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注目企業の経営者インタビュー

中田総合法律事務所 弁護士/SBI大学院大学教授 中田 光一知

攻めの法務を活用し中長期的な企業成長をサポート

企業経営の複雑化が進む中、法務の重要性は年々高まっている。グローバリゼーションが急速に進行し、日本の経済社会は「法化社会(注1)」に突入。企業には法的リスクの回避のみならず、積極的に法を活用する企業戦略の策定が求められている。そこで今回は、精力的に企業経営のサポート活動を展開する弁護士2名の対談を設定。中小・ベンチャー企業が取り組むべき21世紀の法務について、中田氏と福間氏に話を聞いてみた。

(注1)法化社会:法に基づいた支配や問題解決などが徹底される社会のこと。

※下記は経営者通信4号(2009年12月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

―中田先生は20年以上のキャリアの中で、100社を超える企業法務に携わってきました。まず中小・ベンチャー企業が陥りやすい企業法務の問題を教えてください。

中田:企業を経営していると、実に様々な法的トラブルに遭遇します。たとえば、機密情報の漏洩、従業員や役員の背任行為、商品のPL責任、債権回収、労務問題など、経営者が心当たりのある事例は山ほどあると思います。

 ところが、大多数の企業はトラブルに対する初期対応を弁護士に依頼しません。弁護士にかける費用を“コスト”と考え、できるだけ節約しようとするためです。そもそも、弁護士に依頼すべき案件なのかどうか判断がつかないという場合もあります。そして初期対応を誤り、トラブルが拡大する。その後、“やむを得ず”弁護士に頼んで裁判をするケースが多いんです。

福間:法的トラブルが手に負えなくなってから弁護士に依頼しても、手遅れになるケースもあります。裁判によって企業イメージが失墜し、売上が大きく下がる場合まであるからです。そのような法的リスクを未然に回避するためには、日常的に相談できる顧問弁護士が必要になります。特にIPOを考えている企業は、いますぐ真剣に検討すべき。顧問弁護士を置かずにIPOを目指すのは、シェルパを雇わずにエベレストを登山するようなものです。

―では、「弁護士選びのポイント」を教えてもらえますか。

中田:まず企業法務の実績を見るべきです。そして、次に人としての相性ですね。弁護士と友達になる必要はありませんが、人間的に合わない人はダメ。たとえ実務能力が高くても避けた方がいいでしょう。

 さらに、熱意や情熱が必要です。クライアントのことを真剣に考える姿勢が弁護士にあるか。弁護士と互いの夢を語り合える関係を築ければ、頼もしいパートナーになると思います。

福間:顧問弁護士を選ぶ際は、なるべく多くの弁護士と会うことをオススメします。単に知名度の高さだけで選んではいけません。自社のニーズに適しており、日常的にコミュニケーションが取りやすい弁護士を選ぶべきでしょう。先ほどの「人としての相性」ということです。また、既に顧問弁護士を置いている会社であっても、先ほど申し上げた観点から、顧問契約をいま一度見直してみるべきだと思います。

 近年、企業を取り巻く社会状況が劇的に変化し、同時に弁護士数も増加しています。取引先の見直しと同様、顧問弁護士についても特別視する必要はありません。

―しかし、中小・ベンチャー企業にとって、弁護士の存在は身近ではありません。実際は「弁護士の先生にはお世話になりたくない」と考えている経営者が多いのではないでしょうか?

中田:そうかもしれません。これまでは法的トラブルが手に負えない状況にならない限り、弁護士の出番がなかったからです。従来の弁護士が行う企業法務は、あくまで「紛争処理型」。そのスタートからゴールまで、裁判で法的トラブルを解決することです。また、スポット型の業務のため、顧問契約を結ぶ必要は低かった。しかし、近年は企業経営が複雑化し、様々な局面でリーガルチェックが必要になりました。コーポレートガバナンス、各種契約書の作成・締結、個人情報管理、著作権等の知的財産権管理、社内規程の整備、法務デューデリジェンス、コンプライアンス・システムの構築・・・。そこで「リスク回避型」の企業法務が注目されるようになったんです。これは法的トラブルを未然に回避・予防するための企業法務です。そして現在、企業法務はさらなる進化を続けています。それが「戦略型」で、当事務所は「戦略法務」と呼んでいます。これは経営戦略の立案や経営上の意思決定に関わる企業法務のことです。弁護士が経営者のパートナーとなり、法律的視点から企業経営をサポートしていきます。

