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亀田製菓株式会社 代表取締役会長 CEO 田中 通泰

「私の判断の3割は間違っている」トップにその自覚がなければいけない

新潟が生んだ小さなせんべい『柿の種』。この菓子を、ピーナッツとともに少量ずつ小分けして販売するなどの斬新なアイデアで、国民的人気を博するまでに押し上げたのが亀田製菓だ。同社を牽引するのが、銀行出身のCEOである田中氏。2006年のトップ就任以来、海外への積極展開という「攻め」と、地道なコスト削減努力という「守り」を推進する。「総合力を高めて世界で戦う」と語る同氏に、経営戦略の詳細を聞いた。

※下記は経営者通信号(2017年12月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

世界で戦うためにしがらみを断ち切った

―2017年3月期の連結売上高は982億円超、同じく経常利益71億円超で、過去最高益を更新しました。業績好調の要因はなんですか。

 コストダウンに努め、利益率を改善してきたことです。まずは人件費の削減。合理化を徹底して進め、2000年ごろと比べると製造現場でも営業部門でもスタッフ数が半分になりました。

 また、仕入れに入札制度を導入し、コストを低減。当社は伝統ある企業ですから、長年、取引してきた仕入れ先もあります。でも、そのしがらみを断ち切って、コストダウンを優先した。結果、売上高に対する営業利益率は、2000年代初頭は3~4%だったのが、いまは7%にまで改善しています。

― 長年続いた取引先との関係を断ち切ったのは、田中さんに不退転の覚悟があったからこそと思います。そこまでしてコスト低減を推進した理由を教えてください。

 世界で戦うためです。当社は「グローバル・フード・カンパニー」を標榜し、海外市場へ積極的に打って出ようとしています。なかでも、いまは米国市場の開拓に注力しているところ。製造拠点や販売網を広げるには大きな投資が必要で、利益率を高めて資金をたくわえる必要がある。それに、敵対的な企業買収を防ぐ意味もあります。米国ではM&Aがさかんです。利益率を高めることで株価を上げ、買収されにくくするわけです。

―米国市場のどんな点に魅力を感じているのでしょう。

 当社の主力商品である米菓がヘルシーフードだと認識され、市場が急速に拡大していることです。米国における米菓の市場規模は、現在370億円。国内市場の2600億円の約7分の1ですが、毎年10~20%の割合で伸びています。一方、国内市場は頭打ち。これまでは歳をとると米菓を食べるようになっていたものですが、いまの50~60代がチョコレートを嗜好していて、将来の見通しは厳しい。

 しかし、米国は違う。当社は競合他社に先行して米国市場の開拓に注力したおかげで、米国の米菓市場の6割のシェアを占有。国内では3割程度なので、肥満の増加や栄養が少ない食事が社会問題となり、その解決策としてヘルシーな食品が求められている米国のほうが大きく伸びる余地があるのです。

休日に30代の若手を集め「10年後の亀田」を議論

―なるほど。亀田製菓といえば、今年8月に海外どころか宇宙へ進出。宇宙航空研究開発機構から特別パックの『柿の種』が宇宙日本食の認証を取得したことが話題になりました。今年5月に新潟大学と植物性乳酸菌の健康や美容分野への活用をめざす包括連携協定を締結するなど、技術革新に積極的に取り組んでいます。進取の気風をどうやって保っているのですか。

 トップである私自身が将来を見通し、大きな絵を描いたうえで、社内に発信し続けています。たとえば、いま「1日3食とり、おやつとしてお菓子を食べる」という習慣が変わりつつあります。とくに若い人の間では「好きなものを好きなときに食べる」という傾向になっています。「食事のおかず」も「お菓子」もとくに区別はない。たとえば『柿の種』を腹満たしに食べるケースもあるわけです。

 そんな時代の変化に対応するため、「別に米菓でなくてもいい、新しい食品のアイデアを出せ」「これまでの仕事のやり方だけでは会社は生き残れないぞ」と発破をかけています。

