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日本メディメンタル研究所(株式会社JPRON) 所長 清水 隆司

メンタルヘルス対策を強化し生産性の高い組織をつくる

近年、心の病気を患う人(メンタル不全者)が急増している。現在、社会人の3~5%がうつ病やパニック障害、自律神経失調症などを患い、会社を休職しているという。特に、最近は周囲を困らせる新型うつ、パワハラ、セクハラが増え、企業全体の生産性を下げる現象が多発している。日本メディメンタル研究所の清水所長は、この現状を「1990年代のバブル崩壊後、企業が短期的な業績改善を追求するあまり、人の心をおざなりにしてしまった結果だ」と指摘する。では、いったい企業はどのようなメンタルヘルス対策に取り組むべきなのか。今回は17年間の※産業医のキャリアを持つ清水氏に話を聞いた。

※下記は経営者通信6号(2010年5月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

―現在、企業でメンタル不全に陥る人が増えています。企業にメンタル不全者が増えると、どんな問題が起きるのでしょうか。

清水:まず職場全体の生産性が低下します。メンタル不全の従業員は集中力が低い。そのため残業代が増えたり、ミスをして他の従業員に負担をかけるだけでなく、顧客に対する会社の信用を低下させてしまいがちです。次に、周囲の従業員のモチベーションが低下します。メンタル不全者は、会社を頻繁に遅刻したり、休んだりしがちです。すると、それを見た周囲の従業員が不公平感を抱き、やる気を失ってしまうわけです。さらに、労務トラブルが起きるリスクがあります。「心の病気になった原因は会社にある」と従業員から、直属の上司や会社を相手に訴訟を起こされてしまうんです。その結果、会社がその対応に多くの人件費を費やすことになります。

―企業はどのようにメンタルヘルス対策に取り組むべきでしょうか。

清水:まず中間管理職の人事考課項目に「部下のメンタルケア」を組み込むことです。経営者が「メンタルヘルス対策に取り組め」と漠然とした掛け声をかけても、ほとんど効果はありません。「人事評価」という具体的な動機づけがなければ、現場の管理職は動かないんです。

 次に中間管理職に対して、メンタル不全者への対応法を教える必要があります。たとえばメンタル不全者に絶対に言ってはいけないNGワードは「心の病気じゃないか」、「おかしい」など。このように心の病気について触れたり、相手を責めたりするような発言は、相手の信頼を失います。場合によっては、パワハラやセクハラと誤解され、最悪の場合、「あなたのせいじゃないか!」と相手の怒りを買い、訴訟に発展することもあります。一方、OKワードは「最近、体調がかんばしくないようだね」、「○○君の体が心配だよ。一緒に病院に行こうか」。このように相手の「心」ではなく「身体」の問題に注目したり、自分が部下を心配している姿勢を示すことが大事です。

 さらに、人事労務担当者のスキルアップも必要です。自分を責めるという「古典的」うつへの対応は、十分周知されていますが、他者を責めるという「新型」うつ対策には、人事労務担当者の高いスキルが必要になります。

休職していた従業員が職場復帰する際、どんな点に注意すべきか

―なるほど。では、休職していた従業員が職場復帰する際、どんな点に注意すべきですか。

清水:まず職場復帰のタイミングを慎重に見極めるべきです。その際に注意すべき点は、主治医の話を鵜呑みにしないこと。なぜなら主治医の多くは職場復帰の許可を早く出しがちだからです。主治医が許可を出すタイミングは「日常生活が支障なく送れる状態」になったときです。必ずしも「仕事が支障なくできる状態」ではない。実際、医師の判断に従って職場復帰したにも関わらず、メンタル不全を再発してしまうケースは非常に多いんです。ですから復職者と相談しながら、慎重に職場復帰のタイミングを決めるべきです。診断書上の「復職」と就業規則上の「復職」は法律的に違うことは、よく理解しておいた方がよいでしょう。次に、復職者への対応法です。よくある間違いは、復職者に甘すぎる対応をしてしまうこと。何度も遅刻を重ねている場合、それを許してはいけません。甘い対応をすると、余計に休みがちになりますし、周囲の従業員が不公平感を抱くようになります。だから職場復帰した従業員を特別扱いせず、なるべく他の従業員と同じように扱う必要があります。ただし、復帰当初から難易度の高い仕事を任せるのも無理があります。最初は資料作成、情報収集など、簡単な仕事から任せた方がいい。その代わり、必ず期限を守らせる。もし仕事が職場で求められるレベルでこなせなければ、再度、自宅療養してもらうことが大事です。

―清水さんは17年にわたり、中堅・大手企業20社のメンタルヘルス対策をサポートした実績があります。清水さんのように、心と身体の両方に精通した医師は非常に少ないそうですね。

清水:そうですね。そこで私が人の心と身体の両面から、企業に対してトータルでコンサルティングを行っているわけです。具体的には、主に休職者の職場復帰のサポートをしています。メンタル不全の休職者に定期的にカウンセリングを行い、半年から1年かけて職場復帰をサポートしているんです。当社のサポートによる職場復帰率(復職後1年以内に再休業をしない)は80%以上と非常に高い復帰率です。その他に、従業員のストレス対策と、上司や人事労務などの担当者への具体的な対応法の指導も行っています。ちなみに、ある企業で2年間サポートを続けたところ、新たなメンタル不全者はゼロになりました。さらに既存のメンタル不全で休業している社員を2年間で30%へと半減できた実績もあります。私は17年間の産業医の経験を通じ、まだまだ企業ではメンタルヘルス対策が不十分だと感じています。たしかにメンタルヘルス対策をしても、短期的に売上が上がるわけではありません。しかし中長期的に見れば、社員の会社に対する信頼感が高まり、生産性が向上するのは間違いない。今後も当社はメンタルヘルス対策を通じて、企業の生産性向上をサポートしていくつもりです。

清水 隆司(しみず たかし)プロフィール

1991年に三井化学株式会社に入社し、産業医として勤務。1999年に産業医科大学の産業医実務研修センターに助手として赴任。2002年に株式会社マイン メンタルヘルス研究所に入社。2006年8月に株式会社JPRON(ジェイプロン)・日本メディメンタル研究所を設立し、所長に就任。医学博士、順天堂大学医学部非常勤講師および産業医科大学医学部精神保健学の元非常勤講師でもある。

日本メディメンタル研究所(株式会社JPRON)

設立 2006年8月22日
事業内容 メンタルヘルスサポートサービス、復職・休職判定、メンタルチェック、新型うつやセクハラ・パワハラも含む人事労務担当者へのコンサルテーション、従業員や管理監督者に対する研修(体験学習も含む)、メンタルヘルスに関する労務トラブル対応
URL http://www.medi-mental.com
お問い合わせ電話番号 03-5404-3566

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