自身がトップ営業として背中を見せたことが奏功
―82年の長い歴史をもつ、辰己屋金属の強みはなんでしょう。
❝加工商社❞と称し、メーカーと商社という、ふたつの機能を有していることです。スピーディかつ大量の材料発注にも対応し、付加価値の高い加工を心がける。それを繰り返し続けて、顧客からの信頼を得てきたことが強みですね。
先代である父親が、祖父から会社を引き継いだのが、ちょうど私と同じ42歳のとき。当時は従業員数10名で売上高が15億円でした。そして私が引き継いだ現在では、従業員数が60名で売上高は今期30億円を見込んでおり、おかげさまで順調に推移しています。
―2017年6月に、社長に就任しました。社内外の反応はいかがでしょう。
就任当初は不安でしたが、約5年前から着々と準備していたこともあり、好意的に受け止めてもらっています。
とくに、従業員の期待をヒシヒシと感じます。私には、社長に就任する前から大手企業を新規開拓したり東京営業所を立ち上げたりと、トップ営業として会社をけん引してきた自負があります。従業員はその背中を見てきたので、「三代目と一緒に会社を盛り上げていこう」と、士気が高まっているのです。実際に、今年の1月から8月まで、連続して目標を達成。順調なスタートダッシュができていると思いますね。
―新社長として、どのような経営を行っていこうと考えていますか。
時流を読んで、改善すべきところは徹底的に改善します。たとえば、ITの活用。これまで自社HPの改善は何度か行ってきましたが、もっとマーケティングや採用に活用できるよう磨き上げていきます。また、SNSを日常業務に取り入れ、承認業務やアドバイス、悩みの相談にのるなど、従業員とのコミュニケーションをスピーディかつ円滑に図っていく予定です。
その一方で、変えてはいけない普遍的なものもあります。
―それはなんでしょう。
「大家族主義のアットホームな社風」「先人たちの誇り」「たゆまぬ努力と多大なる感謝」の3つです。これらは、先人が築き上げてきた、辰己屋金属の❝在り方❞ともいうべきもの。この3つは、後継者である私が守らなければならない、いちばん大事なものだと胸に刻んでいます。
―ほかに経営で重視しようとしているものはありますか。
従業員に「あいさつ」「礼儀」「お礼」を徹底してもらうことです。IT化が進んでも、いつの時代も変わらないのがヒト。ヒトを通じてビジネスをするうえで、この3つは必要不可欠です。これらと、ITをうまく融合させることで顧客満足を追求していきます。
一方で、従業員満足も重視します。経営者である以上、従業員にやりがいや幸せを提供する義務がありますから。たとえば制度面でいうと、子ども手当ての検討など、従業員ができるだけ長く働ける環境を整えていきます。
―今後の目標を教えてください。
私が60歳になったとき、100周年を迎えます。そこで、切りよく従業員数100名、売上高100億円が目標。しかし、それはあくまで通過点にすぎません。この目標を私の代で必ずやり遂げて、150年、200年と続く組織づくりを行っていきたいですね。
そして、加工商社で日本一、いや、もっと大きく世界一をめざします。当社にはやる気と情熱をもったメンバーが集まっているので、それに共感できる新卒の学生はぜひ一緒に働いてほしいですね。