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株式会社ニトリホールディングス 代表取締役会長 似鳥 昭雄

10年先のビジョンを語れない社長は失格です

48年前。北海道で産声をあげた家具店が、いまや全国に400店(2015年10月時点)を展開し、台湾・中国・米国にも進出した。ニトリを一代で巨大チェーンに成長させたのが代表の似鳥氏だ。連結売上高が国内業界トップの4,172億8,500万円に達する2015年2月期まで、じつに28期連続で増収増益。円安による輸入品の高騰や消費増税による小売業の不振をものともしない、その快進撃の裏にある経営哲学を聞いた。

※下記は経営者通信37号(2015年11月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

たった7店舗の時点で「30 年後に100店舗」を計画

―ニトリは2015年2月期まで増収増益を28期続けています。継続成長の要因はなんでしょう。

 ロマンとビジョンをもっていることです。ロマンは志と言いかえてもいいでしょう。私は43年前に米国に行き、その住まいの豊かさを目の当たりにしました。「これを日本で実現するんだ」というロマンが生まれたのです。

 この志はすぐに果たされるものではない。そこで必要なのがビジョン。長期計画のことです。強いロマンをもっていれば、ビジョンは「絶対に達成しなければいけないもの」になります。その達成のために、いまなにをしなければいけないのか、逆算で考える。そうすれば先手先手で経営でき、継続的に成長できるのです。

 私の場合、60年でロマンを実現するとして、まず前半の30年間で100店を全国展開すると決めた。計画を立案したときは、札幌市内の7店舗だけ。そこを出発点に、計画から1年遅れの2003年に100店を達成できました。

―30年という長期間にわたる計画で、くるいがたった1年。なぜそれほど精度が高いのですか。

 外部環境の変化を予測し、先手を打ってきたからです。最近の例でいえば、2008年にリーマン・ショックがありましたね。私は住宅価格の暴落が起こる半年以上前にそれを感じとり、外貨をすべて売って新規出店や広告宣伝の資金としてプールしました。予測通り不況が到来。土地や建物の価格が下がると同時に出店攻勢をかけた。また財布のひもが固くなった消費者へ向けて、値下げキャンペーンを繰り返したのです。その結果、競合他社の不振を尻目に業績を大きく伸ばすことができました。

 それから2013年の日銀の異次元金融緩和で始まった円安も予測していました。ニトリの商品はインドネシアやベトナムで製造しているものが中心。1円の円安で経常利益が約15億円減ってしまう構造になっている。そこで事前に為替予約を活用し、リスクをヘッジ。それとグループをあげてのコスト削減努力で、利益を減らさずにすんだのです。

経営者自ら現地を訪ね 定点観測して変化を見抜け

―景気や為替の変動を的確に予測する方法を教えてください。

 トップ自らビジネスの最前線へ出向き、変化を感じとることです。私はリーマン・ブラザーズの破たんを予測したわけではないんです。世界経済を動かしている中枢である米国をひんぱんに訪れ、定点観測していた。そのなかで、2000年代はじめに住宅価格がどんどん上がっていることに気づき「これは必ず暴落する」と。

 こうした予測はトップにしかできない。社員たちはどうしても目の前の仕事に忙殺され、長期的な変化を見抜けない。経営者はロマンとビジョンをもっているから、つねにものごとを長い目で見ています。だから変化に気づける。

 もっとも、ロマンとビジョンをもっていなければ、たとえ経営者でも困難でしょう。10年後にどんなことを実現しているのか、売上高や利益の数字はどうなっているのか、どんな会社になっているのか。こうしたビジョンを語れないなら社長失格です。

―外部環境の変化に対応する具体的な施策を聞かせてください。円安が進行するなかで、どうやってコストを削減したのでしょう。

 安い商品が見あたらないなら、自分たちでつくってしまおうと。ニトリは商品の企画・製造から物流・販売まで手がけています。たとえばソファーをベトナムの自社工場でつくっている。これをもっと上流工程から自前でやろうと。

 つまり、バネとウレタンを外部から調達してきてソファーに仕上げていたのを、鋼材を巻いてバネにするところから、合成樹脂をウレタンにするところからウチでやることにしたわけです。そうやって自前でやってみると、コスト削減の余地がたくさん見つかる。

 たとえばウレタンは重量に応じて取引価格が変わるので、機能に関係のないところで重くしているケースもあった。自前で製造するなら取引慣行は関係ないから、重くしなくていい。コストも下がり、ソファーの品質向上にもなるウレタンをつくることができました。

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