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株式会社ハイデイ日高 代表取締役会長 執行役員会長 神田 正

「この店ができてよかった」と思ってもらえれば利益は後から必ずついてくる

始まりは1973年、たったひとりで開いた5坪のラーメン店。いまや首都圏を中心に「日高屋」など300店舗以上を構える一大チェーンへと成長した。ハイデイ日高は円安や消費増税などの影響で飲食業が不振をきわめるなか、増収増益を続けている。その背景には、同社代表の神田氏による「つねに同業者の逆をつく」という経営術がある。外部環境の悪化に左右されることなく、快進撃を続けられる秘訣を同氏に聞いた。

※下記は経営者通信39号(2016年4月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

消費増税でも主力メニューは値上げしない姿勢が支持された

―円安や消費増税などの逆風のなか、2015年2月期売上高は344億2400万円、2016年2月期は369億円を見込むなど、増収増益を続けています。好調の要因はなんでしょう。

 私たちは消費税率が上がったとき、中華そばは値上げしませんでした。そうした施策が、じわじわとお客さまの支持を集めたのでしょう。外食産業の多くが増税分を価格に転嫁しましたから、私たちの姿勢がきわだっていた。

 価格をすえ置いたのは、お客さまのためにならないと判断したから。政府はインフレ目標2%を掲げています。でも実態を見ていると、とてもインフレになるとは思えなかった。大企業では給与が上がっても、中小企業まで行き渡っていない。給与が上がらない人が多いのであれば、低価格の飲食店のほうが繁盛するはずです。

―多くの同業者と反対のことをやるのは無謀ではありませんか。

 いや、そんなことはないですよ。むしろ、それこそ成功への道。私はつねに同業他社の逆を張ってきました。私が商売を始めたころ、先行するラーメン店は何百軒とあった。「同じことをやっていたら勝てるわけがない。人の行かないケモノ道を歩まなくては」と思っていましたから。

 たとえば、ひと昔前まで、ラーメン店は家賃の安いところに出店するのが常識でした。しかし、日高屋は駅前一等地のビルへの出店がほとんど。しかも、お客さまが入りやすい1階への出店にこだわっています。

 そもそも牛丼店やハンバーガー店が一等地に出店している。国民食であるラーメンで同じことができないはずがない。そこで一等地に出店し、価格も引き下げた。450円だったラーメンの価格を390円にした。当時、大手ハンバーガーチェーンで390円のセットが人気だったからです。

「この店ができてよかった」。そう思ってもらえれば、利益は必ず後からついてくる。そう確信していました。

ほかの全役員の反対を押し切って低価格を貫く

―高い家賃を支払い、商品価格は安い。利益を圧迫すると思います。

 ええ、最初はなかなか利益が出なかった。役員会で、私以外の幹部全員が暗い顔で「やはり390円はムリだった」「もとの価格に戻そう」と。それでも私は「ダメだ、絶対に390円でいこう」とゆずらなかった。

 2年近くかかりましたが、利益が出るようになった。多くのお客さまに支持され、その後の成長の基盤ができました。この経験からいえることは、「経営は多数決でやってはいけない」。とくに創業期から成長期の企業は、多数決で決めるとことごとく失敗する。業界常識に反することをやりきる勇気が必要なステージだからです。そんな決断は、覚悟をもったトップにしかできないんです。

―利益が出るようになった要因を教えてください。

 ローコストオペレーションを徹底したことです。これも業界常識の逆をいく施策でした。おいしいラーメンは職人の秘伝でつくられる。腕の立つ職人を雇うのは高くつく。だから「牛丼やハンバーガーの大手チェーンのような低価格にはできない」「家賃の高いところには店を出せない」という常識ができていたわけです。

 私はその常識はおかしいと思った。それで、億単位の投資をしてセントラルキッチンを整備。食材のカットやプレクッキングを行って効率化を図った。それと同時に、店舗での作業マニュアルを確立。麺やタレ類を独自開発して、職人の秘伝の味をだれが調理しても再現できるようにしたんです。

 その結果、人件費を大幅に圧縮しながら、おいしいラーメンを提供できるようになった。これが利益率の改善に大きく役立ちました。経常利益率は業界内でも飛び抜けて高い12%台に達しています。

