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味の素株式会社 人事部 労政グループ 兼 グローバル人事部 古賀 吉晃 / 富士通株式会社 人事本部 本部長代理 平松 浩樹

小さな施策を着実に実行し大きな目標に共感する仲間を増やす

カンファレンス第4部のテーマは「日本を代表する大手企業が実践してきた“働き方改革のイロハ"」である。ここでは、働き方改革に積極的に取り組み、「テレワークの普及」など各種施策で成果をあげてきた味の素の古賀氏と、富士通の平松氏が登壇。両社は働き方改革を推進するにあたってどのような壁にぶつかり、どう乗り越えてきたのか。セッションの一部を抜粋し、働き方改革を成功に導くための要諦を伝える。

※下記は経営者通信51号(2019年6月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

「効率が落ちるのでは」と懸念された

―味の素と富士通は、働き方改革を成功させた大手企業として知られています。施策を進めるにあたり、まずどのようなことを重視したのでしょう。

古賀:働き方改革に取り組む目的をどう設定するかに腐心しました。取り組みを主導することになった私たち人事部では、「国の施策だから」「他社も取り組んでいるから」といった言葉をタブーにしました。全社員が一致団結してこの大きな取り組みに着手するには、「自分たちの言葉で語れなければならない」と考えていたからです。

 そこで私たちは、全社で共有している、CSV(※)の味の素版「ASV」の考え方に紐づけたのです。みんな一律に同じ働き方をしていれば、ASVを実現するために組織として必要な「社会課題との接点」が限られてしまいます。「社会課題との接点を増やすには、多様な人材による多様な働き方を実現する必要がある」という観点から、働き方改革の目的を定めたのです。

平松:当社では、働き方改革の施策としてテレワークを導入する際、実施する対象をどこまで広げるかに慎重な議論を重ねました。「対象を広げすぎると、業務効率がかえって落ちてしまうのでは」という懸念があったからです。

 しかし、テレワークのトライアルを実践した育児中の社員からは、「私たちが遠慮なく活用できるよう、全員が使える仕組みにしてほしい」という意見が出ました。社内調査でも、若年層ほどワークライフバランスを重視し、テレワークを前向きに捉える意見が多くみられました。これらの意見をもとにあらためて議論を重ねた結果、「多様な人材が働ける環境の構築は優秀な人材の確保にもつながる」との結論に。そして、全社員を対象としたテレワークの本格導入にいたったのです。

※ CSV:共通価値の創造。ビジネスを通じて社会課題の解決をめざす概念。味の素では独自のCSVとして「ASV」(Ajinomoto Group Shared Valueの略)を掲げている

「右脳と左脳」に訴えかけテレワーク普及率は80%突破

―味の素では具体的にどのような施策を実施することになりましたか。

古賀:当社でも、働き方改革の一環でテレワークを導入しました。しかし、育児や介護などの事情をもたない社員に対するメリットがイメージしてもらえず、現場からは不満が続出しました。「業務効率やコミュニケーションの質が落ちるのではないか」「製造部門は実施できないので不公平ではないか」と。社員の賛同をえられず、人事部は孤軍奮闘する状況となっていました。

―そうした状況をどのようにして乗り越えたのでしょう。

古賀:ほかの部署を巻き込み、ひたすら「仲間」を増やしていきました。現在の働き方改革の推進チームは約30名で、当社の主力事業である「食品」と「アミノサイエンス」の両事業部、総務、情報システム、経営企画、調達などで構成され、全社横断で取り組みを推進できる体制が整っています。

 さらに、現場の社員に対する訴えかけも、つねに欠かしませんでした。人には、理念や想いで動かされるタイプと、数字や根拠が示されないと動かないタイプがいます。私たちは両タイプの社員にテレワークへの関心を高めてもらうよう、「右脳と左脳」を使い分けた社内広報を続けてきました。

 こうした地道な努力を経て、いまではテレワークの普及率が80%を突破し、「壁を乗り越えた」という実感をえられましたね。

―富士通ではテレワーク制度を実施してから困難はありましたか。

平松:はい。トップによるメッセージを伝え、説明会とEラーニングも実施し、全社で大々的にテレワーク制度を開始したのですが、実際に利用する社員がほとんどいないという状況に陥ったことです。制度開始の4ヵ月後に行ったアンケートでは、月に1回以上テレワークを実施した人が、わずか5%にとどまったとの結果が出ました。絵に描いたような「企画倒れ」だと思いましたね。

