―現在の業務内容について教えてください。
主に中小・ベンチャー企業を対象に、人事コンサルティング、企業の創業支援、助成金支援サポートを行っています。
また、併設の社会保険労務士事務所で社会保険手続きなどの事務代行、就業規則の作成などをあわせて行い、人事・労務・総務・法務に関する「社外人事総務部長」的な総合サービスを提供しているのも当社の特長といえます。
そして、特に力を入れているのが、主に中途採用を対象にした社員の採用コンサルティングです。社員採用は大手の広告サイトなどだけに頼るのではなく、自社でコンセプトの立案から組み立て、戦略的に行う必要があります。自社の特長や魅力を明確に打ち出した上で、会社と仕事に対する深い共通理解を前提とした人材マッチングをはかることが不可欠なのです。
―なぜ採用コンサルティングに力をいれているのですか。
私自身、人事・採用に関する業務を20年以上にわたって担ってきました。社会保険労務士として開業する前のキャリアで、富士通のグループ会社で社員教育や採用に携わったあと、外資系大手商社の教育担当マネージャー、大手外資系EDAツールベンダーで人事マネージャーを担当してきました。
民間企業の人事畑で長いキャリアを積んだ後に社会保険労務士として活動する人は、実はそれほど多くありません。私自身の、人材採用や評価・育成についての実務経験の豊富さが、そのまま当社の強みであり、お客様から人事や採用に関するご相談が増えてきましたので、そのノウハウを採用力育成コンサルティングとして多くの企業に提供しております。
―中小企業の人材採用における課題はどのような点にありますか。
人事・総務の仕事をしていると、社員自身の資質や素養が原因で、会社の組織的なトラブルに直面させられることはよくあります。だからこそ、最初の入口である採用のところで、経営者が考える理念や風土、方針に見合った人をしっかりと選び抜いて採る必要があると考えます。
多くの中小企業の経営者は、設備投資をする際には、じっくり考えて導入しますが、人材採用については、「投資」という視点に欠けています。社員を一人雇うと、その生涯賃金は8400万円にもなります。社員は売り上げを実現する投資であり、会社は欲しい人材について検討しなければなりません。次には、応募者が自社に気づいてもらう仕掛けも必要です。今度は自社そのものが商品であり、応募者はお客様という位置づけで考えるべきです。このように人材採用についても戦略的に考えることが必要です。
お客様の風土や実情、魅力をよく知っており、同時に人事・労務面のノウハウをもつコンサルタントであれば、企業にとって最適な人材を獲得するためのサポートができます。採用時のコンサルティングに始まり、入社後の人事・労務管理にいたるまで、ワンストップのマネジメントが可能になるのが当社の経営サポートなのです。
―入社後の人事・労務管理におけるコンサルティングとは、どのような内容なのですか。
たとえば労務管理上で起こり得るさまざまなトラブルに際して、その問題解決を担うということです。加えて予防的な側面から、各企業の実情に応じた就業規則を作成したり、さらには社員の社内評価基準の構築といった制度や仕組みづくりも行います。
社員の採用の部分からサポートし、人事的なコンサルティング、労務管理上のトラブルの問題解決から社会保険労務士としての事務代行、助成金の獲得サポートまでを担当。「社外総務人事部長」の立ち位置で、採用から退職までのサポートを網羅してお客様に提供することで顧客満足度を高めています。
―具体的な顧客事例を教えてください。
ある大手企業に社会保険に関する相談がきっかけとなり人事コンサルティングに発展した例があります。
ご相談の過程で人事・労務に関する問題も少なからずありました。また職場内で問題行動をする社員がおり、最終的には解雇も検討するという課題も含まれていました。
そこで私が一定の役割をもらい、問題のある職員と対話をしながら穏便に解決する方向へ導きました。微妙な問題の解決と同時に、就業規則の調整・改善を行うなど、あらためて組織としての枠組みを見直していきました。
―人事・労務面でのリスクとして、退職・解雇の問題は重要でしょうね。