―よいアイデアは出ていますか。

 いや、まだまだ満足できるレベルのものは出てきていませんね。目の前の業務に追われ、中長期的な視点で考える余裕がないのです。そこで、休日に30代の若手メンバーに自主的に集まってもらい、丸1日かけて私と「10年後の亀田」を議論する「亀田製菓グループの未来を考える会」をもうけています。「自分たちが変えなければ」という意志が強くなり、少しずつ長期的視点がもてるように変わってきています。

―〝田中経営塾〟というわけですね。なぜ若手限定なのでしょう。

 時代の変化に適応し、変革していくには、若い人たちの柔軟な思考が不可欠だからです。彼らのチカラを引き出すための努力はいつもしています。たとえば、いま始業時の20分間は業務の手を完全に止め、部署のメンバーどうしで話をする時間にしています。仕事以外のことを自由に話すんです。

 業務のことを話すと、どうしても上司が中心になる。でも、たとえば野球のことを話題にしたら、若手のほうが精通していて、会話の主導権をとることができます。若手が自由にモノをいえる風土をつくるのが目的です。

正しい意思決定を導くため社外役員を過半数にした

―トップダウンで意思決定する風土が変わりそうですね。

 そうなったらいいなと。若手からどんどんアイデアが出て、ボトムアップで新商品・新事業が生まれる風土が理想形です。そもそも、私の判断自体、7割は正しいと思っていますが、3割くらいは間違っていると思っているんですよ。トップダウンで決めていく仕組みには大きなリスクがあります。

 そこで2014年から取締役会の構成を変え、社外役員が過半数を占めるようにしました。それも上場企業の経営を経験した人や、前駐日カナダ大使など、そうそうたるメンバーに就任してもらった。目的は、私の経営判断の誤りを指摘してもらうこと。当社の場合、取締役会とはトップの私が社外役員に釈明する場なんです。いつも取締役会のあとは眠れないんですよ、悔しくて(笑)。でも、そうすることで、間違った意思決定をするのを防げます。

―そこまで自分自身を客観視できている経営者は少ないと思います。最後に、「よきDNAを残しつつ、革新を遂げたい」と願う中小・ベンチャー企業の経営者にアドバイスをお願いします。

 いつも勉強を怠らず、時代の流れを把握し、大きな絵を描いてください。勉強するよい方法は、顧客の近くへ行くこと。たぶん、当社のなかで私がいちばん、お店を見て回っていると思いますよ。当社の商品はどこにどう陳列され、どんな人がどんなふうに買っているのか、買わないのか。そうした現場の情報こそ、時代の流れを把握する、いちばんの参考資料になります。

 それから、描いたビジョンを従業員に発信し続けてください。その前提として、ヒトを大事にする経営をしていないといけない。当社の場合、株主への配当よりも従業員への還元を優先してきました。その結果、2000年代の初頭に当社の業績が不振だったとき、なぜか新潟の一部の店舗で『柿の種』が飛ぶように売れた。調べてみると、どうやらウチの従業員たちが買っているんですよ(笑)。自分の家の近所で。それぐらい、従業員が会社を愛していなければ、経営者がいくら高い理想を掲げても絵に描いたモチです。

田中 通泰(たなか みちやす)プロフィール

19455年、東京都生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後の1968年に株式会社日本長期信用銀行(現:株式会社新生銀行)に入行。外国営業部長などを歴任。1998年に亀田製菓株式会社に入社。取締役ロジスティクス本部副本部長、取締役専務執行役員経営統括本部長などを歴任した後の2006年に代表取締役社長に就任。2015年から現職。

亀田製菓株式会社

設立1957年8月(創業:1946年9月)
資本金19億4,613万円
売上高982億600万円(2017年3月期:連結)
従業員数3,152名(2017年3月31日現在:連結)
事業内容菓子の製造販売事業
URLhttps://www.kamedaseika.co.jp/

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