市場の変化に対応できる柔軟な組織が生き残る
―中小企業をとりまく経営環境はどう変わっているのでしょう。
ITの発達を背景に社会の変化が激しくなり、中長期的な先行きを見通すことがますます難しくなっています。顧客のニーズも急速に変わるため、これまで成功してきたビジネスモデルや戦略が通用しにくくなってきました。 新しい戦略を立てても、時代の変化にともない通用しなくなれば、すぐに競争に立ち遅れてしまいます。そのため、新たな活路を見出すために「破壊的なイノベーション」といった事業戦略上の差別化が叫ばれるのです。
しかし、イノベーションを起こすのは簡単ではないので、そのことから今後の企業は事業戦略よりも、組織のあり方が重要になります。戦略を実行し、市場からのフィードバックを受け、軌道修正を行う。こうしたサイクルを速く回せる組織であることが、他社との重要な差別化につながるからです。
―具体的にはどのような組織であることが求められるのでしょうか。
顧客にもっとも近い現場の社員が自立的に判断し、行動できる組織です。従来型のヒエラルキーのなかでは、吸い上げたニーズや情報を上層に伝えるのに時間がかかり、急速な市場の変化に対応することが難しくなります。
そうなると今後は、社員が自立的に動ける仕組みや環境をつくれるリーダーが求められます。自身が部下を引っ張っていくだけでなく、機動性の高い組織をつくっていく。「縁の下の力もち」のようなイメージですね。
さらには、これまでより難しい経営の舵取りが求められる後継者候補の育成も考える必要があります。その際に、候補者選びを年齢や社歴などで制限してはいけません。企業の生き残りをかけてITを駆使せざるをえなくなるなか、こうした分野に詳しいのは「デジタルネイティブ」と呼ばれる若年層です。年齢に関係なく、ポテンシャルを見極めたうえで将来のリーダーや経営者候補を育てていくことが大切です。
難度の高い現場経験で経営者候補を成長させる
―リーダーや経営者候補を育てるうえでのポイントを聞かせてください。
「企業が生き残っていくために必要なリーダー人材を選び、中長期的に育成する」という視点をもつことです。
現状、多くの企業で実施されている教育や研修はこうした視点に欠け、いまだに平等性や公平性が過度に重視されがちです。そのため、「階層別研修」といった一律的な研修が実施されるわけです。しかし、受講対象者の共通点は社歴などに限られるため、研修内容は抽象度が高まり、個々人が学んだことはほぼ現場の業務に活かされません。ましてや、後継者候補の育成に単発的な教育はほとんど意味がないでしょう。
―どのような教育が理想的なのでしょうか。
まず、やる気や伸びしろがある社員を選抜したうえで、教育を受けさせること。そして、対象となる社員たちの業務内容に直結し、実戦に活かせる研修を提供するのです。その研修も1回切りで終わらせるのではなく、現場で実践してもらい、そこへさらに本人へのフィードバックを与えることが重要です。こうして実践とフィードバックを何度も繰り返すことで、経験とともにスキルを定着させていきます。
必要に応じ、異なる部署や組織への再配置も行います。人が成長するには現場経験が重要ですので、子会社社長への就任などを通じ、難度の高い意思決定を行う場を体験してもらうのです。
当社はコンサルティングファームが母体なので、教育を行うだけでなく、経営や戦略、マーケティングなどにかんするアドバイスも可能です。そのため、教育を受けさせる社員の選抜や再配置などについても、経営の視点に立って助言することができます。
―最後に、永続経営をめざす経営者にメッセージをお願いします。
経営を継続させていくには、次代の経営者を戦略的に育てていかなければなりません。そのためには、早い段階から候補者を選び、時間をかけてリーダーを育成していくことが大切です。
当社には、コンサルティングのスキルだけでなく、経営の経験もあわせもったコンサルタントが多く在籍します。こうした強みを活かして、企業の永続経営を支えていきたいですね。