T&Tフィナンシャルグループ株式会社 代表取締役 田中 伸治

社長の再生こそ、真の企業再生

T&Tフィナンシャルグループ株式会社 代表取締役 田中 伸治

2008年の世界金融危機以降、企業を取り巻く経営環境は厳しさを増している。特に中小・ベンチャー企業の経営環境は厳しい。多くの企業が資金ショートのリスクを常に抱えている状態だ。実際、必要な時期に必要な資金を調達できず、黒字倒産に陥るケースも少なくない。では、自社のキャッシュフローが悪化した場合、経営者は何をすべきなのか。今回は、資金調達・企業再生支援のプロであるT&Tフィナンシャルグループ代表の田中氏に話を聞いた。

※下記は経営者通信4号(2009年12月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

―まず御社の支援領域を教えてください。

田中:当社は①資金繰り改善・資金調達コンサルティング、②企業再生コンサルティング、③CFO(最高財務責任者)業務のアウトソーシングの3つのサービスを提供しています。当社の特徴は、クライアントの内側に入り、あくまでも実務を支援する点にあります。単なるプランニングやアドバイスだけには留まりません。

 また当社には、各分野に精通した様々な業界の出身者が在籍しています。財務系コンサルティングファーム、大手監査法人、ベンチャーキャピタル、M&Aコンサルティングファーム、地方銀行など。この人財力を活かして、あらゆるニーズに対応した最適なサービスを提供することができるんです。

―この不況下、資金繰りに頭を抱える中小・ベンチャー企業が増えています。御社はどのようにクライアントの資金繰りを改善しているんですか?

田中:まずは企業の経営財務状態を把握・分析します。その上で事業モデルや財務状況に応じて、選択可能な資金調達手法をリストアップ。それぞれの実行可能性を徹底的に検証します。そして、当社のノウハウと人的ネットワークを活用して、資金調達の実現をサポートするんです。たとえば、投資家からの出資や少人数私募債の発行など。

 また、金融機関からの資金調達にも強みを発揮します。まず当社が中期事業計画書の作成を支援し、それを銀行に提出。そして、当社が銀行交渉にも同行し、今後の成長シナリオと計画値の根拠を説明します。その結果、新たな融資に成功した事例が多数あります。

 ただし、すでに深刻な経営難に陥っている企業は別です。営業キャッシュフローの黒字化が難しい場合、資金調達はただの延命処置に過ぎません。借金を返すために新たな借金を重ねても、根本的な問題は解決できない。この場合は、財務キャッシュフローを❝抜本的❞に改善します。

財務キャッシュフローを❝抜本的❞に改善する方法とは

―どうやって財務キャッシュフローを❝抜本的❞に改善するのですか?

田中:たとえば「会社分割(注1)」を活用します。会社分割で黒字事業と赤字事業を切り離し、2つの事業が共倒れすることを回避するわけです。また、事業が1つしかない場合でも、資産、負債、人材、契約などを分離・移転することができます。そして、黒字事業を新会社に移転することで、経営を継続することが可能となります。この会社分割には、基本的に債権者の承認は必要ありません。その他にも、M&A(事業譲渡・事業承継)、借入金の返済条件変更や債務の圧縮など、手法は数多くあります。ですから、たとえ危機的状況に陥ったとしても、財務キャッシュフローは改善できる。企業再生はできるんです。実際、当社が手掛けた多くの企業がこれらのスキームによって企業再生に成功しています。

(注1)会社分割:既存の会社を2つ以上の会社に分けること。事業に関する資産・負債・権利の全てまたは一部を、他の会社に承継させること。事業部門の法人化、不採算部門の分離などに活用されることが多い。

―なるほど。そもそも、なぜ田中社長は現在の事業を始めたのですか?

田中:過去の辛苦経験からです。私は数年前ある環境系ベンチャーに入社しました。オーナー経営者の情熱と人間性に惹かれたんです。しかし1年後、会社は新規事業に失敗。多額の債務を抱え、資金繰りに行き詰まりました。私は入社2年目にも関わらず、スポンサー企業を探し、民事再生手続きを申請。最終的に東証一部上場企業への事業譲渡を成功させ、プレパッケージ型民事再生を実現させたんです。しかし、この時に再生できたのは「事業」のみ。「人」、つまり経営者は再生できなかった。オーナー経営者は膨大な借金を抱え、病に倒れました。その後、再起することはできませんでした。真の意味で、私は経営者の力になれなかったわけです。この時に、中小・ベンチャー企業には財務戦略のプロが必要だと痛感しました。財務戦略のプロさえいれば、経営難に陥ったとしても会社を建て直せたかもしれない。そして、私はコンサルタントに転身することにしました。同じような悩みに苦しむ中小・ベンチャー経営者を救いたいと思ったんです。

 ですから、当社の企業再生は会社や事業の存続だけが目的ではありません。あくまでも会社と同時に「経営者の再生」を目指しています。

―たとえ会社や事業が再生しても、経営者が再起できなければ意味がないと。

田中:はい。「企業再生」という言葉には、ネガティブなイメージがあるかもしれません。でも、本来は会社と経営者が前に進むためのポジティブな言葉なんです。企業再生は早期の決断とその手法が重要です。決断が早いほど、再生スキームの選択肢は多く残っている。経営者は決して一人で悩まず、ぜひプロに相談してほしいですね。

田中 伸治(たなか しんじ)プロフィール

1968年、神奈川県生まれ。大手自動車関連メーカーの本社経理部に勤務後、新興上場企業、ベンチャー企業数社において経理財務責任者、株式公開準備責任者、CFOを経験。環境系ベンチャーでは同社のプレパッケージ型民事再生手続きをCFOとして推進し、東証一部上場企業への事業譲渡を成功させる。その後、独立系コンサルティングファームに入社。上場企業・ベンチャー企業の資金調達支援、株式公開コンサルティング、M&Aコンサルティング、企業再生コンサルティングなどを担当。わずか入社2年半で常務取締役に就任し、財務戦略、株式公開、企業再生チームの各部門を統括する。2008年に同社を退職後、T&Tフィナンシャルグループ株式会社を設立し、代表取締役に就任。2010年4月には著書「会社再生ガール」を出版。

T&Tフィナンシャルグループ株式会社

設立 2009年6月
資本金 900万円
従業員数 50名(グループ全体、非常勤含む)
事業内容 資金繰り改善コンサルティング、資金調達コンサルティング、企業再生コンサルティング、CFO人材の供給・アウトソーシングサービス
URL http://www.lrcg.co.jp
お問い合わせ電話番号 03-6685-6943
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