急な「インシデント」に備え、在庫もかさみがちに
―東芝ITサービスの事業内容を教えてください。
杉山:サーバやネットワーク機器などICT系機器の保守、インテグレーション・設置、運用を手がけています。社会インフラを提供するお客さまをもつ当社にとって、保守は特に重要な業務で、全国約100拠点に保守人員が計500名以上在籍。予定が管理されている事前点検のほか、客先で突発的な「インシデント」が起きた際の保守対応を行っています。しかし、このインシデント対応は、突発的な業務であるがゆえの課題も抱えがちです。
―どのような課題でしょう。
杉山:たとえば、現場に駆けつける作業員の割り当てに時間がかかることです。インシデント発生時、オペレーターは「作業に必要な資格」「移動時間」「スケジュールの空き」など条件に合う作業員を手配します。しかし、一人ひとりの作業員に、一部は手作業で確認するために時間がかかり、お客さまを待たせてしまうこともあるのです。
小野:また、フィールドサービスを提供する企業には、「保守に使う部品の在庫がかさみがち」という課題もあります。部品には理論上の寿命がありますが、実際に故障する時期を予知するのは難しいため、突発的な不具合に備えて余分に在庫を抱えざるをえません。
杉山 これらは、フィールドサービス業界にとって積年の課題と言えます。当社ではこうした課題を解決するために、Zinier社が提供する管理業務自動化システム『Zinier』を導入し、業務の効率化を進めています。
必ず生じる「人による手作業」。生産性向上のカギは管理業務
―どのようなシステムなのですか。
小野:まず、インシデント発生時における人員の手配を自動化できます。作業に必要な資格や現場の位置、作業時間などの条件を入力すると、個々のスケジュールや、GPSで得た作業員の位置情報、同一顧客への対応経験の有無といった情報から、AIが最適な人員をオペレーターに提案。これをオペレーターが承諾すると、作業員のスマートフォンに指示が届く仕組みです。
また、稼働環境が要因で起こりやすいインシデントに対しては、AIの提案機能を活用することで、在庫の圧縮も可能になります。
―どのように実現できるのでしょう。
杉山:AIが適切な時期に、機器の点検を提案してくれる機能を活用して実現していきます。当社では、客先で機器が不具合を起こす時期を統計的に把握する目的で、保守に関するあらゆるデータを蓄積しています。このデータを『Zinier』に取り込めば、不具合が起こりうる時期をAIが分析・予測してくれます。これにより、インシデントを未然に防げれば、保守部品の在庫圧縮にもつながると考えています。
―フィールドサービスの生産性に課題を感じている経営者にアドバイスをお願いします。
杉山:業務上さまざまな制約が生じる「コロナ禍」においては、効率的な業務遂行が従来以上に求められます。なにより、インシデントの未然防止や駆けつけの迅速化はお客さまにとっての価値になります。サービス価値を高めるために、管理業務の効率化は大切な施策になるでしょう。SOC(※)をもつ当社では、セキュリティサービスの向上にもつながると考えています。
小野:人による手作業が必ず発生するフィールドサービスで全体の生産性を高めるには、ITを活用しやすい管理業務の効率化が欠かせません。『Zinier』は、AIを活用したフィールドサービス向けの自動化システムとして世界でも先進的なサービスです。すでに、欧米やアジア太平洋地域の幅広い業界で導入が増えています。関心のある方は、ぜひお問い合わせください。
※SOC:Security Operation Centerの略。ネットワークやデバイスを監視し、サイバー攻撃の検出や分析などを行う組織のこと