最前線でお金を稼ぐ人がいちばん報われる仕組みを

―店舗での作業のマニュアル化は、一方で業務を単調にすると思います。スタッフのモチベーションをどうやって高めていますか。

 社員にかんしては、会社として夢があることが士気の源泉になっています。夢のない会社には人が集まらない。まず達成するべき目標は「首都圏600店舗」です。現在、首都圏を中心に300店舗を超えたところで、これを倍にする。その先には、大阪・名古屋など国内の大都市圏への展開があり、やがては海外へも進出していきます。

 店舗が増えるとともに、必要な店長の数も増えます。私たちは原則として直営店方式で展開していますから。社員にとってはどんどんチャンスが広がっているわけです。それにより、モチベーションも高まる。「飲食業の7割以上で正社員の平均勤続年数が5年未満」というなか、当社では7年です。

―非正規雇用のスタッフのモチベーションを維持する施策を教えてください。

 一定の条件はありますが、パート・アルバイトさんにもボーナスを支給しています。また年に1回、パート・アルバイトさんの慰労会をホテルで開催しています。2000万円くらいの経費をかけた大がかりなイベントです。長年貢献してくれたパートさんが辞めてしまったことを後から知ることもしばしば。ひとことのお礼もいえなかったことが人として耐え難く、せめて年にいちどくらい、日ごろの感謝を直接伝える場がほしくて始めたものです。

 私も若いころ、自分で中華なべをふっていた。深夜まで店で働く苦労はカラダにしみこんでいます。いまも同じようにがんばってくれている人たちのおかげで会社が成り立っているのです。もう感謝の気持ちしかありません。日本の外食産業全体の問題として、実際にお客さまからお金をいただいている最前線の店舗スタッフの待遇をもっとよいものにしていくべきです。

―パートやアルバイトの待遇を上げるための投資は、どんな効果をもたらすのでしょう。

 採用面で有利になります。当社のパート・アルバイトスタッフの多くは紹介で集まっている。数あるパート・アルバイトの求人のなかで時給は決して高いほうではないのに。都心にある店舗で、この1年間スタッフの募集をしたことがないところがあるほどです。

若手の有望株を選抜し帝王学を教える私塾を開始

―事業承継についての哲学を聞かせてください。

 自分の子どもを引き入れて後継者にするつもりは毛頭ありません。社内でいちばん人望が厚く、いちばんがんばっている人に次の社長になってもらいたい。後継者育成の取り組みとして、部長や地区長クラスを数名選抜。彼らに私が経営を教える社内私塾を今年から立ち上げる予定です。

 教えたいことは「私利私欲を追うな」です。私だって若いころは「おいしいものを味わいたい」「いい家に住みたい」といった欲望がありました。でも、一定の収入を超えると、そんなものはすべて手に入る。問題はそこから先どうするかなんです。さらに自分の欲望を満たすために動くのか。それとも他人のため、社会のためにがんばるのか。後者の考え方ができる者だけが、人の上に立てるのです。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                          

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                     

神田 正(かんだ ただし)プロフィール

1941年、埼玉県生まれ。中学卒業後、本田技研工業株式会社などに勤めた後、ラーメン店で働く。オーナーから店の経営を任されたことで貯めた資金などをもとに、1973年に大宮市(現:さいたま市)内にラーメン店「来来軒」を開店。1978年に有限会社日高商事(現:株式会社ハイデイ日高)を設立、代表取締役社長に就任。1984年に大宮市(現:さいたま市)にセントラルキッチンを開設、業界常識を覆す「職人不要のラーメン店」づくりに着手。1993年に都内1号店を出店。1999年、ジャスダックに上場。2005年に東証二部、2006年に東証一部に上場。2009年に代表取締役会長に就任。

株式会社ハイデイ日高

設立 1978年3月
資本金 16億2,536万3,422円
売上高 344億2,423万5,000円(2015年2月期)
従業員数 712名(2016年1月末時点)
事業内容 「日高屋」「来来軒」「焼鳥日高」などの飲食店運営
URL http://hidakaya.hiday.co.jp/

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