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星野リゾート 代表 星野 佳路

❝守るべき伝統❞はもたない。だから100年続いているんです

1904年、長野県の実業家が軽井沢で温泉を掘り始めた。その10年後の1914年。掘りあてた湯をもとに「星野温泉旅館」を開業。それから102年。高度経済成長、バブル景気とその崩壊─ 。世相をよそに旅館は生き残り、星野リゾートの社名で全国のホテル・リゾート施設を運営する。代表として現在の同社を率いるのは、4代目の星野氏。多くの経営者が望む「100年続く企業になる」を実現できた理由はなにか、同氏に聞いた。

※下記は経営者通信41号(2016年10月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

代々受け継いできた土地も建物も手放してきた

―2015年の倒産企業の平均寿命は約24年(東京商工リサーチ調査)。経営者の多くは「長く続く会社にしたい」と考えますが、「社歴100年以上」はごくまれです。そのなかで創業から102年と、星野リゾートが長寿なのはなぜですか。

 つねに攻めの経営をしてきたからです。時代の流れにあわせ、変化を遂げてきた。だから、生き残れたんです。

 たとえば、「ホテル・リゾート施設の運営サービスに特化する」というビジネスモデル。私がトップに就任した翌年の1992年に打ち出したものです。その結果、急速なエリア拡大が可能になりました。いまは「星のや」「界」「リゾナーレ」の3ブランドを中心に、国内外35ヵ所のホテル・リゾート施設を運営しています。「運営サービスの品質が高い」という信頼をかちとることで、既存のホテル・リゾート施設の側から「運営をまかせたい」と依頼されるからです。

 宿泊業界は土地や建物といった不動産を所有し、その価値をあげることを目指すのが常識。私も先代から軽井沢の旅館とその周辺の土地を受け継ぎました。しかし、いまの時代、不動産の所有は企業成長の源泉になりにくい。むしろ足かせになることもある。だから、すべて手放したんです。

―変革を進めると、古きよき伝統をこわしてしまう心配はありませんか。

 先代や先々代のころに大事だったことでも、いまはそうではない。そんな例がたくさんあります。たとえば「星のや軽井沢」を整備するために、樹木を取り除く必要があった。「ああ、おやじが大切にしていた木だな」という想いが頭をよぎりました。でも、切り倒した。樹木を大切にした結果、会社が倒れてしまうほうが、よっぽど父に申し訳ないでしょう。

「伝統を守る」「会社を守る」「業界を守る」。「守る」という発想になった瞬間、変化に対応できなくなり、倒産するリスクを大きくしているんです。

民泊が解禁される流れは業界が発展するチャンス

―宿泊業界では、住宅の空き部屋などに旅行客を泊める民泊の解禁に強い反対の声が出ています。

 私は民泊解禁に賛成です。民泊仲介の大手、Airbnbのサービスは世界190ヵ国、200万以上の物件(2015年10月時点)で使える。反対する人は、それを「日本だけは使えなくしよう」と。そんなことできないし、仮にできたとして、国内の宿泊業はどんどん世界から取り残されていくでしょう。

 むしろ、民泊解禁は宿泊業が発展するチャンス。解禁によって宿泊分野における規制緩和が進むからです。いまは規制のために、よりよいサービスを提供できないことが多いんです。

―具体的に教えてください。

 たとえば「星のや軽井沢」にある森は野鳥観察の好適地として有名。海外からも愛好家がやってきます。ところが、英語ができる野鳥観察のインストラクターがいるのに、外国人客の案内はできない。外国人向けガイドの資格がないからです。その取得には国内の世界遺産の知識などを学ぶ必要がある。でも、野鳥の専門家は姫路城のことは興味ないでしょう。

 魅力的なリソースがあるにもかかわらず、規制があるために、お客さまに感動的な体験をしてもらえるチャンスを逃しているわけです。業界みんなで声を上げるなら、「民泊解禁と同時に、既存の宿泊業界をめぐる規制を緩和せよ」というべきです。

