでは全国285ヵ所に拠点を展開し、300万軒のお客さまに「置き薬」を販売しています。配置薬事業を始めた後は、医薬品の製造にも事業領域を広げたことで、製販一体のビジネスモデルを確立できました。これによって収益基盤がより強固になり、高収益型の事業モデルを構築できたことが、後のドラッグストア事業と医薬品開発事業への展開につながっていったのです。また、先行していた配置薬事業による当社の知名度から、ドラッグストア事業における新卒社員の採用がスムーズに進み、市販薬の製造で培った技術基盤が新薬開発事業につながりました。
当時、業界でも珍しかった製販一貫体制の確立こそが、当社の成長のベースになったと振り返っています。
―画期的なビジネスモデルを確立できた要因はなんでしょう。
現状に甘んじることなく、つねに新しいものにチャレンジしていく気概を大切にしてきた点が挙げられます。現状維持を好まず、新たな事業に果敢に挑戦することで得られた成長と言えます。
私たちは配置薬の販売から事業をスタートし、医薬品の製造はまったく未知の世界でした。そこにあえて飛び込んでいったのは、チャレンジ精神以外の何物でもありません。その意味でも、当社が事業を進めていくうえで大事にしているのが、夢やビジョンを成し遂げるための強い想いです。「どうかな」と思うことがあれば、まずは行動する。「迷ったらやってみる」ということは、私たちがもっとも大切にしている信念です。
いつでも近くに薬がある、安心な社会を築いていく
―現在はM&Aも積極的に展開しています。それも踏まえ、今後の方針について教えてください。
ドラッグストア事業は現在の主力事業であり、そこにおいて私が重視しているのは全国展開の強化です。それを進めていくうえで、M&Aは重要な手段のひとつであると考えています。
いま、ドラッグストア業界は7兆円産業と言われていますが、そのなかで上位10社が市場シェアの7割を握っています。今後、市場がいっそう成熟化していくことで、業界の寡占化はさらに進むと予測されます。それを踏まえ、M&Aの推進とともに、当社ではこの2年間で「業革プロジェクト」と位置付けた社内改革に取り組み、人材の育成や業務の効率化も推し進めてきました。業界での存在感をいっそう確固たるものにしていけるよう、より強い組織へと成長させていきたいと考えています。
こうして組織力の強化を図りつつ、今後はさらに新しいサービスの展開も模索しているところです。
―どのようなサービスですか。
たとえば、当社の救急箱を置いてもらっているお客さまに向けて、ドラッグストアの商品や付随するサービスをお届けするプランです。これは、当社の強みである、配置薬とドラッグストアの「2wayチャネル」を活かした事業となります。
当社は、お客さまとの長いお付き合いのなかで、高い信頼をいただいています。この信頼は、全国の営業パーソンがFace to Faceのコミュニケーションによって培ってきたもの。個々のお客さまがどのような薬や健康食品を求めているかということも、よくわかっているのです。「登録販売者」という専門家が各家庭を訪問するという安心感を与えるなかで、薬や健康食品などを広範囲に届ける新しいビジネス展開ができると思いますね。
―今後のビジョンを聞かせてください。
「いつでも近くに薬がある」という安心な社会を築いていくことです。そのためにも、当社は引き続き、生活を豊かにする新薬の開発を含め、みなさんの生活の質を良くしていくための取り組みに力を注いでいきます。これからも、医薬品を中心とした事業で社会に貢献していくという軸は決してブレさせることなく、お客さまの生活に役立つ薬を幅広く提供していきたいですね。