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株式会社鳥貴族 代表取締役社長 大倉 忠司

デフレに乗ったのではなく大衆市場を開拓したのです

デフレの波を受けて低価格路線に走った飲食チェーンの多くが業績低迷に苦しむなか、快進撃を続けているチェーンがある。「全品280円均一」という低価格の焼鳥屋を、発祥の地である関西圏をはじめ関東圏や東海圏に約500店展開する鳥貴族だ。その背景には、「仕方なく低価格にしたのではない。大衆市場を切り拓いたのだ」という代表の大倉氏の哲学がある。市場開拓の戦略や人心掌握術などについて、同氏に聞いた。

※下記は経営者通信42号(2016年12月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

革命児ダイエーのモデルを焼鳥店に応用する

―低価格をうたう飲食店の多くが苦戦するなか、鳥貴族の2016年7月期売上高は245億円超。2017年7月期には300億円突破を視野に入れています。好調の要因はなんでしょう。

 焼鳥という単一メニューにこだわってきたことです。低価格路線を掲げる飲食チェーンは多いですが、そのなかには「デフレだから仕方なく」という理由で低価格にしたところもあるでしょう。でも、私たちは違います。「焼鳥という料理を、より大衆のものにしたい」。そんな志が最初にあって、たどりついたのが「すべてのメニューが280円均一」だったのです。

 創業当時、私が参考にしたのは流通革命を起こしたダイエーです。私の出身地である大阪が発祥ということもあり、注目していました。スーパーをチェーン展開することで可能になる大量仕入れで、メーカーから商品の価格決定権を奪い、消費者に手ごろな価格で提供する。その大衆によりそったビジネスのあり方に魅了されたのです。

 焼鳥店に勤務していて、焼鳥が大衆に愛されるメニューであることを実感していた私は、「同じことが焼鳥店でできないか」と考えるように。それがいまから約30年前、1985年の創業のきっかけでした。

―単一メニューにこだわることで、原材料の仕入れによるスケールメリットが大きくなるわけですね。

 はい。でも、メリットは仕入れ面に限りません。店舗設計においても、単一メニューであればキッチンをシンプルにできます。多くのメニューを出す飲食チェーンの場合、すべてを店舗ではつくれない。そこで、セントラルキッチン方式を導入している。それによってコストダウンをはかれる効果もあるからです。

 でも、それでは各店舗への輸送の間に味が悪くなってしまう。単一メニューであれば、店でつくれる。つくりたてのおいしい焼鳥を提供できます。

「デフレだから仕方なく」低価格に走った飲食店は、どこかで顧客満足をそこなってしまうケースが多い。もともと高い価格で提供していたメニューを安売りしているのですから。低価格路線で私たちと競合しているように見えても、そう簡単にお客をとられてしまうことはないでしょう。

オペレーションの効率化と理念浸透で社員定着をはかる

―ほかに焼鳥という単一メニューにこだわることのメリットはありますか。

 店舗スタッフのオペレーションも単純化できます。接客に時間とアタマをよりつかうことができ、顧客満足度が高まる。一方で過剰な労働を減らし、スタッフのモチベーションを高めることもできるのです。

「デフレだから仕方なく」低価格路線を採用したところは、スタッフのモチベーションの維持に悩んでいる企業が多いでしょう。コストはかけられず、でも多くのメニューをつくって顧客満足度を高めなければいけない。いきおい、過剰な長時間労働といったスタッフの犠牲によってなんとか両立させることになります。これでは、モチベーションがあがりません。

―しかし、それは飲食業界では避けられないことではありませんか。厚生労働省の調査によれば、2015年の「宿泊業、飲食サービス業」の離職率は28.6%に達しています。

 当社の離職率はそれよりも低い数字で推移しています。決して避けられないことはありません。そのためには労働環境の整備にくわえ、経営理念を浸透させ、自分たちのやっていることに誇りをもってもらうことも大事。鳥貴族には「たかが焼鳥屋で世の中を変えたいのです」との文言で始まる理念があります。

 これが浸透しているあかしでしょうか、「鳥貴族大好き」という社員が多いですね。休みの日に、お客として鳥貴族に来て、一杯やっている社員がよくいますよ。

―ほかの飲食店では、あまり見られない光景ですね。どうやって理念を浸透させているのですか。

  私が言い続けるしかありません。そして、「きれいごとを言っている」と思われないように、私自身が言動を律してみせることが大切です。違法なことはもちろんですが、“グレー"な領域のことにも絶対に手を出さない。つねに正しい人間であろうと意識しています。

 もうひとつ重要なことがあります。それは、つねに「みんなの会社」という意識をもち続け、それを社員に向けて発信することです。私の言動から「鳥貴族はオレの会社だ」という意識が少しでもすけてみえたら、社員たちは理念を信じられなくなってしまう。

 2014年にIPOを果たしたのも、プライベートカンパニーからパブリックカンパニーになることによって、より「みんなの会社」であることを示したいという想いからでもあるんです。

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