―経営者が進歩的な考えをもち、変革しようとしても、社員がついてこない。そんなケースが多いと思います。星野さんが進める変革に社員がついてくるのはなぜでしょう。

 フラットな組織にして、みんなで侃々諤々(かんかんがくがく)の議論をする風土をつくりあげたからです。トップダウンで「これからはこうしろ」と指示するのではなく、社員自身が納得して「これからはこうしよう」と動く。だから変革が進んでいくんです。

 たとえば星野リゾートでは、社員の多能化を進めています。ひとりのスタッフがホテルのフロントも、客室の清掃も、レストランの接客もできる。一般的なホテルではこれらの業務それぞれに専門のスタッフがいます。そうすると、「閑散期にはアイドルタイムが生じ、繁忙期には人手が足りず顧客満足が低下する」となりがち。これに対して、スタッフ全員が複数の業務に通じていて、「忙しい職場へ助けに行く」ように動けば、人件費をかけずに顧客満足を最大化できます。

 これまでフロント業務ひとすじでやってきたベテランに「これからは客室の清掃もやりなさい」。そう命じたところで、「じゃあ、辞めます」となるでしょう。でも、現場のスタッフ全員で話しあい、「多能化しよう」と決めたのであれば、スムーズに進みます。

社員と対等の立場で社長が意見を言う風土

―どうすれば社員がフラットな立場で議論できる風土をつくれるのですか

 重要なポイントは2つ。ひとつは売上高やコストなどの経営情報をすべての社員にオープンにすること。役職者だけが知っている情報があると、結局、役職者の意見がいちばん実情にあったものになり、採用される。下のメンバーは意見を出す意欲を失います。

 もうひとつは、たとえトップが望む結論ではなくても、議論したすえに社員が「こうしよう」と決めたことは、その通りやらせることです。

―社員が自主的に動く組織づくりをめざす経営者は多いですが、口を出すのをガマンできないのが悩みのタネです。

 私はガマンしていません。話しあいの場に私も参加して、どんどん意見を言うからです。でも、私も会議のいちメンバー。社員と対等なんです。だから、私の意見通りにならないこともよくありますよ。

日本旅館をグローバル展開していく

―今後のビジョンを聞かせてください。

 グローバル展開に挑戦します。直近では年内に、インドネシアのバリに海外初の「星のや」ブランド「星のやバリ」をオープン予定です。また、日本旅館を進化させ、世界のホテルのひとつのカテゴリーに位置付けたいと思っています。

 その第一歩が今年7月にオープンした「星のや東京」。和モダンな客室、共有スペースの「お茶の間ラウンジ」、日本庭園、温泉、ダイニングをそろえた旅館を都心に立ち上げました。「星のや東京」を成功させ、海外へ進出していきたい。

―なぜ日本旅館なのでしょう。

 私たちならではのサービスが提供できるからです。日本旅館は西洋のホテルとはまったくの別物。西洋のホテルはお客さまを主人あつかいします。一方、日本では主人は旅館のほうで、お客さまはゲスト。料亭にメニューがなく、板前が考えた料理を出すのは、その思想からきています。

 そのほうが、お客さま自身の想像を超える感動を体験してもらえます。そして、私たち日本人がいちばんその運営のエッセンスを知っている。世界で勝負できると確信しています。

星野 佳路(ほしの よしはる)プロフィール

1960年、長野県生まれ。1983年に慶應義塾大学経済学部を卒業後、米国コーネル大学ホテル経営大学院へ留学。1991年星野リゾートの代表取締役社長に就任。運営に特化する新機軸を打ち出し、「星のや」、「界」、「リゾナーレ」3つのブランドを中心にホテル・リゾート施設を展開。2016年に日本旅館「星のや東京」を東京・大手町にオープン。日本旅館を世界のホテルのカテゴリーに位置付けることを目指す。

星野リゾート

設立1951年1月( 創業:1914年)
資本金1億円
従業員数2,069名
事業内容リゾート・温泉旅館の運営事業など
URLhttp://www.hoshinoresort.com/

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