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SBIホールディングス株式会社 代表取締役 北尾 吉孝

学び、洞察し、備える

※下記は経営者通信7号(2010年7月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

―SBIグループは積極的な海外進出を進めています。投資余力のある企業は海外進出も考えるべきでしょうか。

北尾:もちろんです。2008年のダボス会議で、当時米国務長官だったライス氏が言ったように「Globalization is not a choice but a fact」です。企業はグローバリズムを無視して生き残ることなどできません。日本もグローバル経済の歯車のひとつです。だから、グローバル対応も常日頃からやらなきゃいけない。すべて常日頃のことなんです。たとえ、現在の業績が好調だとしても、国内市場だけではジリ貧になります。したがって、経済成長率の高い他国に何としても食い込まなければいけないんです。いま日本の成長率は低迷しています。ここ数年は2%前後、2008年度はマイナス成長でした。おそらく今後も低成長が続くでしょう。一方、中国の経済成長率は10%弱。非常に高い成長率です。また2021年には、中国のミドルクラス(中間層)が1億人を超えると予想されています。つまり、あと10年で日本の人口に匹敵する巨大な消費マーケットが生まれる。その成長市場を掴もうとすべきです。

―北尾さんは中国古典に造詣が深く、いくつかの関連著書も出版しています。経営者は古典から何を学ぶべきでしょうか。

北尾:愚者は経験に学び、賢者は歴史に学びます。人間の本質は洋の東西、古今を問わず変わりません。人間が苦労することも変わりません。また、古典は何千年という“時のふるい”にかけられ、今日まで読み継がれています。したがって、古典から学ぶべきことは非常に多いはずなんです。たとえば、どうすれば国は栄えるのか。どうすれば多くの民を統治できるのか。一国の盛衰は一企業の盛衰と似ています。そこには経営のヒントがたくさんありますよ。「なるほど」と思うことが多い。『論語』の場合、人間の生き方、人間社会の秩序、親子関係を円滑にする方法。そういった基本的な原則を学ぶことができる。また、自分自身の成長に伴って読解レベルも深まります。経験を重ねていくと、短い言葉に込められた奥深い意義が読み取れるようになる。だから、読み返すたびに新たな発見があるわけです。

―SBIグループは2008年4月にSBI大学院大学を開校しました。同校の特徴のひとつも中国古典を活用した教育ですよね。

北尾:そうですね。戦後、そういう教養を教える学校がなくなってしまいましたから。「修身」の授業も含め、戦前教育のすべてが否定されてしまった。しかし、「いかに生きるべきか」という基本は太古の昔から変わりません。たとえば「修身斉家治国平天下」という言葉が『大学』に記されています。天下を治めるには、まず自分の行いを正しくする。次に家庭を整え、国家を治める。そして天下を平和にする。最初に自分自身が変わらなければ、国なんて変わりっこないですよ。でも、こういった「人間学」を教える学校がなくなってしまった。だから私が作ろうと思ったわけです。同時に本校ではインターネット時代の経営学、法務や会計など、実践的な実学も教えています。まさに「論語と算盤」。そして学校を作るからには、卒業生がMBAを取得できるようにしました。

―結果として、大学院大学という形になったわけですね。

北尾:ええ。学生の多くはビジネスリーダーを目指しています。将来は多くの部下を持つようになるでしょう。だから、卒業生には周りの人たちをぜひとも感化してほしい。「一燈照隅 万燈照国」という言葉があるように、一つの灯りは片隅しか照らせませんが、万の灯りは国全体を照らすことができます。優れたリーダーが周りに良い影響を与えれば、灯りがどんどん増えていく。そして、万の灯りが集まれば、世の中を良くすることができます。いつの時代も新しい文明や文化を創り出すのは、個人です。決して大衆ではありません。偉大なる個人が新しい世界を描き、まずエリート層に浸透させる。そして、ある日突然、大衆を動かし、文明や文化として花開く。これが人類社会の進歩の歴史なんです。かつて昭和の碩学とも言われた安岡正篤氏は「日本農士学校」や「金鶏学院」という私塾をつくりました。激動の時代の中で、彼は人を育てるべきだと考えたんでしょう。たしかに「一年の計」ならば、穀物を育てればいい。でも「百年の計」ならば、人を育てないといけません。私もこれからの百年を見据えて、人を育てたい。そう考えています。

北尾 吉孝(きたお よしたか)プロフィール

1951年、兵庫県生まれ。1974年に慶応義塾大学経済学部を卒業後、野村證券株式会社に入社。ケンブリッジ大学経済学部へ留学後、世界を舞台に活躍。また企業のM&Aや株式公開などに腕をふるう。1995年、孫正義社長に招聘され、ソフトバンク株式会社に常務取締役として入社し、ソフトバンクグループの急成長を支える。2005年、ソフトバンク取締役を退任。現在は、SBIホールディングス株式会社の代表取締役執行役員CEO。中国古典にも造詣が深く、関連著書も多い。

SBIホールディングス株式会社

設立 1999年7月8日
資本金 552億8,400万円(2010年3月31日現在)
売上高 1,245億4,100万円(2010年3月期)
従業員数 3,048名(連結ベース。2010年3月31日現在)
事業内容 株式等の保有を通じた金融企業グループの統括・運営等
URL http://www.sbigroup.co.jp

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