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SBIホールディングス株式会社 代表取締役 執行役員社長 北尾 吉孝

グローバル戦略を立て直しそれでも中国に出よ

2015年7月の上海株暴落で、中国経済の減速は誰の目にも明らかになった。そんななかSBIホールディングス代表の北尾氏は「それでも中国に出るべきだ」と説く。同氏は孫正義氏の軍師として活躍した後、SBIグループをグローバルな総合金融グループとして営業収益2450億円を超えるまでに成長させた。中国経済減速のなかで、中小・ベンチャー企業の経営者がとるべき方策を北尾氏に聞いた。

※下記は経営者通信38号(2016年2月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

中国人の❝爆買い❞を逆手にとった進出も一策

―中国における2015年7月~9月期の実質GDP成長率は6.9%と、減速ぶりがあらわになりました。2016年以降はどうなりますか。

 引き続き、成長率は低下していくでしょう。三菱総合研究所の予測では2016年から2020年までの平均成長率は6.2%。これが10年後の2026年から2030年には4.4%まで低下するとみられています。大英帝国の宰相、ウィンストン・チャーチルは「成長はすべての矛盾を覆い隠す」との言葉を残しています。これまでの中国がまさにそんな状態でした。しかし今後、成長率が低下してくると、さまざまな社会矛盾がしだいに顕在化してくる可能性が高いと思われます。

 たとえば猛威をふるうPM2.5に代表される環境汚染。それから強権をもって推進した“一人っ子政策"の結果としての労働力人口の減少があります。政府や企業が環境対策を講じたり、労働力人口減少がさらなる人件費上昇をもたらせば、成長率をさらに押し下げる。かといって環境汚染を放置したり人件費を下げる施策を推進したりすれば、大衆の反発を招く。最悪の場合、共産党政権の崩壊による大混乱さえ起きかねない。それぐらい、中国情勢は厳しいといわざるを得ません。

―では、中小・ベンチャー企業は中国から撤退するべきなのでしょうか。

 いいえ。それでも中国は無視できない存在です。今後も海外戦略のなかで重要な位置を占め続けるでしょう。14億人に迫る巨大市場が隣にあるのですから。ただし、いままでのように人件費の安さを目当てに生産拠点をつくったり、高成長による消費拡大を見込んで販売網を広げたりといった発想は通用しなくなります。入念に戦略を練り、効果的に市場を攻略するべきです。

 たとえば、いま中国人の訪日観光客による❝爆買い❞がさかんです。それを逆手にとった進出戦略が考えられます。“爆買い”が起きる根本的な理由は、中国の国内で販売される消費財はニセモノや低品質なモノが多いことです。そこで品質が確かな日本のモノを買っていく。

 自分用や家族・親せき用に買うだけでなく、転売目的の購入も相当な量にのぼっているのです。

 それならば、日本における高度な品質管理を中国にもちこみ、日本製と変わらない品質で消費財を生産する工場を建てればいい。わざわざ日本に行かなくても“日本基準の品質”のモノが買えるようにすれば、大きな市場を開拓することも可能でしょう。

 とくにオムツや粉ミルクなどは有望です。2015年10 月、中国政府が“一人っ子政策”を廃止。「ふたり目の子どもをもうけてよい」と決めたからです。

TPP時代を見すえ自社に最適なグローバル戦略を

―生産財の分野ではなにが有望でしょう。

 たとえば環境への悪影響を低減するさまざまなモノやサービスがありえます。いま、中国政府は真剣にその対策に取り組もうとしているからです。

―TPP(環太平洋パートナーシップ協定)の締結に向けて参加国の合意ができました。非参加国である中国から、参加国であるベトナムやマレーシアに生産拠点を移すべきだという意見もあります。

 それもひとつの方策です。米国議会による批准という難関をクリアしなくてはなりませんが、TPPが発効すれば国内の中小・ベンチャー企業には大きなチャンスになるでしょう。経営戦略のなかに取り込むべき要素です。

 ただし、「人件費が安いし、米国に輸出するのに関税面で有利になるから」という理由だけで、たとえば中国からベトナムに生産拠点を移していいのか。よく考えてみる必要があります。生産したモノのおもな販売先が中国なら、ベトナムから中国へ輸出するコストがかかる。それを考慮すれば「中国で生産したほうが有利だ」ということもありえるからです。

