応募者すら集まらない状況に、つのり続ける経営者の危機感
―人材採用をめぐって、中小・ベンチャー企業の経営者はどのような悩みを抱えていますか。
「求人広告を出しても、なかなか応募者が集まらない」という悩みの声が、多く聞かれます。少子化による働き手不足から、新卒・中途採用を問わずに「売り手市場化」が加速するなか、待遇面やブランド力では大企業に太刀打ちできない中小・ベンチャー企業には、なかなか人材が集まりません。
中小・ベンチャー企業の経営者は、状況を打開しようと人材紹介サービスの利用をはじめ、自社採用サイトのリニューアル、リファラル採用(※)の強化などさまざまな採用手法を検討していますが、「どれが適切なのかよくわからない」と、なかなか実施にまではいたっていません。
※リファラル採用:社員に知人や友人を紹介してもらう採用手法
―そういった状況のなか、採用活動をどう進めればいいのでしょう。
採用活動の進め方は、その会社の規模や求人内容などによって異なるため、ひとつの正解などありません。ただし、「母集団の形成」や「ほしい人材へダイレクトにアプローチする」という「採用の定石」はあります。そこに立ち返って、その会社にとってベストな採用手法を選ぶべきです。
しかし、人材採用のサービスを提供している各社からの説明だと、どうしても情報にバイアスがかかり、どれが最適な手法なのかがわからなくなる。そこで、たとえば我々のように、さまざまなサービスを幅広く取り扱う広告代理店のなかから頼りになるパートナーを選び、最適な採用手法や、それぞれの手法の改善策について的確なアドバイスをもらうことをおススメします。
―たとえば、いまも多くの会社が活用している求人サイトにおいて、「なかなか成果がでにくくなっている」という声に対しては、どのようなアドバイスができますか。
「多くの求職者が利用している」「スカウトメールで直接情報を届けられる」など、「採用の定石」につながる求人サイトのポテンシャルをうまく活用すべき、というアドバイスをしますね。そのためには、求人原稿を作成する前に、ターゲット層のペルソナをしっかりと設定することが大切です。そのうえで、ターゲット層が魅力を感じてくれそうな自社の特徴をしっかりと洗い出し、写真を含めた表現を磨きあげていくのです。スカウトメールを活用する際も、一人ひとりの求職者に合わせた文面をつくり、アクティブなユーザーに絞って、ていねいに送信していくことが肝要です。手間はかかってしまいますが、こうした基本に忠実なアクションを徹底できれば、十分に成果をあげることが可能です。ここで大切なのは、それぞれの文面のブラッシュアップを心がけることです。
経営者の強い「想い」は、求職者の心に響く
―どのようにブラッシュアップさせるべきですか。
難しい部分ですよね。事業内容に特徴がなければ、「ウチには他社と差別化できるような特色がない」と悩む経営者も多いです。しかし、事業や社員に対する経営者の想い、創業時のストーリー、社員が入社を決めた特別な理由、中長期のビジョンなど、深掘りすれば必ずなにか光るものがあるはず。大切なのは、人任せにしすぎずに、自分で考え抜くこと。わかりやすい差別化の要素がないのであれば、経営者自身が考え抜いて届けるべきメッセージをつくりあげていかなければなりません。こうしたメッセージに反応した応募者は多くの場合、会社のカルチャーとマッチしており、入社後に大活躍することが多いのです。
―人材採用を成功させたい中小・ベンチャー企業の経営者にアドバイスをお願いします。
求人サイト活用の際は、積極的に情報発信する意識をもってください。「そのための時間とノウハウがない」というのであれば、我々のような広告代理店を活用してください。私はこれまで、「求人サイトで成果があがらない」と悩む企業を含めて、1,000社以上の人材採用を成功に導いてきました。そのノウハウを活かし、人材採用で悩む多くの経営者を支援したいですね。
特別なスキルをもつ専門職の人材を採用する場合、絶対数が少ないこともあり、採用が難航するケースは多い。フィットネス事業を展開するclubfitnessは、ジムトレーナーを2ヵ月で8名採用する必要に迫られていた。採用担当の廣澤氏に、求人活動をグラハムとどのように進めたかについて聞いた。
社会貢献度の高さを訴求し「埋もれない求人情報」に
―採用に向けた準備をどう進めていましたか。
