株式会社丸の内アドバイザーズ 代表取締役/公認会計士 岩松 琢也

トップ交代時の金銭トラブルを回避せよ

株式会社丸の内アドバイザーズ 代表取締役/公認会計士 岩松 琢也

相続・事業承継をスムーズに行うために、節税は有効な手段のひとつだ。実際、多くのオーナー経営者は、生命保険などを活用して対策を行っている。しかし、税務のプロである丸の内アドバイザーズの代表・岩松氏は「自分自身や会社にではなく、後継者に資金を残すことが重要」と指摘する。金融・保険のプロである伊月氏を交えて、相続・事業承継で起こりえる問題と対策を聞いた。

※下記は経営者通信27号(2013年9月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

―後継者に十分な資金を残さずに相続・事業承継した場合、どんな問題が起こりますか。

岩松:会社の資金繰りが一気に悪化する危険性があります。たとえば、相続の発生により一時的にせよ金融機関の融資がいったん止まり、取引先も以前より早めの支払いを求めてくる。「相続がまとまり、会社の体制が整うまでは信用できない」というわけですね。さらに、金融資産の口座は、遺産分割が決まるまで凍結されますので、亡くなった経営者にお金があっても、すぐには経営に使えないのです。 伊月:私の経験上、死亡保険金をご遺族にお届けする際、相続の相談を一緒に受けることが多いのですが、スムーズに手続きがすんだことは一度もありません。なんらかの理由で必ずもめることになります。親族間の相続ですらうまくいかないのに、利害関係者が複雑に絡む会社の場合はもっと混乱します。そして相続が長引くほど、会社はピンチになってしまうのです。

―どうすれば、後継者に多くの資金を残せるのでしょう。

岩松:「相続」ではなく「贈与」によって、オーナー経営者の資金を後継者に計画的に移すことです。相続の発生はタイミングを選べないし、最高税率が55%と高い。一方、贈与はタイミングを選べるうえに、節税も図れます。ただし、一度に大きくやると多額の税金がかかるので、計画的に進める必要があります。 伊月:生命保険を組み合わせれば、後継者の受取額を増やすことができます。経営者に対する生命保険の効用は、大きくわけて4つ。①事業保障対策 ②相続・事業承継対策 ③勇退退職金対策 ④緊急一時金対策です。これらを組み合わせることで、効果的に資金を残せます。たとえば当社の場合、逓てい増ぞう定期保険を活用した名義変更プランや「逆ハーフタックス」といわれる養老保険、さらには予定利率の高い変額保険や外貨建て保険を活用した贈与プランなどを組み合わせ、中立的な立場でクライアントにとって最適な解決策を提案します。

―相続・事業承継に最適な保険はありますか。

伊月:一概にはいえません。経営者の考え方、引退する時期や収入、資産の状況、家族構成などによって、適切な保険は変わってきます。 岩松:ファイナンシャルプランナー(FP)が節税や、保険の効果を考えて提案しても、資金繰りや税務リスクを懸念する税理士と意見が食い違うこともあります。そもそも相続・事業承継は、法律や税金、不動産など、幅広い分野にまたがる問題。各専門家がいろいろなことをいうので、それを経営者が総合的に判断するのは至難の業。だからこそ、問題をトータルに解決できる専門家集団のアドバイスを受けるべきです。 伊月:当グループには、公認会計士、税理士、不動産鑑定士、行政書士、司法書士、社会保険労務士、FPなど各分野のスペシャリストが集結。お互いが情報を共有して総合的なサポートをするので、最適なプランをワンストップで提供できます。

―オーナー経営者に対し、相続・事業承継のアドバイスをお願いします。

岩松:会社を誰に承継させるのか、あるいは自分の代で終わらせるのか。まずは、方向性を明確にしてください。それによって、対策は大きく変わります。また、相続・事業承継の対策は短期間で終わるものではありませんし、計画的に行うほど効果も大きくなります。遅くとも、引退予定の10年前から準備を始めることをオススメします。

岩松 琢也(いわまつ たくや)プロフィール

1970年、千葉県生まれ。公認会計士、税理士。1993年に一橋大学を卒業後、監査法人トーマツ(現:有限責任監査法人トーマツ)に入所し、公開支援業務、法定監査などの経験を積む。1994年より、石津・野口会計事務所および千葉第一監査法人にて、法人・個人の税務に携わる。2001年、株式会社ストライクの設立に参画し、中小・中堅企業のM&A仲介業務や企業価値算定、デューデリジェンス業務などを担当。2009年、株式会社東京MAパートナーズ(現:株式会社丸の内アドバイザーズ)を立ち上げ、代表取締役に就任。2010年に税理士法人丸の内アドバイザーズを設立。

■株式会社丸の内アドバイザーズ
設立/2009年7月
資本金/1,000万円
事業内容/税務相談、企業評価、事業承継(相続・M&A)、金融・保険サービス、不動産コンサルティング(鑑定)、登記、人事・労務コンサルティングなど
URL/http://www.m-adv.co.jp/

株式会社フィナンシャルリンクサービス 代表取締役 伊月 貴博(いづき たかひろ)プロフィール

1964年、大阪府生まれ。1987年に京都産業大学を卒業後、新日本証券株式会社(現:みずほ証券株式会社)に入社。リテールマーケットを開拓した後、労働組合委員長、支店マネージャーを歴任。2004年、AIGスター生命保険株式会社に入社。MDRT(世界中の生命保険・金融サービス専門職の毎年トップクラスのメンバーで構成された組織)の入会基準を毎年達成しつつ、セールスマネージャーとして人材のスカウト、育成、コーチングによる組織拡大を実現。2009年、株式会社フィナンシャルリンクサービスを設立し、代表取締役に就任。2010年から、株式会社丸の内アドバイザーズの取締役を兼任。生命保険と資産運用を一体化させた、完全独立・中立型の総合金融サービスを展開。MDRTは8年連続入会。2012年度からは、MDRT入会基準の3倍以上の成績が必要なCourt of the Table会員。

■株式会社フィナンシャルリンクサービス
資本金/1,000万円
事業内容/金融商品仲介業務、生命保険の募集に関する業務、ファイナンシャルコンサルタント業務、投資アドバイザリー業務、各種セミナー及び講演会の開催
URL/http://www.f-ls.co.jp/
TEL/03-5798-7607(平日9:00~17:00)

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