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グローバルのコラム

全産業、全階層に創造的人材が求められている

いま事業家たちが私財を投じて教育改革に邁進する理由《中編》

全産業に創発的組織風土が求められている

 2020年、コロナが世界を襲い、世界は大きく変化した。より正確に言えば、大きく進化したと言うべきか。同時に世界中で保護主義が再び台頭し、米中二大巨頭による政治と経済の争いも激しさを増す。

 残念なことにITの世界は米中の二強争いとなり、もはや日本の出る幕はない。だが戦後日本が築いたモノづくり大国の地位はかろうじて未だ健在である。しかし近年この製造業の世界にもテクノロジーの波が押し寄せようとしている。

 ITとモノが融合し、製品ライフサイクルもどんどん短くなっている。いま日本の大手メーカーは生き残りをかけて、過去の成功体験を捨て去り、イノベーションを興すことに躍起になっている。それは同時に組織風土を大変革しなければいけないことを意味する。終身雇用、年功序列、集団主義。日本的経営と世界から称賛されたこれらのワードは完全に過去のものとなり、栄枯盛衰の激しいメディア業界やサービス産業だけでなく、今や製造業を含む全産業にイノベーションを興し続ける経営が求められているのだ。

 これからの企業経営は、いかに創造的人材を生み出しイノベーションを興し続けられるかが勝負の分かれ目になるだろう。極端な話、日本の並み居る大企業がリクルートのような組織風土になれば、日本経済は今より断然面白くなるのではないだろうか。

構造改革が進まない日本の学校教育

 もちろん日本の産業界が変わるためには、日本の教育界が同時に変わらなければいけない。日本の国家としての人事部を担うのは学校教育であり、学校教育が変わらなければ、広義で日本の産業界全体は変わらない。

 しかし、だ。ちまたで学校教育の改革が叫ばれてだいぶ久しい。もう20年以上前から(いやもっと前からかもしれない)、戦後の高度経済成長を支えた教育システムが制度疲労を起こし、時代の要請にマッチしなくなっていると言われ続けてきた。なのに、いまだに大きな変化は起こっていない。小さな話だが、運動会の組体操は未だ続けられているらしいが、いったい何の意味があるのだろうか。一事が万事である。

 戦後日本の経済成長を支えたのは輸出型の製造業であり、そのバックには人材を供給し続けた日本の教育システムがある。世界中から原材料を大量に輸入し、安価で早く加工して、いかに不良品を少なく世界に輸出していくか。その要請に応える形で旧来の日本の教育は磨かれていった。暗記中心、減点方式、集団協調、いわゆる偏差値教育。それがうまくはまった時代は良かったが、先述の通り、いま産業界は創造的人材を求めている。イノベーションを興せる人材を強く求めているのだ。自分の頭で考え、主体的に行動し、課題解決できる実践者。そんな人材像がリーダーだけでなく、一般社員にも求められている。

 しかし、いかんせん。教育改革は前に進まない。みんな頭では分かっていても、何十年もかけて磨きこまれ、日本国中に浸み込んだ旧来型の教育システムの呪縛からなかなか脱却できない。日本の学校教育が進化しなければ、日本人をメインに採用している日本企業の根本は変わらない。日本国の産業全体の人事部を学校教育が担っているのだ。これは国家としての喫緊の課題であり、死活問題である。

学校教育の改革に立ち上がった事業家たち

 そんな中、最近ニュースでよく目にするのが事業家による学校教育への挑戦である。グローバルの最前線で戦う事業家たちだからこそ、世の変化に機敏で危機感も強い。このままでは日本は世界から取り残されてしまう。いや世界に食われてしまう。そういった危機感が事業家たちを突き動かしているのだろう。

 歯に衣着せぬ発言で有名な日本電産創業者の永守氏。日本の旧来教育では社会に出て必要となる力を養えないとして、「世界に通用する大学を目指す」と宣言し、自身が運営している京都先端科学大学に私財130億円を投じた。新たな学部も新設するなどその熱量は半端ない。永守氏の熱意が通じたのか、志願者数も年々増えている。

 旧来教育に対して異論を唱えているのは永守氏だけではない。「野武士型パイオニア」を輩出するべく、全寮制の高等専門学校(以下、高専)を創立したのはSansan創業者の寺田氏。時価総額1000億円を超えるSansan創業社長である寺田氏は上場2日後に「神山まるごと高専」プロジェクトを発表。約20年ぶりの新設となる高専を四国の徳島に開校すると宣言した。この高専では自然豊かな神山町で座学のみならず、実践の場として街全体を活用した学びを提供する。

 日本の未来を創る国際イノベータ―輩出を目指すのはインフィニティ国際学院の大谷氏だ。大谷氏は創業したネット調査会社をヤフーに売却し、教育界に転じた。より主体的にグローバルな視座で実践的に学べる教育プログラムを提供している。

 日本人の海外留学の倍増を目指した「トビタテ!留学JAPAN」を仕掛けたのはウィルシード創業者の船橋氏。船橋氏は創業した人材教育会社ウィルシードを河合塾に売却した後、かつてない規模の官民共同プロジェクト「トビタテ!留学JAPAN」を立ち上げた。

 また角川ドワンゴ学園が運営するN高、ホリエモンのゼロ高も有名だ。どちらも生徒の創造性を重視し、テクノロジーを活用しながら質の高い教育を提供している。

 学校の創立だけではなく、学校経営に転じる事業家も多い。ライフネット生命を創業した出口氏は2018年から立命館アジア太平洋大学(以下APU)の学長に就任した。また米国マイクロソフト本社の副社長も務めたアスキー創業者の西氏も家業の須磨学園の学園長に就任している。

 事業家個人だけでなく、事業会社も学校教育に進出している。日本のイートン校を目指し、2006年創立の愛知にある海陽学園。全人教育を掲げ、中高一貫校の男子校で全寮制の同校は、トヨタ自動車とJR東海、中部電力などの中部財界が200億円以上かけて創立した。

いま事業家たちが私財を投じて教育改革に邁進する理由

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