多くの経営者の場合、労働基準法などの「働くひと」のための法律はあまり詳しくありません。そのため、従業員の解雇について方法を間違えてしまうことが少なくないのです。
たとえば無理に解雇した社員から「不当解雇」と訴えられた場合には、少なくとも裁判が終わるまでに1年以上はかかる可能性があります。
判決も会社に不利な「解雇無効」となるケースが多く、そうすると結果として、まったく働いていない社員に対して1年分の給与を払うという金銭面のリスクが発生します。裁判費用を考えても、解雇に関する人事トラブルが経営に与える影響は非常に大きいといえます。
トラブルへの対処法を誤らないことはもちろんですが、こうした人事トラブルを防ぐためには、就業規則をきちんと整備することがやはり基本。就業規則は問題の顕在化を防ぐための予防的な役割を担い、万が一のトラブルが起こった時に、会社の負担を最小限に食い止めてくれるものです。そのことを、ぜひ経営者には十分に理解してほしいです。
―桐生社長が起業した経緯を教えてください。
1995年に社会保険労務士の資格を取り、会社内の総務人事全般の業務を担う勤務社労士として、先述したような複数の企業で人事・労務、人材採用・教育関連の業務にあたってきました。
ただ私自身、社会保険労務士の資格を取得したときに、いずれは独立したいと考えていましたし、外に出てもっと多くの世界を見たいという思いが募り、2009年に桐生社会保険労務士事務所として自分の事務所を立ち上げたのです。
そのまま事務所として活動していても良かったのですが、社会保険労務士の枠では収まらない仕事も増えてきて、むしろそれを積極的に手掛けていくことが、お客様の企業成長を促すことだと考え、2011年2月に日本経営サポート株式会社を設立しました。
―桐生社長が、企業の成長にとって必要と考えたことは何でしたか。
私が前職からの経験で痛感していたのは「人を大切にしない企業は生き残れない」ということです。これは今も社会保険労務士・コンサルタントとして企業に向き合う上での基本的なスタンスになっています。
裏返せば、社員の仕事に対してのモチベーションを、経営者がどう上げていけるか。その意味でも、これから必要になるのは、働く人のモチベーションを上げて、会社の成長を導くようなコンサルティングでしょう。
私が独立する前に総務部長として携わったIT系のべンチャー企業も、エンジニアのモチベーションを上げて、会社の成長に結びつけることをうまく実践する会社でした。
その経営者が最初から「人を大事にする会社をつくる」ことを明言し、待遇だけでなく、社員が成長を実感できる環境をつくり、一人ひとりの成長がエンジンとなってこそ会社が伸びるというイメージを描いていました。その結果、社員たちは生き生きと働き、定着率も高く、今もずっと成長を続けています。
そうした社員のモチベーションを上げるための組織づくりの手法についても、自分の経験を生かす中で、今後はアドバイスできればと考えています。
―桐生さんは、ハーレー・ダビッドソンでクライアントを訪れる「ハーレー社労士」として知られていましたが、そこにはどんな思いがあるのですか。
単にオートバイが好きだった、ということが一つ。そして経営危機に陥りながら、見事にブランドを復活させたハーレー社に、自分のキャリアを重ね合わせている部分もあります。
復活を遂げたハーレー社は、自社を「オートバイを売っている会社ではない、オートバイを通じたライフスタイルを提供している会社である」と位置づけています。私も同様に、社会保険労務士の資格を活かして、あらゆる人事・採用コンサルを提供することで企業の成長に貢献する会社でありたいと思っています。
―今後のビジョンをお聞かせください。
経営者の右腕として、人を大切にするとはどういうことか。社員の成長を会社の成長につなげるには、どんなマネジメントが必要なのか。これからも自身の経験を踏まえ、実践的なサービスを提供していきたいと思います。
それとともに、自分と同じような思いのある人を集めて、自社のノウハウを共有しながら一緒にサービスを広めていける仲間、つまりは社員をこれからもっと増やしていくことが目標です。そのことが、多くの企業を元気にし、さらには日本経済の発展に寄与することにもつながると、私自身信じています。