Web広告の出稿を増やし、業績回復の足がかりに
―コロナ禍の影響で、広告の費用対効果にシビアな考えをもつ経営者は増えているのでしょうか。
副田:増えていますね。営業自粛や消費者ニーズの変化などにより業績が落ち込み、広告予算を削らざるを得ない状況の企業が多いことが影響しています。ただ、そういったなかで、2019年にテレビへの出稿額を上回ったWeb広告は、まだ結果こそ出ていませんが、2020年も高い水準の出稿額を維持しそうです。今回のコロナ禍の影響でテレワークが普及し、「巣ごもり消費」という言葉が生まれました。こうした背景により、自宅にいる機会が増え、インターネットに接触する時間が増えるユーザーが増加しているのです。コロナ以前のような対面での営業活動の機会が減っているいま、Web広告の出稿を増やすことが、業績回復への足がかりになるはずです。ただ、闇雲に出稿しても成果を上げられるはずがありません。特に、旅行や外食産業など冷え込みが大きい市場では、これまで以上に確度が高いWeb広告戦略が必要です。
―どうすれば、広告戦略の確度を高められますか。
副田:私は、いまこそ、Web広告の運用と制作のプロの知見が活かされるべきだと考えています。クリエルさんをはじめ、長年、数多くの広告会社と協業してきたなかで、Web広告で成果を上げるために必要なアプローチは3つあると感じています。
―具体的に教えてください。
副田:「最適な媒体や広告手法選び」「CVR(※)を高めるためのクリエイティブ制作」「広告出稿後の継続的な分析・改善」の3つです。この3つはすべて、データを駆使できるWeb広告の強みを最大限に活かせるものです。
1つ目の「最適な媒体や広告手法選び」については、私たちヤフーとして、検索や広告のプラットフォームに集まったデータをもとに、生活者の興味関心を可視化しています。その結果を、広告会社のみなさんには、セグメントごとに最適な広告手法を選定する際の分析に役立ててもらっています。
下地:当社ではそのデータをフル活用し、クライアントの商材やターゲット層に合わせて、掲載する媒体や広告手法を選定しています。そのほかにも、「従業員数100~300名規模の管理職」といったデータを活用した、BtoBマーケティングも可能です。私は、データを活用した広告戦略は、2020年夏に広告業界にとってターニングポイントとなるべき「ある出来事」が発生したことから、今後さらに重要性を帯びると考えています。
※CVR:Conversion Rateの略。Webサイトへのアクセス数のうち、コンバージョン(商品購入や資料請求など)にいたった割合のこと
―どういった出来事ですか。
下地:ユーザーの行動履歴をもとにした、「リターゲティング広告(※)」の効果が出にくくなったのです。これは、ユーザーが携帯端末やPCを使ってサイトを訪問した際に残る履歴情報の期間が、一部OSの仕様変更によってこれまでよりも極端に短くなったためです。当社を含め、広告会社は見込み客へのアプローチを自動的に繰り返し行えるこの広告手法に、頼ってきた部分が大いにありました。ですが、今後は自分たちでデータを駆使し、同様の効果を生み出す力が問われる時代になっていくでしょう。
副田:そうやって苦労して集客した見込み客をつなぎとめ、CVRを高めるためにも、2つ目にあげた「クリエイティブ制作」が重要になるのです。
※リターゲティング広告:広告主のサイトを閲覧したユーザーを識別することで、そのユーザーがほかのサイトを訪問した際にその広告主の広告を配信すること
ユーザーの離脱を防ぐ「3秒ルール」にこだわり
―クリエイティブ制作のポイントはなんでしょう。
副田:「ユーザー目線かどうか」に尽きるでしょうね。「ユーザーにとって必要な情報はなにか」を見きわめ、それをLP(※)やサイトページに落とし込む。どのような画像やイラストをどの位置に配置し、どんなキャッチコピーにするか。その際、ユーザーに「まず読んでみよう」と思ってもらえるように、わかりやすく伝える「ファーストビュー」の構成力が大切になるでしょう。そういった検討も、過去に反響の高かった事例のデータを分析することで、確度の高い内容に仕上げられます。