 そこでわれわれ推進チームは、制度利用を促し、働き方改革を確実に前進させるための施策に取り組みました。

―施策の詳細を教えてください。

平松:まず、当社に約90ある事業本部から働き方改革の「モデル本部」を指定しました。そして、モデル本部に、テレワークを積極的に実施してもらったのです。最終的には、モデル本部の社内における横展開でテレワークの利用を定着させ、そのメリットを実感してもらうことに成功しました。

 では、特定の本部にモデルとなってもらうために、どう動機づけしたのか。私たち推進チームは、モデルになってくれるかわりに、その本部が抱える課題の洗い出しや、課題解決を徹底的にサポートしたのです。これによってペーパーレス化やフリーアドレスなど、具体的な新しい施策のアイデアが生まれました。推進チームはさらに、ほかの部署と連携しながら、こうしたアイデアも実現させていったのです。

会社の大きな目標を社員個人の「自分ごと」に

―両社が壁を乗り越えてえられた働き方改革推進のポイントはなんですか。

古賀:小さくても、まず実行していくことです。はじめから大きな変革をめざしても、現場はついてこられず、いつまでも実行に移せないからです。

 当社ではテレワークを推進する際、「できる部署から」「可能なタイミングで」「少しずつ」テレワークの活用を促してきました。はじめは、「全社員が使えない制度は不公平だ」との声も出ましたが、推進チームはむしろ、「活用できる人がいるのに放置するのは、かえって変革の機会を失っている」と考えていました。そして、台風で交通機関が乱れる恐れがあるときなどに、テレワークを徹底的に促す。そこから、政府が定める「テレワーク・デイズ」に参加するなど、徐々に取り組みを拡大していったのです。

平松:私は、社員の意識変革も重要だと考えています。働き方改革は包含する概念が幅広く、ボンヤリした印象をもたれがちなので、社員に「働き方改革は自分たちのための取り組みなのだ」と納得してもらう必要があります。

 当社では、特定の本部を先行モデルに、本部単位の働き方改革ワーキンググループを全社展開して、職場の課題に向き合う機会を与えることができました。この機会により、社員は働き方改革を「自分ごと」として考えられるようになったのです。テレワークなどの取り組みを社員が遠慮なく使えるようにするため、Eラーニングやワークショップなどを通じてマネジメント層の意識を変えることも効果的でした。

働き方改革は一社にしてならず

―最後に、働き方改革に関心のある経営者にメッセージをお願いします。

古賀:働き方改革は一部の企業が取り組むだけでは達成できません。社内で仲間を増やすのと同様に、顧客や取引先などすべてのステークホルダーの理解と協力をえて、達成できるものです。すべての人がもっと働きがいや生きがいをもてる社会を、みなさんで一緒につくっていきたいと考えています。

平松:働き方改革を進めるにあたっては、さまざまな壁にぶつかっていくでしょう。当社は泥臭い地道な取り組みからITの活用まで、さまざまな方法でその壁を少しずつ乗り越えてきました。企業が互いに情報を共有しつつ、競い合いながら働き方改革をブラッシュアップしていくことで、少子高齢化やグローバル競争といった日本が抱える課題に向き合っていければいいですね。

古賀 吉晃(こが よしあき)プロフィール

2009年、味の素株式会社に入社。川崎工場の人事・総務部門を経て、2013年から現職。全社・本社の人事労務を担当。2018年7月からは、全社働き方改革のプロジェクトリーダーとして、経営主導のマネジメント改革と、社員一人ひとりが主体的に取り組むワークスタイル改革との連動による、「味の素流働き方改革」を推進している。

平松 浩樹 (ひらまつ ひろき)プロフィール

1989年、富士通株式会社に入社。おもに営業部門の人事担当として、目標管理制度の運用やローテーション制度、組合対応などに携わる。2004年以降、プロダクト部門や役員の人事担当部長を歴任。2015年からは営業部門の人事部長として働き方改革を推進。2018年に人事本部人事部長に就任し、2019年より現職。

味の素株式会社

設立1925年12月
資本金798億6,300万円(2018年3月31日現在)
売上高1兆1,502億円(連結、2018年3月期) / 2,549億3,500万円(2018年3月期)
従業員数3万4,452名(連結、2018年3月31日現在)
事業内容食品事業、アミノサイエンス事業など
URLhttps://www.ajinomoto.com/jp/

富士通株式会社

設立1935年6月
資本金3,246億円(2018年3月31日現在)
売上高4兆983億7,900万円(連結、2018年3月期)
従業員数14万365名(連結、2018年5月31日現在)
事業内容テクノロジーソリューション、ユビキタスソリューション、デバイスソリューションの各事業
URLhttps://www.fujitsu.com/jp/

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