株式会社SHIFT 代表取締役社長 丹下 大 / 日本M&Aセンター 業種特化事業部 業界再編部 IT業界支援室長 上席課長 竹葉 聖

買い手がPMIにコミットすれば、双方に価値の高いM&Aを実現できる

株式会社SHIFT 代表取締役社長 丹下 大 / 日本M&Aセンター 業種特化事業部 業界再編部 IT業界支援室長 上席課長 竹葉 聖

M&Aの支援を手がける日本M&Aセンターは、2021年4月に創業30周年を迎えた。その記念イベントとして、2021年11月5日(金)に「M&A カンファレンス 2021」をオンライン・オフラインにて開催。約15万名が申し込み、M&Aに関する計43セッションが行われる盛況イベントとなった。このページでは、そのなかから、30件以上のM&Aを行ってきたSHIFT代表の丹下氏と、日本M&Aセンターの竹葉氏のセッションを抜粋。内容をリポートするとともに、ITベンチャーが売り手としてM&Aを実施するメリットを考える。

※下記は経営者通信58号(2022年2月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

「良いM&A」でなければ、数多くを実現できない

 SHIFTは、テスト事業を通じたソフトウェアの品質保証を手がけるIT会社として2005年に創業。その後、2014年に東証マザーズへ上場し、2019年には東証一部に市場変更を果たした。2021年8月期の売上高は460億円で、従業員数は6,828名、関連会社は32社という、業界トップクラスのグループカンパニーとして発展。今後はDXをサポートする総合的なシステムインテグレータとして、さらなる成長を目指している。そうした同社の事業拡大をけん引してきたのが戦略的なM&Aで、計30件以上のM&Aを行ってきた。

 「M&Aを検討する際、ITに関する企業であればほぼチェックします。そして、我々が目指すビジョンに合うような技術やノウハウをもっている会社であればすぐにGoサインを出し、双方合意にいたればM&Aを実施させていただいています」と語る丹下氏。

 実際にM&Aを実施した企業のジャンルは、デザインやカスタマーサポート、情報セキュリティなど多岐にわたり、それにより総合的なサービスを提供できる環境が整いつつあるという。

 同社のM&Aを支援してきた日本M&Aセンターの竹葉氏は、「これだけ多くのM&Aを行い続けるためには、売り手も買い手も満足する『良いM&A』をしていないと実現できない」と話す。もしM&A後に、売り手側の経営者や社員から不満の声が出れば、悪い噂が業界に広まり、買い手側の次なるM&Aが難しくなるからだ。これに対し「そこは特に意識している」という丹下氏。そこで、同社が徹底的に取り組んでいるのは、PMI(※)にコミットすることだ。

※PMI : Post Merger Integrationの略で、当初計画したM&A後の統合効果を最大化するためのプロセス

遠くまで行きたければ、みんなで進め

 「私がM&Aをされる立場なら、経営力、採用力、営業力がアップできるような企業にお願いしたい。そうじゃないと会社を譲渡する意味がないから」と話す丹下氏。実際にSHIFTは、数字にもとづいた経営のアドバイスを行うほか、年間1,000名以上の中途採用を実現する採用力や、元キーエンスの社長を副社長に招へいしたことで強化した営業力などをもつ。それを活かし、売り手企業の経営力、採用力、営業力のアップに貢献。結果、参画3年以上のグループ会社における売上高成長率は平均120%、社員の年間平均昇給率は5年連続10%以上を実現している。

 竹葉氏は、「実際にM&Aを行った後が大変で、ここまでPMIにコミットして、グループ会社の企業としてのステージがアップしていく事例はなかなかない」と話す。

 丹下氏は、「グループ会社になったからには、みんなで楽しくモノづくりをやろうという想いが根底にある。そのためには、業界特有の多重下請け構造から脱却したうえで、会社の売上が上がり、社員の給与が上がっていくことがわかりやすい。我々は、それに特化すればいいので、M&Aによる社名の変更や社長の交代などはお願いしないし、意味がないと考えている」と続けた。