下地:当社では、「ユーザーは3秒で、広告を読むか読まないかを決める」という、いわゆる「3秒ルール」を意識してつくり込んでいます。デザイナー間での意見交換はもちろん、広告の運用担当者の考えも取り入れ、インパクトのある「ファーストビュー」を作成しています。特に近年、「動画」はユーザーの目に留まりやすく、「3秒」の壁を越えてくれる効果があると考えています。そのため、クライアントからいただいた複数枚の写真と伝えたい文字を組み合わせて、15秒程度の動画を作成する『サクっと動画』といった、新たなサービスを始めています。
※LP:ランディングページの略。ユーザーがWeb広告をクリックした際に表示されるページのこと
継続的に改善できるのが、Web広告の大きな特徴
―3つ目の「広告出稿後の継続的な分析・改善」について教えてください。
副田:変化が激しい今の時代は特に、ユーザーの興味や嗜好の移り変わりが速い。たとえ反響のある広告でもそのままでは効果を維持できません。そのため、広告出稿後の分析・改善状況が、その後の反響を左右するのです。
下地:誤解を恐れずに言うと、私は、「Web広告には完成形がない」と思っています。だからこそ、改善し続ける必要があるのです。クライアントのLPやサイトのアクセス解析を行い、目標数値に届かなければ広告手法を変え、クリエイティブも見直す。それにくわえて、「ABテスト」も継続して行っています。具体的にはLPや着地ページ、バナーなどで異なるパターンを用意し、さらに成果を生み出すクリエイティブを探究し続けています。紙とは違って、広告出稿後も改善に向けたPDCAサイクルを、データにもとづき高速で回せるのが、Web広告の大きな特徴のひとつですから。
―広告効果をさらに高める取り組み方針を聞かせてください。
副田:「データ活用」を強化します。これまでは、Yahoo! JAPANの検索や広告のプラットフォームに集まるユーザーデータを次なる広告展開に活用してきましたが、今後は、Yahoo!ショッピングなどのコマース事業のほか、PayPayから得たリアルのデータもマーケティングに活用していきます。さらに、今後のLINEとの経営統合で、まさしくビッグデータを活用したマーケティングの展開が期待できます。そういったデータの活用方法も、パートナーである広告会社に共有していきたいと考えています。
下地:当社は、社内に広告の運用を担当するマーケティング部門と、広告を制作するクリエイティブ部門があるため、成果の上がる広告事業に向けて連携した取り組みができる強みをもっています。ヤフーさんから共有されるデータを駆使し、広告の運用と制作が一体となり、クライアントの広告効果を最大化する戦略を展開していきます。
社内の連携で生まれた、インパクトのある新サービス
―Web広告において経営者はどのような悩みを抱えていますか。
当社に寄せられる相談の多くが、「広告会社を活用してみたが、思ったような成果が上がらない」といったものです。そこで、担当の広告会社を変えたいと考えても、「どういった基準で選べばいいのかわからない」と。そういったときに当社では、広告の運用とクリエイティブ制作の両方を手がけている広告会社を推奨しています。
―その理由を教えてください。
広告戦略の立案・実行、効果検証、データ収集・解析、改善策の立案・実行といった、広告の成果を上げるためのPDCAサイクルを、継続的にかつ高速で回せるからです。当社も広告の運用とクリエイティブ制作の両方を内製化しており、「成果が上がらない」と運用チームが判断したら、すぐに改善策を立案し、制作チームに伝える体制を整えています。社内ですべて完結でき連携がスムーズであることから、成果が上がる広告を次々と展開できるのです。また、2021年からスタートした『サクっと動画』も、運用チームと制作チームが意見を出し合った結果、「インパクトのある『ファーストビュー』の切り札」としてリリースできたサービスです。
―広告の成果を高めたい経営者にアドバイスをお願いします。
広告の運用と制作に高い知見をもつ広告会社の支援を受けることが、広告効果を最大化させる近道です。当社は設立からの10年間、不動産、金融、美容院、物販などさまざまな業界・業種のWeb広告を手がけてきました。なかには、広告プロモーションの上流であるマーケティング戦略のコンサルティングで、その会社が多店舗展開するまでの成長を支援したことも。今回のコロナ禍の影響で来店者が減ったことから、通販事業を始めたいと考える経営者が多いと聞きます。その際は、複数のECサイトのマーケティング実績のある当社のノウハウが活かせると自負しています。
Web広告の成果を高めたいと考えている経営者の方は、ぜひ当社にご連絡ください。