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著名経営者の経営者インタビュー

株式会社壱番屋 創業者特別顧問 宗次 德二

すべての情熱を経営に注ぎこみ率先垂範で背中を見せよ

宗次德二氏は、国内最大手のカレーチェーン店「CoCo壱番屋」の創業者である。2002年に引退するまで、壱番屋を創業から20年連続で増収増益に導いてきた。そして宗次氏の引退後も、同社の快進撃は続く。2005年には東証 一 部に株式上場を果たし、「CoCo壱番屋」は国内外で1200店舗(新業態を含む)を突破。今回は宗次氏に、増収増益を続けられた理由、経営者に必要な能力、運に対する考え方などについて聞いた。

※下記は経営者通信16号(2011年12月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

―20年間、増収増益を実現できた秘訣は何ですか?

宗次:経営者自身が経営に身をささげる。情熱のすべてを注ぎ込み、率先垂範で背中を見せる。これしかないと思います。私は53歳で会長職を退くまで、毎日徹底的に働いてきました。まず毎朝4時10分に起床して、4時55分には出社。お客さまからいただいた1000通以上のアンケートを3時間半かけて読み、その後に掃除や会議、店舗巡回をします。毎日、退社するのは18時~23時過ぎ。休日は年間15日くらいで、2004年には1日たりとも休まず、1年間で5637時間も働きました(笑)。これは1日平均にすると、約15時間半働いていた計算です。

―そこまで徹底的に働かないと、成功しないものなのですか。

宗次:私の独断と偏見かもしれませんが、会社経営はそんなに甘いものではありません。どんな経営者も、創業期の頃は必死に働きます。でも、少し経営が軌道に乗り始めると、だんだん遊び始める。やれゴルフだ、やれ海外旅行だと。そして「代表取締役社長」の名刺を持って社外に友人をたくさん作り、毎晩のように自らの欲求を満たす。それで業績が上がればいいのですが、大抵は、業績横ばいかジリ貧となります。社員の心が離れ、やる気も失せてしまうでしょう。

―宗次さんほど経営に身をささげるのは難しいと思います。どうすれば経営に集中することができますか。

宗次:目標を持つことです。「地域で一番の店にしよう」、「お客さまからの期待に応えよう」と心から思えばいいのです。それにともなって数値目標を設定し、その達成を目指す。そうすれば、よそ見なんてしている暇はなくなります。ちなみに、目標の立て方にもコツがあります。あまりにも長期スパンの目標、達成が難しすぎる目標はダメです。1年くらいのスパンで、頑張ればギリギリ達成できるくらいの目標を立てるべきです。少なくとも「昨対比の売上・利益を越えること」は目標に据えた方がいいでしょうね。私の経験から言えば、すべては日々の積み重ねです。毎日必死に頑張っていれば、10年、20年経った時に夢のような奇跡が起きるのです。実際、壱番屋は創業から11年後に100店舗、20年後には500店舗を突破しました。

―宗次さんは30年以上、毎日の早起きと掃除を続けています。なぜ何十年も継続することができたのですか。

宗次:先ほど話したように、強い目標があったからです。本来、早起きはいいことずくめなんです。朝は誰からも邪魔されないので、仕事がはかどる。様々なアイデアも出やすい。でも、早起きは日々の苦難との戦いです。経営者に求められるのは❝遅寝早起き❞ですから、習慣にはできません。何十年続けても朝は大変です。今日も3時55分に起きましたが、毎日決めていないと崩れます。ですから、この姿勢は口外するようにしています。人に言ったからには実行しなければいけないので、毎朝早く起きるわけです。

―掃除も毎日続けるのは難しいですよね。

宗次:ええ。毎日掃除をやったからといって、半年や1年くらいで何かが変わるわけじゃありません。誰が褒めてくれるわけでもないし、業績が上がるわけでもない。でも5年、10年やり続けていると、いい現象が起きるようになります。もちろん、毎朝良いこともありますよ。街の景観が美しくなるし、行き交う人とあいさつを交わすことができる。もう朝から元気になって、9時の始業時にはパワー全開です。

―宗次さんが考える「経営者に必要な能力」を教えてください。

宗次:私自身に秀でた能力はありませんただ一生懸命に仕事をして、その経験から学んでやってきただけです。でも能力と言えるかどうかわかりませんが、「これだけはこだわり続けるぞ」という気持ちは人一倍もっています。早起きでも掃除でも、自分が良いと思ったことをやり続ける力ですね。

あとは誠実さと真面目さが大事だと思います。これらの姿勢は直接的には会社の業績に結びつきませんが、経営を続けるなかでは絶対に必要です。経営者の姿勢が悪ければ、継続的な成長はできません。姿勢さえ良ければ、後で能力はついてきます。

一軒の喫茶店から始まり東証一部上場企業へ、その成長を支えてきたものとは

―壱番屋の成長を支えてきたのも経営者の姿勢なのでしょうね。

宗次:誠実に真面目に地道に経営を続ける。私にできることは、それしかありませんでした。たとえば、FC展開をしたら加盟店さんに利益をあげ続けてもらう。ロイヤリティは一切とらず、本部だけが儲かるような仕組みはつくりませんでした。その他には、ライバルに一喜一憂しないことが大事です。価格競争にも参加せず、値引きは一切しない。自分たちはお客さまの方だけを向く。そういう独自の経営を貫いてきました。

―競合企業の動向は気にしない方がいいのですか?