2019年4月設立の当社は、9月から大阪・難波でのフィットネスクラブ1号店のオープンに向けて、8名のジムトレーナーの採用計画を立てていました。店舗立地の選定や機材・内装などの打ち合わせが忙しかったこともあり、本格的な採用活動の開始は、8月に始まるトレーナー研修2ヵ月前の6月から。「『2ヵ月間で8名の即戦力採用』という難易度の高い要望に対応してくれるのは、同じグループ会社のグラハムしかいない」と藁にもすがる思いで依頼しました。
―グラハムの担当者から、どのようなアドバイスを受けたのでしょう。
私は漠然と、シャドーボクシングの要素を取り入れた、当社ならではのフィットネス手法である「クラブボクサー」の楽しさを、求人サイトで紹介すればいいと考えていました。しかし、グラハムの担当者は、「楽しさを伝えるだけでは、一般的なフィットネスクラブの求人と同じ。どういう『やりがい』が得られるのかを盛り込みましょう」と。そこで、当社が掲げた「人類の健康寿命を10歳延ばす」というミッションを達成できれば、すべての人が生涯やりたいことを続けられるステキな世の中になることを訴求し、「こうした世界の実現に向けた1号店の店舗運営に、みなさんの力をぜひ貸してほしい」というメッセージを強く発信しました。
―どのような反響がありましたか。
「ぜひチャレンジしたい」と、50名以上の応募がありました。「東京から引っ越してでも働きたい」という応募者もいたほどです。より多くの求職者に私たちの想いを伝えるべく、個別に500通以上のスカウトメールも送信しました。ある求職者には、過去に接客経験があることから、「そのホスピタリティ精神をフィットネス指導に活かしてほしい」というメールを送りました。「接客経験の部分を評価してくれたスカウトメールは初めてだった」と語ってくれましたね。
今回は無事に、理想的な人材を8名獲得できました。それができたのも、50名以上の応募者のなかから厳選できたからだと思います。当社は、3年以内に全国出店することを目標にしています。今後もぜひ、採用活動ではグラハムの力を借りたいです。
採用活動をどのように進めればいいのか悩むケースとして、これまで採用経験のない層をターゲットとする場合があげられる。警備業務を行うKSPは、初めて女性の現場スタッフを大量募集する際に、グラハムのサポートを受けて採用活動を行った。初めての経験をどう乗り切ったのか。関内支社支社長の高橋氏に、話を聞いた。
女性ならではの「気配り」は「強み」なのだと直接伝えた
―採用活動ではどのような課題があったのでしょう。
支社として、初の女性現場スタッフの大量募集にあたり、どう採用活動を進めればいいのかわからない状況でした。担当してもらう業務は保安検査業務で、たとえば女性へのボディチェックなど、女性でなければできない業務です。こういった事業ニーズは多くあるので、女性の保安検査員を増やし、手がけられる事業領域の幅を広げようと考えました。
採用活動では幅広く意見を聞こうと、以前から取引のある広告代理店以外にも声をかけ、グラハムの担当者からいい提案を受けたのです。
―どういった内容ですか。
求人情報に、「保安検査業務のクオリティを高めるために、女性の力が必要」という内容を盛り込むものでした。これまで警備業務を対象とした求人情報では、「社会貢献度の高い仕事」というメッセージを発信し、「あなたの力を必要としている」とまでは謳っていませんでした。考えてみれば、「ありがとう」「大丈夫ですか」など、なに気ないひと言を自然とかけてくれる「細やかな気配り」ができる女性は多い。じつは、こういった行動は当たり前のようですが、保安検査業務のクオリティを高めることにつながると考えます。なぜなら、我々の仕事は保安検査ですが、その前に人と接するサービス業だからです。接遇マナーは人の基本。だからこそ重要なのです。
―「保安検査業務における女性の必要性」を強く訴えたのですね。
そのとおりです。そうすることで、「私に保安検査業務が務まるだろうか」と不安をもつ女性も応募しやすくなります。そのほか、業務経験のある年配女性には、スカウトメールを活用しました。「新たにくわわる女性保安検査員をまとめてもらうために、あなたの経験が必要」と直接伝えました。メールを受け取ったその女性は、「多くの会社から『年配なので体力面が心配』と敬遠され、年齢がネックになっていると感じていましたが、KSPからは私の長年の経験を評価していただき、とてもうれしかった」と入社を決めてくれました。
結果として、19~62歳まで幅広い年齢層の女性保安検査員を30名採用できました。今後、彼女たちがどのような活躍をしてくれるのか楽しみです。