 中国経済の高成長を前提にした「進出しさえすればもうかるだろう」という安易な考えはもう通用しません。中小・ベンチャー企業の経営者は改めてグローバル戦略を立て直す必要があります。どこで人材を確保し、どこで資金を調達し、どこから仕入れ、どこでつくって、どこに売るのか。自社の事業に最適な場所をそれぞれ選択する必要があります。

ネット金融の発展性を17年前に見抜いた

―2015年3月期の営業収益(連結、国際会計基準)が2450億円を超えたSBIグループも、グローバル展開に積極的な企業のひとつだと思います。進出先の経済成長が減速するといった外部環境の悪化に振り回されず、継続成長できる秘訣を教えてください。

「時間の関数」で売上が増えていく事業を展開していることです。私たちはネット金融事業を展開しています。たとえばSBI証券のネット取引の顧客層をみると、40代以下が6割以上になっている。これが対面取引では15%に満たず、反対に60代以上が7割近くを占めている。

 ここからわかることは、「対面取引中心の既存の金融サービス会社のほとんどは高齢者が顧客の中心だろう」ということです。一方、SBIグループは若い世代が中心。彼らはこれから収入を増やし、資産を形成し、親の遺産を相続していく。それにつれて、より金融サービスの利用が活発になるのは確実です。

 しかも、既存の金融サービスに比べ、SBIグループのサービスは利用手数料が圧倒的に低い。おもにネット上で取引することでコストを引き下げているからです。そのため、SBIグループの顧客が他社の金融サービスに乗り換える例は非常に少ない。結果として、私たちの売上は時間が経過するにつれて確実に増えていくというわけです。

―北尾さんはどうやってそんな有望な分野を見つけているのですか。

「思考の3原則」を実践しています。第1に根本的に考える。ものごとの本質を見抜くということです。第2に多面的に考える。さまざまな角度から眺めることで全体像をつかむのです。そして最後に、長期的に考える。長いスパンでみて、世の中がどう動くのかを見極めるということです。

 こうした思考法を実践していたから、私はまだネット金融の黎明期だった17年前に、それが「時間の関数」で売上が増えていく事業であると見抜くことができたのです。

経営者は古典を読んで先見性を磨け

―ほかに「時間の関数」で売上が伸びていく分野は、どんなものがありますか。

 たとえばバイオテクノロジーやライフサイエンスの分野でしょう。長寿化が進行すると、健康でいるために使われるお金が増えていくからです。そこで、SBIグループではこの分野の投資に注力しています。

 たとえばグループ会社のSBIファーマでは「ALA」というアミノ酸にかんする特許を多数取得しています。そして国内外の大学や病院・研究機関と提携し、医療や薬品へ応用する研究を進めています。

 ALAは、ヒトを含めた動植物すべての生物にあまねく存在する基本的な物質。それだけに応用範囲が広く、がん・認知症・糖尿病・マラリア・パーキンソン病などの治療に有望と考えられているのです。さらに、ALAを用いた健康食品の開発も進めています。

 こうした努力を結実させ、10年後にはグループの税引前利益の4割近くをバイオ関連事業で稼いでいると予想しています。

―中小・ベンチャー企業の経営者の多くは、売上がどんどん上がっていくような状況にはいないと思います。どうすれば打開できるのか、アドバイスをお願いします。

 そうした苦しい状況にあるときこそ、目先の利益を追ってはいけません。時代を見る目を養い、伸びていく分野を見定め、そこに注力するべきです。ひとことでいえば、先見性を磨くこと。

 そのためには、時代を超えて普遍性をもつ書物をひもとくのがいいでしょう。たとえば『論語』といった古典を読むことです。

                                                                                          

北尾 吉孝(きたお よしたか)プロフィール

1951年、兵庫県生まれ。1974年に慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村證券株式会社に入社。1978年に英ケンブリッジ大学経済学部を卒業。1995年にソフトバンク株式会社に常務取締役として入社し、孫正義氏の片腕としてソフトバンクグループの急成長を支える。1999年にソフトバンク・インベストメント株式会社(現:SBIホールディングス株式会社)を設立し、代表取締役社長に就任。現在は金融サービス事業やアセットマネジメント事業、バイオ関連事業などを幅広く事業を展開している。

SBIホールディングス株式会社

設立 1999年7月
資本金 816億8,100万円
従業員数 5,464名(連結)
事業内容 株式などの保有を通じた企業グループの統括・運営など
URL http://www.sbigroup.co.jp/

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