 従来のSI業界では、自前でハードやソフトウェアを開発するのが「SI1.0」、コンサルティングにくわえて開発まで行うのが「SI 2.0」となぞらえる丹下氏。今後は、「もっと踏み込んで、売れるサービスをつくり、顧客の売上や営業利益に貢献していきたい。それが我々の目指す『SI 3.0』だ」と強調。その実現には企業単体で取り組んでいくには限界があり、引き続き戦略的にM&Aを行っていくことが重要だと語った。

 「アフリカの有名なことわざに『はやく行きたければ一人で進め。遠くまで行きたければみんなで進め』というのがありますが、まさにそのとおり。ビジネスは個人競技ではないので、グループ全体でチカラをあわせることで、総合的なシステムインテグレータを目指していきます」(丹下氏)。

売り手経営者がコア業務に集中できる、戦略的なM&Aのススメ

株式会社日本M&Aセンター 業種特化事業部 業界再編部 IT業界支援室長 上席課長 竹葉 聖

これまでは、SHIFT代表の丹下氏と日本M&Aセンターの竹葉氏によるセッションリポートにより、ITベンチャーが売り手としてM&Aを実施するメリットを探った。このページでは、5年間で1,000社以上のIT企業経営者と接してきた竹葉氏を取材。IT業界をとりまくM&Aの状況や、M&Aを検討する際の買い手側を見極めるためのポイントなどを聞いた。

経営オプションとして、M&Aが認知されつつある

―IT業界において、M&Aが行われる割合は増えているのでしょうか。

 増えています。実際に公表されているデータがあるのですが(右グラフ参照)、2010年においてM&A件数におけるIT業界のシェアは13%だったのが、2020年には35%に拡大しています。コロナショックで外食産業はダメージを受けましたが、IT業界はリモートワークの普及といったことにより、業績を伸ばしました。結果として、M&Aがとまった業界、増えた業界に分かれはしましたが、全体的に見てもM&A自体は増えていると言えます。

―全体的にM&Aが増えている要因はなんでしょう。

 昔にくらべて、M&Aが経営オプションとして認知されるようになったからだと考えられます。これは昔の転職事情に似ていて、以前は一度会社に入れば一生勤め上げるのが当たり前で、「転職なんてもってのほか」という認識があったと思います。それがいま転職は、個人を成長させる手段のひとつとして当たり前の選択肢になっています。M&Aも、転職ほどではないにしても、「会社を売るのはもってのほか」という考えから徐々にポジティブな手法として認識されるようになってきているのです。特に、ITベンチャーの若手経営者には、創業時からM&Aを見すえるなど、それが顕著に表れているという印象です。

―戦略的にM&Aを見すえた際、買い手を見極めるポイントはなんですか。

 SHIFT社のように、「いかにPMIにコミットしているか」ですね。そもそも買い手の傾向は、3つのパターンに集約されます。1つ目が、数年に1度、大型のM&Aを行う企業。2つ目は、1、2年に1回くらいの頻度でM&Aを行う企業。3つ目が、年に数回、繰り返しM&Aを行う企業です。1つ目の場合は、まだまだ小規模のITベンチャーは除外されます。3つ目のケースは、M&Aに慣れており、まさにSHIFT社のような企業が該当しますが、まだ企業数は多くない。結果、市場には2つ目に該当する買い手が圧倒的に多いんです。そうしたなか、売り手が「買い手はPMIにコミットしているか」を見極めるのはもちろん、買い手も売り手との相性を見極めるのも難しい。そこで当社のような、第3者の視点でアドバイスを行う企業の支援を受けることをおススメします。

30年間で7,000件のデータにもとづいた支援

―日本M&Aセンターではどのような支援を行っているのでしょう。

 当社は創業以来、30年間で7,000件のM&Aの仲介を実施してきました。その豊富なデータにもとづいた仲介支援が可能です。また、買い手となる企業の経営層にも深くかかわっており、経営者の特徴や社内の状況まで把握しているため、マッチングの精度を高められるのです。また、PMIに関しても、事前のヒアリングを通じて「こういう組織をつくっていきましょう」といったアドバイスや、必要であればPMI人材の派遣といった支援も行います。

