―後継者に十分な資金を残さずに相続・事業承継した場合、どんな問題が起こりますか。
岩松:会社の資金繰りが一気に悪化する危険性があります。たとえば、相続の発生により一時的にせよ金融機関の融資がいったん止まり、取引先も以前より早めの支払いを求めてくる。「相続がまとまり、会社の体制が整うまでは信用できない」というわけですね。さらに、金融資産の口座は、遺産分割が決まるまで凍結されますので、亡くなった経営者にお金があっても、すぐには経営に使えないのです。 伊月:私の経験上、死亡保険金をご遺族にお届けする際、相続の相談を一緒に受けることが多いのですが、スムーズに手続きがすんだことは一度もありません。なんらかの理由で必ずもめることになります。親族間の相続ですらうまくいかないのに、利害関係者が複雑に絡む会社の場合はもっと混乱します。そして相続が長引くほど、会社はピンチになってしまうのです。
―どうすれば、後継者に多くの資金を残せるのでしょう。
岩松:「相続」ではなく「贈与」によって、オーナー経営者の資金を後継者に計画的に移すことです。相続の発生はタイミングを選べないし、最高税率が55%と高い。一方、贈与はタイミングを選べるうえに、節税も図れます。ただし、一度に大きくやると多額の税金がかかるので、計画的に進める必要があります。 伊月:生命保険を組み合わせれば、後継者の受取額を増やすことができます。経営者に対する生命保険の効用は、大きくわけて4つ。①事業保障対策 ②相続・事業承継対策 ③勇退退職金対策 ④緊急一時金対策です。これらを組み合わせることで、効果的に資金を残せます。たとえば当社の場合、逓てい増ぞう定期保険を活用した名義変更プランや「逆ハーフタックス」といわれる養老保険、さらには予定利率の高い変額保険や外貨建て保険を活用した贈与プランなどを組み合わせ、中立的な立場でクライアントにとって最適な解決策を提案します。
―相続・事業承継に最適な保険はありますか。
伊月:一概にはいえません。経営者の考え方、引退する時期や収入、資産の状況、家族構成などによって、適切な保険は変わってきます。 岩松:ファイナンシャルプランナー(FP)が節税や、保険の効果を考えて提案しても、資金繰りや税務リスクを懸念する税理士と意見が食い違うこともあります。そもそも相続・事業承継は、法律や税金、不動産など、幅広い分野にまたがる問題。各専門家がいろいろなことをいうので、それを経営者が総合的に判断するのは至難の業。だからこそ、問題をトータルに解決できる専門家集団のアドバイスを受けるべきです。 伊月:当グループには、公認会計士、税理士、不動産鑑定士、行政書士、司法書士、社会保険労務士、FPなど各分野のスペシャリストが集結。お互いが情報を共有して総合的なサポートをするので、最適なプランをワンストップで提供できます。
―オーナー経営者に対し、相続・事業承継のアドバイスをお願いします。
岩松:会社を誰に承継させるのか、あるいは自分の代で終わらせるのか。まずは、方向性を明確にしてください。それによって、対策は大きく変わります。また、相続・事業承継の対策は短期間で終わるものではありませんし、計画的に行うほど効果も大きくなります。遅くとも、引退予定の10年前から準備を始めることをオススメします。