 わかりやすい分野としては、M&A(事業の再編成)や特許・著作権など知的財産権の活用、株式・新株予約権や社債などを用いた直接資金の調達などが挙げられますね。また規制緩和など、法改正の動きを先取りしたアドバイスも行います。

 従来の「紛争処理型」や「リスク回避型」の企業法務は、あくまで❝守りの法務❞でした。そこでは、弁護士にかける費用は❝コスト❞として考えられていました。現実にそうだったと思います。

 しかし、戦略型の企業法務=「戦略法務」は❝守りの法務❞ではありません。経営戦略の立案・実行に法務を積極的に活かす、いわば❝攻めの法務❞です。この❝攻めの法務❞において法務活動や弁護士にかける費用は、事業利益を極大化するための“投資”です。さらなる成長を目指す企業は、この❝攻めの法務❞に取り組むことをオススメします。

❝攻めの法務❞と❝守りの法務❞の違いとは

―❝攻めの法務❞と❝守りの法務❞の違いを、もう少し教えてください。

福間:❝攻めの法務❞の場合、定期的に経営者とお会いし、ヒアリングを行います。このヒアリングは単なる雑談でいいんです。雑談の中からこそ、その会社の経営をめぐる様々な問題が見えてきます。ここでは本音で語ることが大事です。そして、本音の会話の中で見えてきた問題について、弁護士が積極的にアドバイスを行うんです。

 イメージとしては、「アドバイザリー・ボード」に近いかもしれません。「アドバイザリー・ボード」とは、外部の識者・専門家による第三者委員会のようなもの。独立した立場から、経営上の課題について客観的な助言を行います。

 実際、米国では「アドバイザリー・ボード」の中に弁護士が入ることが多い。その理由は弁護士の課題解決能力が評価されているからです。弁護士は解決すべき課題が自分の専門分野でなくても、リーガル・マインド(法的思考方法)やディベート技術を用いて、課題の解決法を発見するための議論をリードできます。そして、課題解決まで導くことができるのです。中田先生が大学院でディベートの講義を持たれているのも、このようなことからですよね。

中田:ええ。オーケストラで言えば、弁護士は「指揮者」なんですね。オーケストラが素晴らしい音楽を奏でることができるのは、各パートの演奏者の能力の合計よりも、指揮者の果たす役割が断然大きい。

 もちろん、現代社会は高度に専門分化した時代ですから、弁護士にもスペシャリストとしての能力が必要とされます。当事務所も、事業再生・M&A、著作権・デザイン・ノウハウ・特許権などの知的財産権、コーポレートガバナンスやコンプライアンス、不動産開発・取引法、金融商品取引法、エンターテイメント法分野、医療法人経営などの各分野においてスペシャリストたる自負を持っています。

福間:❝守りの法務❞の場合、リスクが予見される部分だけに集中的に関与します。各種契約書の作成、社内規程の整備、法務デューデリジェンスなど。経営全体から見れば、あくまで部分的関与に留まります。つまり、弁護士がカバーする範囲が❝攻め❞と❝守り❞では決定的に違うわけです。

―❝攻めの法務❞は経営全体に関与し、❝守りの法務❞は部分的な関与に留まるわけですね。

中田:そうですね。従来の弁護士事務所は長らく「部分最適」を行ってきました。リスク回避型の企業法務の場合、予見されるリスクを回避すること。それだけがミッションだったからです。「全体最適」を考えるのは、あくまでクライアントである経営者の役割。経営者も弁護士も、その関係でいいと考えていたんです。お互いに役割分担をしていると。

 たとえば「M&Aを行うので、法務デューデリジェンスをお願いします」とクライアントに依頼される場合。その際、弁護士は買収対象企業の法的リスクを調査します。当然、弁護士はM&Aの“経営的な妥当性”までは判断しません。