宗次:自己流がいいと思います。FCシステムも自己流を貫いた結果、日本全国に加盟店が広がっていきました。お互いが成功する仕組みをつくれば、絶対にうまくいくという信念があったからです。そのかわり、誰よりも真剣に一生懸命取り組まないとダメです。自己流を続けると、しなくていい失敗をする確率が高い。時には回り道もしますが、その経験を糧にすればいいのです。

―壱番屋は37年前に一軒の喫茶店から始まり、現在は東証一部上場の大企業に育ちました。どのように家業から企業へと脱皮していったのですか。

宗次:業績が伸びていく過程で、自然と組織になっていきました。企業成長にしたがって、そのときどきに必要な手を打ってきた結果です。私は毎日寝床に入るまで、仕事のこと以外は考えませんでした。何か思いついたらメモを書く。どういう組織にすべきか、どういう部門が必要か、人材採用はどうすべきか。そういったことを四六時中考えていましたから、大きな失敗はありません。

―多くの経営者が苦労と思うことを、宗次さんは苦労だと感じていないのかもしれませんね。

宗次:うーん、どうでしょう。ただ中小企業の経営者の話を聞くと、もうちょっと一生懸命やったらどうですか?と疑問を感じる場合が多いですね。大変だ、大変だ、って言う割にはのんきにやっている。改めて創業時の原点に戻って、不眠不休で寝食を忘れて打ち込めばいいのです。

―初心に戻れないのは、真剣さが足りないのでしょうか。

宗次:会社の業績が伸びて余裕が出てくると、経営以外のことを楽しもうとするんです。経営だけが人生じゃないと。いつの間にか考え方が逆転して、自分や家族が幸せになればいいと思ってしまう。でも、それが悪いわけじゃないですよ。価値観の問題です。私は業績を伸ばし続けて、社員の給与を上げたり、日本中のお客さまに喜んでもらうことを楽しみにしてきました。これが経営者の一番の幸せだと思います。

―経営者の喜びは経営そのものにあるべきだと。ところで、壱番屋は「ニコニコ・キビキビ・ハキハキ」という特徴的な社是を掲げています。そういった言葉を単なるお題目で終わらせず、どうやって現場に浸透させているのですか。

宗次:まずトップが100%こだわることです。どうしても役員は95%、部長は90%と、だんだん想いが希薄になっていきます。だから、リーダーシップを発揮して、経営者がこだわり続ける。そうすれば、少しずつ現場にも浸透していきます。さらに、壱番屋では各店舗で社是を毎朝唱和しています。中国の店舗でも日本語でやっています。ただし、流れ作業の日課になってはいけません。何も考えずに大声で叫べばいいわけじゃない。一言一言に感情を込めなければ、単なる早口言葉になってしまいます。

―最後に、経営における「運」について聞きたいと思います。宗次さんは「運」という要素をどのように捉えていますか?

宗次:よく夫婦二人で「私たちは運が良かった」と話すことがあります。まず運が良かったのは、喫茶店を始めてこの業界に関われたことです。私は26歳で不動産業を辞めて、夫婦二人で喫茶店を開きました。そして、お客さまに来ていだたき、感謝の気持ちが生まれた。その3年後にカレーライスが人気メニューになった。こんなに売れるなら専門店を出そうと考え、作ったのが「CoCo壱番屋」です。

ですから、一番運が良かったのはカレーにめぐりあえたことですね。地域も季節も性別も関係なく、ずっと同じ商品が通用する。だから、このまま全国で販売しようと、多店舗展開を進めてきました。その結果として、1200店舗超のチェーン店に成長したのです。

―宗次さんが考える「運」とは、サイコロを転がすような確率論的なものですか?それとも、経営姿勢や努力によって運がめぐってくるのでしょうか?

宗次:努力の要素はあると思います。当時から喫茶店は繁盛していましたが、もっと売上をあげるために出前をしようと考えたんです。でも出前メニューがサンドイッチと焼きそばだけじゃ物足りないので、ご飯ものが必要になる。そういえば、新婚の時に食べていた家内のカレーライスが美味しかった。あれをお客さまに召し上がっていただこうと考えたのです。

もし現状で満足していたら、そもそも出前を始めていません。もし工夫をしなかったら、出前でもサンドイッチと焼きそばしか出していなかったでしょう。やはり、向上心と工夫が積み重なった結果、運にめぐりあうのだと思います。

宗次 德二(むねつぐ とくじ)プロフィール

1948年、石川県生まれ。高校卒業後、八洲開発株式会社を経て、1970年に大和ハウス工業株式会社に入社。1973年に独立。不動産仲介業を経て、1974年に喫茶店「バッカス」を開業。1978年にカレーハウスCoCo壱番屋を創業する。1982年に株式会社壱番屋を設立し、代表取締役社長に就任。1998年に同社代表取締役会長に、2002年に創業者特別顧問に就任。2003年にNPO法人イエロー・エンジェルを設立し、理事長に就任。2007年にクラシック音楽専用の「宗次ホール」を名古屋市内にオープンした。著書に『日本一の変人経営者』(ダイヤモンド社)などがある。

株式会社壱番屋

設立1982年7月
資本金15億327万円
売上高721億円(2011年5月期)
従業員数729名(2011年5月末)
事業内容■店舗数/1,289店(2011年10月末現在)※新業態含む
国内1,226店、海外63店
URLhttp://www.ichibanya.co.jp

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