―さらに会社を成長させたいと考えているITベンチャーの経営者にアドバイスをお願いします。

 経営オプションのひとつとして、前向きにM&Aを検討してほしいですね。「M&A=経営が不自由になる」と考える経営者もいますが、企業規模が一定基準に達すると、採用や人材教育、内部統制の構築などさまざまな業務が経営者の肩にのしかかります。大手企業は、そういった領域が得意。そのため、M&Aでそうした業務を大手企業にまかせ、経営者は自分の得意な分野に集中することも可能です。中小企業庁も2021年に「中小M&A推進計画」をスタートさせ、M&Aの支援に乗り出しています。少しでも興味があれば、ぜひ当社に問い合わせてほしいですね。

京都のAIスタートアップと言えば「Rist」という認識が広まった

【背景】
「Deep Learning」を用いた画像処理分野のシステム開発を手がけるITベンチャーとして、当時の京都大学大学院生が2016年に創業したRist。「もっとサービスを広めるには、規模の大きな企業と一緒に取り組む必要がある」という創業者の想いから、M&Aを検討。日本M&Aセンターの支援で、京セラコミュニケーションシステムに事業を売却した。

【M&A後】
従業員数が約6倍、売上は数千万円から数億円に。京セラグループというブランディング効果も相まって、京都のAIスタートアップと言えば「Rist」という認識が広まっている。

丹下 大(たんげ まさる)プロフィール

1974 年、広島県生まれ。2000年に京都大学大学院工学研究科機械物理工学修了後、株式会社インクス(現:SOLIZE株式会社)に入社。わずか3名のコンサルティング部門を、5年で売上50億円、140名の規模に成長させ、コンサルティング部門をけん引。2005年、コンサルティング部門マネージャーを経て、株式会社SHIFTを設立。代表取締役社長に就任。2019年10月、東証マザーズ市場から東証一部に市場を変更。

竹葉 聖(たけば きよし)プロフィール

1989年、高知県生まれ。公認会計士試験合格後、有限責任監査法人トーマツを経て、株式会社日本M&Aセンターに入社。IT業界専門のM&Aチームの立ち上げメンバーとして5年間で1,000社以上のIT企業の経営者と接し、IT業界のM&A業務に注力している。2018年に、京セラコミュニケーションシステム株式会社とAIベンチャーである株式会社RistのM&A、2021年には、株式会社SHIFTと株式会社VISHのM&Aなどを手がける。

株式会社SHIFT

設立 2005年9月
資本金 1,100万円(2021年8月末時点)
売上高 460億円(2021年8月期)
従業員数 6,828名
事業内容 ソフトウェアの品質保証、テスト事業
URL https://www.shiftinc.jp/

株式会社日本M&Aセンター

設立 2021年4月(創業/1991年4月)
事業内容 M&A仲介、PMI支援、企業評価の実施、上場支援、MBO支援、企業再生支援、コーポレートアドバイザリー、企業再編支援、資本政策・経営計画コンサルティング
URL https://www.nihon-ma.co.jp/
セミナー情報 [日本M&Aセンター主催]2022年 新春IT業界M&Aセミナー
2022年1月26日(水)、27日(木)、28日(金) 15:00~17:00

【第1部】2021年IT業界のM&A総括と2022年の展望
ファシリテーター : 日本M&Aセンター 竹葉 聖 氏

【第2部】ベンチャー企業創業者に聞く、M&Aに託した成長戦略
登壇者 : morrow株式会社 代表取締役 CEO Founder / stair株式会社 代表取締役CEO 米田 昌弘 氏
モデレーター : 日本M&Aセンター 竹葉 聖 氏

※詳しくは、下記フリーダイヤルまたは日本M&AセンターのHPまで
TEL : 0120-03-4150
https://www.nihon-ma.co.jp/page/seminar/it_industry2201/
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