 しかし、本当にそれでいいのでしょうか?M&Aの目的が「企業価値の向上」だとすれば、そのM&A以外にも適した手段があるかもしれません。真の全体最適を行うためには、法的観点に基づいた経営判断、経営戦略の立案・実行が必要です。もし顧問弁護士がクライアントの経営状況の全体を正しく把握していれば、より精度の高い経営判断、経営戦略の立案・実行をサポートできるでしょう。

福間:そこで当事務所では、クライアントと日常的にコミュニケーションをとるようにしています。クライアントの経営状況の全体を正しく把握し、適時に適切なアドバイスを行うためです

 従来の感覚であれば、特別な相談もないのに、弁護士とは話しにくいかもしれません。「弁護士の先生と話したら、お金がかかるんじゃないか」と不安になるでしょう。実際、顧問契約を結んでいても、時間単位で相談料を上乗せする弁護士事務所もあります。でも、当事務所は違います。顧問契約の場合、何時間話しても料金は一定です。だからクライアントは安心して、様々な話をして頂けるんです。つまり、当事務所は弁護士の“先生”ではなく、クライアントの“パートナー”として仕事をしているわけです。

―弁護士は❝先生❞として敬われているため、❝パートナー❞という意識が低い弁護士事務所もあると思います。なぜ貴事務所は、「クライアントのパートナー」という姿勢を大事にしているんですか?

中田:私が新米弁護士だった頃の経験が大きいと思います。今から20数年前。私が弁護士登録1年目の頃、ある中小企業のクライアントを担当しました。そのクライアントは致命的な法的トラブルに見舞われていた上、資金繰りにも慢性的に苦しんでいました。まさしく倒産の危機に瀕していたんです。

 そこで、私が考え得るあらゆる法的手段を駆使して、できる限りのサポートを行いました。法的トラブルの解決のみならず、未熟ながら経営課題に対するアドバイスまで行い、経営者と二人三脚で倒産の危機を乗り越えたんです。そして翌年、クライアントは見事に成長軌道に復帰しました。クライアントの成功によって、私は弁護士としての自信を得ることができました。そして、弁護士の喜びと誇りを強く感じました。この時の経験から、「弁護士はクライアントのパートナーである」という当事務所の姿勢が確立したのだと思います。まさに「三つ子の魂百まで」ですね。

―最後に、今後のビジョンを聞かせてください。

福間:当事務所が目指すのは、短期的な利益追求ではありません。あくまでクライアント企業の中長期的な企業価値向上をサポートすることです。その結果として、クライアントのあらゆるステークホルダー(利害関係者)、ひいては地域社会や国、世界全体が豊かになり、そこに暮らす全ての人々が幸せになればいいと考えています。

 いまや企業は社会の一市民として、人々の生活を支える公器です。現代社会における企業価値とは、環境保護や福祉といった必ずしも財務諸表に表現されない価値も含まれます。

中田:当事務所の姿勢は「プライベートライフからビッグビジネスまで、あなたのベストパートナー」という言葉に集約されます。❝言霊❞ともいいますが、言葉には魂が宿ります。われわれは、今後も経営者のベストパートナーとして、企業経営を全力でサポートしていきたいと思います。

中田 光一知(なかだ こういち)プロフィール

1959年、東京都生まれ。早稲田大学法学部卒業後、1989年に司法修習修了・弁護士登録(第二東京弁護士会)。1994年に中田総合法律事務所を開設。2003年には「戦略法務研究会」を立ち上げ、「戦略法務」を提唱。2008年よりSBI大学院大学教授(経営管理研究科)に就任し、「戦略法務」に関する講義を担当。また、リーガル・マインドを身につけるための「ディベート」の講義も担当し、中小・ベンチャー企業の経営者・管理者の育成に尽力している。著書に『この一冊で大丈夫あなたの会社に合った個人情報保護法対策』など。

中田総合法律事務所

設立1994年
従業員数11名(弁護士3名・パラリーガルスタッフ3名を含む)
URLhttp://www.nakadanet.com
お問い合わせ電話番号03-6277-7741

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