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株式会社リンガーハット 代表取締役会長兼社長 米濵 和英

細心大胆に手を打てば、危機は突破できる

一直線の右肩上がりで成長し続ける常勝軍団をつくるのは不可能。どのようにして危機を克服するか。ここが継続経営の成否をわける最大のポイントだ。日本で唯一、「長崎ちゃんぽん」の全国展開に成功。昨年、創立50周年を迎えたリンガーハットもその例にもれない。最近ではデフレの波にのまれ業績が急降下したことをうけ、2008年に創業家の米濵和英氏が社長に再登板。わずか1年でV字回復を成しとげた。危急存亡のピンチを乗り越え、会社を成長させるにはどうすべきか。米濵氏に再建劇の舞台裏を聞いた。

※下記は経営者通信27号(2013年9月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

―米濵さんは約35年間にわたり経営者として第一線で采配をふるっています。この間、御社は何度かピンチに襲われ、そのたびに復活しました。どのように窮地と対峙してきたのですか。

米濵:「危機のときこそ上を向く」という姿勢を貫いてきました。たとえばバブル崩壊後の1994年、年商200億円規模だった当時に為替差損など約50億円の巨額損失を計上したとき。まず、大きな紙に自分の手で「挑戦・2000年に東証一部上場」と書き、本社内でもっとも社員の目につくところへ額に入れてドーンと貼りだしたんです。

―社内の反応はどうでしたか。

米濵:当初、経営悪化で意気消沈していた社員たちは真剣に受け止めていませんでした。しかし、業績が少し上向くと雰囲気がガラッと変化。「がんばればできるかもしれない」と思いはじめ、社員たちが明るくなったんです。それから6年後の2000年、宣言通りに東証一部への上場が実現しました。あのとき、仮に「黒字回復」などの短期目標を立てていたら、今日のような成長はなかったでしょう。目先の業績に一喜一憂せず、遠くを見つめて大きなビジョンを描いたから、当社はじまって以来の危機を克服することができたんです。

―その後、2006年に代表権のない会長に就任。しかし、3年後には社長に復帰します。その理由を教えてください。

米濵:業績悪化に歯止めをかけ、会社を立て直すためです。私が社長を退いた際、社員たちを別の視点から鍛えてほしいとの期待を込め、後任の社長を外部から招きました。新社長は一生懸命やってくれたのですが、デフレの影響で利益率が低下してしまった。上場企業の経営は厳しい。3年たっても落ち込んだ利益率を回復させることができなければ、経営者としての責任が問われます。それで異例の再登板となりました。

―再登板にあたって、葛藤はありませんでしたか。

米濵:じつは経営の第一線に復帰する気持ちは、毛頭なかったんです。図らずも社長復帰したきっかけは、すかいらーく創業者で尊敬する茅野亮さんからの忠告でした。茅野さんいわく、「抜本的な経営改革を成しとげられるのは創業家出身である、あんたしかいない」と。そう言われた直後は、「そんなものかな」と納得するような気持ちと「でも、改革に失敗したらどうしよう」という恐さで、なかなか決断ができませんでした。

―なにが決め手となったのですか。

米濵:苦悩した末に「危機を脱する本当の原動力とは、経営手法の巧拙ではなく、会社に対する想いの深さ、強さなんじゃないか」と悟ったことです。では、もっとも会社に対する想いが強く、再建社長にふさわしいのは誰なのか。そう考えてあらためて周囲を見渡しとき、自分以外に最適任者はいませんでした。初代社長で長兄の豪が始めた飲食店の手伝いを出発点として、私は50年近く当社の経営に携わってきました。ですから、会社はわが子同然。ほかの誰よりも愛していると断言できます。再登板すると腹をくくってからは「会社のことを隅々まで知り抜いている自分が失敗するはずがない」「自分が失敗したら、誰も成功させることはできない」という強い気持ちが心のなかにわき起こりましたね。そのとき、茅野さんがおっしゃった「あんたしかいない」という言葉の本当の意味が理解できました。創業家は会社の危機から逃げることはできないし、逃げてはいけないんです。

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