―御社の事業内容を教えて下さい。
松嶋:人材研修事業と組織改善コンサルティング事業の2つが柱です。人材研修事業は従業員が自走する仕組みを高めるのが特徴で、当社ではそれを「考働力開発」と呼んでいます。組織改善コンサルティング事業は主に現場改善と営業力強化を目的としたものです。
ご相談いただく内容としては、人材研修事業のほうが多いですが、現場改善ニーズが圧倒的に多いため、人材研修から始めて現場改善のコンサルティングへと進むケースが多いです。
営業力強化でいえば、営業の管理活動から営業担当者の実践力まで幅広くカバーしています。ご相談いただく企業様の業種は多岐に渡っており、メーカーから飲食店までさまざまです。
岡部:私たちは現場の細かいところよりも、むしろ営業の仕組みづくりから営業スタッフの強化を図る場合や、組織全体の変革だけでなく、事業構造の変革なども担当しており、より上流の概念から入っていくことが多いです。
現在のメインのお客様は大手通信グループで、昨年から8000人超の社員の人事制度の改革など、人材に関わる部分も請け負っています。このプロジェクトだと最低でも3~5年の時間を必要とします。
私たちの仕事はお客様に考え方をご提案しながら一緒に変革していくので、実は小さな会社のほうが大変なのです。私たちが細かい部分まで入り込まなければならないからです。その点、大手の場合は人材が豊富ですから、大きな仕組みさえ作り上げれば、あとは組織としてそれに従って動いていただくことが出来ます。
課題解決に徹底的に向き合うことが、プロとしての使命
―人材研修や組織改善に関するサービスを導入するにあたり、気を付けなければいけない点をお話し下さい。
岡部:まずはトップがどれだけ本気かという点です。
我々は人材研修の導入にあたって、業績向上を求める企業様には「トップ自ら研修を受けてください」と話しています。中間管理職の方々が研修を受けられるだけでは効果が出ません。トップ自ら議論に入り受注の仕組みに関与することで、1年から1年半で営業利益が倍になった企業もあります。
一般論として、従業員にアンケートをとると、「今のままでよい」が50%、「変わったほうがよい」が50%。とくに大手は現状のままでも倒産のリスクは低いので、従業員は変化を嫌がる傾向があります。だからこそ、トップの本気度が試されるのです。
松嶋:結果の見えないものにお金を払いたくないという経営者がいらっしゃいます。とにかく安い研修会社を選び、実際に研修を受けたら「こんなものか」と研修自体をあきらめてしまうケースが多くあります。こちらがあらかじめ用意しているカリキュラムをカスタマイズせずにそのままお願いされることもあるのですが、それはどんな研修にしたいのかが明確になっていないということです。結局は、何が課題で何をしなければならないのかを、経営者自身がよくわかっていないとダメなのです。
岡部:目的と手段が整理されていないというケースにも気をつけていただきたいです。
研修を実施すること自体が目的化され、「従業員の意識を変えたい」など本来の目的からそれてしまうケースです。
研修はわずか数日ですから、研修を活かす土壌があるかをまずは確認してみてください。
参加者の直属の上司がどれだけ研修について理解しているか。研修で学んだことを継続してやっていくという意識と体制があるかどうか。研修を受けさせて、参加者に「がんばれ」と言うだけでは、研修を活かす土壌とはいえません。
―御社のサービスの強みや特徴についてお話し下さい。
松嶋:私たちが提供している中で「4つの着眼点」という考え方があります。
事業・組織において、この4つのポイントを抑えれば企業成長するという考え方です。
1つ目が働く人の意識、すなわちモチベーションです。2つ目は作業の手順が簡潔・明瞭かどうかということ。3つ目は「5S(※)」です。4つ目は移動・動作にムダがないかどうかということです。
