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ワタミ株式会社 取締役会長 渡邉 美樹

「新規事業」と「海外進出」の成否は企業理念の貫徹で決まる

※下記は経営者通信21号(2012年9月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

―海外では言語の壁だけではなく、文化の違いもあります。どのようにして、理念の浸透を図っているのですか。

渡邉:何度も何度も対話を繰り返す以外にありません。ワタミグループの理念集(注1)やビデオレター(注2)は、北京語、広東語など、すべて現地語に翻訳しています。私も年に2回は渡航し、現地で理念研修会(注3)を実施しています。日本とまったく同じ理念浸透のシステムを海外でも行っています。いまは、私と同じ情熱で理念を伝えてくれる人材に現地のマネジメントを任せています。海外の商品部門の現地責任者は、創業時、私と一緒に汗をかいてくれた男です。最近まで香港のワタミで社長を務めていたのは、ワタミ1号店(当時、つぼ八)のアルバイト経験者。現在の社長も4号店のアルバイト経験者です。みんな、私とは30年近くの間柄。ワタミの理念で結ばれている仲間です。

(注1)理念集:創業者である渡邉氏の価値観・使命感を現場のさまざまな事例をもとに解説した冊子。
(注2)ビデオレター:ワタミグループの事業展開や活動を紹介するトップメッセージを収録したビデオ。毎月1回、各事業拠点に配布し、パート・アルバイトを含めた全従業員が視聴できる。
(注3)理念研修会:ワタミグループの原点を振り返り、1人ひとりの社員が理念を体現できるようになることを目的とした研修会。ワタミグループのトップの講話や質疑応答、理念をテーマとしたグループディスカッションなどを通じ、理念のより深い理解を促進している。

―多くの創業経営者が事業承継に悩んでいます。創業者である渡邉さんは昨年2月、代表権を持たない取締役会長に就任しました。事業承継において大切にしているポイントを教えてください。

渡邉:一番大事な点は、企業成長を続けながら、承継プロセスを確実に推し進めていくこと。後継者に社長の椅子をポンと渡してすむものではありません。私の力が必要とされる時はアドバイスをしますが、後継者を育成するため、あえて言いたいことを飲み込むこともあります。経営の微妙な間合いをとりながら、徐々にでも私への依存度を確実に下げていく。ここがポイントだと思います。

―ワタミグループは、創業者である渡邉さんの迅速な意思決定で成長してきました。事業承継後は、どのような形でグループ経営を推進していくのですか。

渡邉:集団指導体制によって、情報の確実な共有と迅速な意思決定を行います。 その仕組みをつくったのは2009年6月。グループ持株会社であるワタミ株式会社の代表取締役社長を外食事業のワタミフードサービス株式会社代表取締役社長の桑原豊に兼務させ、介護事業のワタミの介護株式会社の清水邦晃、MD・農業のワタミ手づくりマーチャンダイジング株式会社の門司実、高齢者向け宅配事業のワタミタクショク株式会社の吉田光宏の各代表取締役社長にも、ワタミ取締役を兼務させました。それぞれ単体で、普通の東証一部上場企業並みの大きさの企業です。しかし、彼らが「自分の事業だけ見ていればいい」という意識では、グループ経営は機能しません。そこで、ワタミ取締役兼務と同時に担当役員制度を導入。4社の社長には自らが執行する事業会社以外に、他グループ会社の経営状況を監視する責任を担わせました。ワタミグループ全体を見る意識を植え付けるためです。持株会社のトップは一人だとしても、グループ経営を機能させるためには、この4人を次のリーダーとして同時に育て上げる必要があります。

―どれくらいの期間をかけて事業承継を行うのですか。

渡邉:あと3、4年で終えたいですね。経営面で最終的にどうしても私が見なければいけない部分は、資本政策や役員人事、企業文化を守る部分など、創業者としての役割に特化していきたい。実際問題として、3、4年でできるかどうかはわかりませんが、強い意思を持ち、確実に前進していく覚悟です。

渡邉 美樹(わたなべ みき)プロフィール

1959年、神奈川県生まれ。小学校5年生の時、父親が会社を清算。その悔しさをバネに「将来は社長になる」と決意。1982年に明治大学卒業後、会社経営に必要な経理を勉強するため、経理会社に入社。その後、運送会社で1年間働き、起業資金300万円を貯める。1984年に有限会社渡美商事を設立し、同社代表取締役に就任。居酒屋「つぼ八」の店舗を買い取り、フランチャイズオーナーとして起業する。1986年に株式会社ワタミ(現・ワタミ株式会社)を設立し、代表取締役社長に就任。1996年に店頭公開、2000年3月に東証一部に上場する。個人として2003年に学校法人郁文館夢学園の理事長、2007年に岸和田盈進会病院の理事長に就任。その他、公益財団法人School Aid Japan代表理事として発展途上国への教育支援やNPOみんなの夢をかなえる会理事長として日本の若者の夢支援に力を入れる。2011年2月から現職。同年6月に岩手県陸前高田市の参与に就任し、同市の復興にも取り組んでいる。

ワタミ株式会社

設立 1986年
資本金 44億1,000万円
売上高 1,401億9,700万円(2012年3月期連結)
従業員数 5,730人(グループ計)
URL http://www.watami.co.jp/

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