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株式会社フォーバル 代表取締役会長 大久保 秀夫

「在り方」をまっとうすることが継続経営の土台です

1980年、自ら創出したビジネスフォンというベンチャー事業で起業。以来、ガリバー・電電公社(現NTT)を相手に通信市場を席巻し、1988年には当時の史上最短記録で上場を実現。〝伝説のアントレプレナー〟と称賛されたのがフォーバル代表の大久保氏だ。しかし、2007年3月期連結決算では売上高が最盛期の約65%にまで落ち込み、20億円超の経常損失を計上。成功物語は暗転した。そうした同社は前期連結決算で過去最高の経常利益を計上した2005年3月期決算と肩を並べるまでに復活を遂げた。どのようにしてピンチを突破し、新たな成長ステップを手中にすることができたのか。大久保氏に聞いた。

※下記は経営者通信33号(2014年9月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

―御社は2007年3月期連結で過去最悪の経常損失を計上しましたが、今年3月期では売上高、経常利益ともに2005年3月期連結とほぼ同水準の決算となりました。業績回復の理由を教えてください。

大久保:それまでのハードの卸売りから、保守・サポートサービスを統合し、お客さまの経営課題解決を付加した総合ITコンサルティングサービス(以下、アイコン)にビジネスモデルを転換。着実に利益が積みあがる体質になったからです。経常損失を計上した2007年3月期までの主力事業は、創業事業であるビジネスフォンを中心に、複写機などOA機器の販売、IP電話サービスなど。市場の成熟化と競争激化により、販売・導入後の保守・サポートに注力して差別化を図っていました。そこをさらに強化し、経営ソリューションに踏み込んだのがアイコンです。具体的には個人情報保護士※、ドットコムマスター※などの有資格者である当社情報通信コンサルタントが顧客企業の経営上の悩みをヒアリング。当社やグループ各社をはじめ、弁護士、税理士、会計士、ファイナンシャルプランナーなど、社外の専門家とも協力して最適な解決策を提供します。カンボジア、ベトナム、ミャンマーなどのASEAN進出も支援しています。

―物販と経営ソリューションでは、事業領域に大きな隔たりがあります。なぜ、そうした大胆な業態転換を成功させることができたのですか。

大久保:創業時から掲げてきた「社員は家族」との想いを貫き、苦しくてもリストラをしなかったからです。2007年3月期から2期連続で経常損失を計上したときは、投資家やマスコミなどの社外から、リストラを求める強い風圧を受けました。だけど、私にはそんな考えは毛頭なかった。なぜなら、創業時から「社員のクビは絶対に切らない」と言い続けてきたから。あの時、約束を破ってリストラを行っていたら、復活はなかったでしょう。

―安易なリストラは別として、経営トップは組織の生き残りを図るため、ときに非情な判断を迫られる場合もあるのではないですか。

大久保:それは否定しません。しかし、経営者はいったんかわした約束を反故にすべきではない。それは、社員に対する裏切り行為だからです。もちろん、物販から経営コンサルティングへの業態転換は、簡単ではありませんでした。それまでは営業が中心だったのに、業態転換で積み重ねてきた成功ノウハウが通用しなくなり、苦しむメンバーもいました。そうした壁を社員たちが打破できた原動力は、私を信用し、本気で挑戦してくれたからにほかなりません。もし家族主義の旗を降ろし、リストラを行っていたら、社員は私を信用しなくなり、会社の生き残りをかけた業態転換に誰も真剣に挑戦してくれなかったでしょう。どんな困難があっても経営者は約束を破らない、社員を裏切らない。それが事業を継続させる土台のひとつです。

―そのほかの継続経営を可能にするポイントを教えてください。

大久保:社会性・独自性・経済性です。重要なのはこの順番。すべての原点に「社会をよりよくしたい」という使命感があり、それを実現するためのビジネスモデルに独自性をもつ。そして、最終的に継続できる経済性を確保することです。この順序を間違えてはいけません。ところが多くの人は儲かるかどうか、経済性を最優先しがちです。儲けが目的になると、人件費や商品・サービスへの投資は単なるコストに化してしまうため、長続きはしません。うまくいっているうちはよくても、外部環境の変化など逆風が吹けば、固定費削減と称してすぐリストラを行ったり、商品・サービスへの投資の切り詰めに走ってしまうからです。それでは有能な人材から会社を辞めてしまい、商品・サービスの陳腐化が加速します。その結果、ヒト・モノといった経営リソースが弱体化。手のほどこしようがなくなります。経済性を最優先した経営は逆境にもろく、かえって継続経営を困難にするのです。また、会社の持続的な成長には人材の育成も欠かせません。人材育成は、経営者にとって大きなミッションです。

※個人情報保護士:財団法人全日本情報学習振興協会が認定している民間資格。「個人情報保護法の正しい理解と安全管理に関する体系的な理解」および「企業実務において個人情報の有効活用や管理・運用を行うことのできる知識や能力」をもつ人材を認定する

※ドットコムマスター:NTTコミュニケーションズが認定している民間資格。社会で必要なIT知識を特定分野に偏らず、基礎から体系的・網羅的に身につけている人材を認定する

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