どれもシンプルなことばかりですが、ずっと同じ会社で仕事をしていると、気づかないことが多くなるのですね。「4つの着眼点」の中でも特に多いのが、4つ目の動きのムダです。毎日同じやり方を繰り返していると、それが染み付いて「標準」になってしまいます。そうした点を外部の私たちが客観的に提示するわけです。
岡部:大手でもそうした事例は山のようにあります。例えば、打ち合わせ時間になってからデスクを立ち上がって会議室に集まり、会議室に集まってからも雑談をしてから本題に入るといったケースです。これだけでも、数分から多いときで10分以上の時間がかかっています。これは年間コストで考えれば膨大な無駄になりますよね。
他にも営業担当者の場合であれば、電話でのアポ入れのときにヒアリングできることもありますし、また、実際に訪問しなくても済むケースだってあります。全国的に建設工事をされている9000人の会社のケースですと、各現場単位で必要な部材を発注しているので、少しずつ余るわけですが、全社的にはすごい量が余っているにもかかわらず、現場単位では少量だから気づかない。また、稟議を取るのに、わざわざ車を走らせてもいる。その会社のムダを見積もったところ、年間97億円にも昇りました。半分削減しても単年度で約50億円の経費削減です。
松嶋:40人くらいの小規模な会社の場合ですが、キャビネットファイルの扉を外しただけで、節約できた時間削減工数は年間50万円でした。
扉を開けて書類を出して、また扉を閉めるという作業をストップウォッチで測り、それを年間で何回やっているかを計算してコスト換算したものです。作業の手間が省ければ、その分の残業が減ります。それをきっかけに、その会社はスチールラックを取り払って、自分たちでひな壇を作って書類棚にした結果、手前のものをずらさなくても良くなり、作業効率が格段に向上しました。こういった細かいところに着目することが大切なのです。
※5Sとは、整理・整頓・清掃・清潔・躾のことです。
事前の打ち合わせに時間をかけ、時には経営者に耳の痛い話も
―上記でお話し頂いた強みや特徴が提供できる理由をお話し下さい。
松嶋:大きくは前職時代の経験が多く関係しているからだと思います。私はもともと、メーカーで17年間勤務しており、生産の現場を長年見ていました。そういった現場では日常的に膨大な無駄が発生していました。私も初めは疑問を持たない事も多かったのですが、より効率的に、より生産的にするためにはどうしたら良いのかを考え始めたときに様々な“無駄”や“コスト”が発生している事に気づきました。
ただ、そのような事実は経営者はもちろん、そこで働いている人も全く気付いていないのが現実です。
岡部:あとはお客様の声に耳を傾けていることでしょうか。私たちはたった1日の研修を行うだけでも、1週間以上の打ち合わせをさせてもらいます。目的の確認や研修後はどうするかなど、ブレがないようにお客様の意向を確認して何度も摺合せを行います。一般的に事前にこれだけ時間を費やす必要は無いのかもしれませんが、同じ企業は2つとしてこの世には存在しませんので、我々はお客様の考え方や何を解決したいのか。というのを社長と徹底的にディスカッションします。ときには「社長が一番問題です。」とか「社長が変わらないで、どうして社員が変わるのですか」と、経営者に耳の痛い話もはっきり言うこともあります。
―最後に人材に纏わる悩みをお持ちの経営者にアドバイスをお願いします。
岡部:お客様に対して、私は必ず「どう変えたいのですか」と聞きます。それに対して回答がないと私たちは何も提供できません。どうしていいかわからないというのは、何も考えていないということだと思います。今どうしたいのか、あるいは2~3年後にどうしたいのか、まずはトップ自身が会社をどうしたいのかというのを明確にしていただきたいですね。
松嶋:まずは「悩む」のではなく「考え」ましょう。
悩んでいる間は経営の仕事自体がストップしてしまうので、その時間がもったいないと思います。悩むのではなくどうしていくかを考えて解決していきましょう。その中で我々にお手伝いできることがあれば最適な解を一緒に考えていきたいですね。