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法律事務所アルシエン 共同代表パートナー/弁護士 清水 陽平

ネット誹謗中傷を削除し名誉回復を図るための盾と剣

取引先の態度がヨソヨソしくなった、内定辞退者が急増した―。ネット上の誹謗中傷により、不利益を受けた経験のある会社が増えている。「ネット住民」による悪意の拡散という愚かな行為は許せないが、対処を誤り、被害を拡大させているケースも少なくない。そこで、この分野の第一人者である弁護士の清水氏に、ネット時代を生きる経営者が知っておくべきリスクマネジメント法を聞いた。

※下記は経営者通信35号(2015年2月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

いやがらせのカキコミを 繰り返す人物は特定できる

―ネット誹謗中傷について、最近はどのような傾向がありますか。

 情報拡散スピードが速いSNSの特性を悪用した事例が目立ちます。閲読者にリツイートなどを呼びかけ、誹謗中傷の拡散をねらうのです。

 そうなってから手を打ってもブランド価値や企業イメージの回復には相当の時間とコストがかかります。SNSに限りませんが、ネット上で自社を誹謗中傷するカキコミを発見したときは、すばやい対処が欠かせません。

―どのような手を打つべきですか。

 まずカキコミを削除し、拡散を食い止めるため削除依頼を検討します。削除は裁判を使わない方法もあり、理由さえしっかりしていれば応じてくれるところもそれなりにあります。類型的に見て応じてくれないサイトについては、「投稿記事削除仮処分命令」を裁判所に申し立てます。仮処分決定が出れば、さすがに削除してくれます。

 また、いやがらせのカキコミを繰り返す人物については、本人を特定する法的対処を講じます。

―その方法を聞かせてください。

 サイト運営会社などを相手どって「発信者情報開示請求」の仮処分を裁判所に申し立てます。決定が出てIPアドレスが開示されれば、次はプロバイダに対してプロバイダ契約者の住所・氏名の開示を求める裁判を提起します。勝訴すれば開示してもらえ、開示されたあとは今後、カキコミをしないことの誓約を求めたり、損害賠償請求のほか、執拗に誹謗中傷を繰り返すなど悪質な場合は刑事告訴をしていきます。

 開示請求は、2度の裁判が必要になるため、短くても半年程度はかかることに注意する必要があります。裁判が必要なのは、プロバイダからすれば個人情報を開示するわけなので、誤って開示してしまえば逆に訴えられてしまうリスクがあるからです。また、時間の制約があることにも注意が必要です。カキコミから3ヵ月経過するとログが削除される関係上、本人を特定する手がかりを失ってしまうからです。

感情的な対処は炎上を招くなど被害拡大を誘発

―そのほかに注意点はありますか。

 裁判所への申立など一連の対処には法的手続きが不可欠なので、弁護士に相談すべきです。特に、GoogleやTwitter、Facebookなどの海外法人に対する請求に関しては、ノウハウがないと太刀打ちできないと思うので、実績ある弁護士への依頼をおすすめします。

 また、カッとなって感情にまかせた対応は絶対にしてはいけません。火に油を注ぎ、被害を拡大させる危険性すらあるからです。

―やってはいけない、悪い例を教えてください。

 ありがちな失敗は、誹謗中傷への反論。「キチンと説明したい」「正しいことを伝えたい」との気持ちはわかりますが、ネットでは反応したこと自体がおもしろがられ、炎上や祭りを招くきっかけになるからです。また、警察に相談しても結構ですが「警察に通報しました」など、そのことを振りかざすようなカキコミを返すのもダメです。逆に無視して放置するのもよくない。時間の経過によってIPアドレスが特定できなくなったり、誹謗中傷のカキコミがコピペで拡散して手の施しようがなくなるからです。

 ネット誹謗中傷から会社を守るには、感情的にならないことが非常に大切です。カキコミの削除をサイト管理者などに請求してもよいですが、管理者は掲示板という「場所」を提供しているだけに過ぎず、事情がわからないことも多いため、「とにかく消せ」という感情的対応をすれば、反発を買う場合もあります。足元を見つめ直し「カキコミ内容が事実かどうか」を改めて確認するくらいの心構えが必要でしょう。

事実なら冷静に受け止め是正することが長期利益に

―なぜ事実確認が必要なのですか。

 根拠のない誹謗中傷は違法ですが、事実をもとにしたカキコミは、厳しい指摘や論評の範囲といえることが多いからです。不快な内容であっても、意見を受けつけない企業は社会から支持されず、継続経営が困難になるのではないでしょうか。「事実なら受け止め、悪い部分は是正する」。それが結果的に長期的な利益になると私は思います。

清水 陽平(しみず ようへい)プロフィール

2004年に早稲田大学法学部を卒業後、2006年4月に最高裁判所司法研修所に入所。2007年9月に司法研修所を修了後、都内準大手法律事務所に入所。都内コンサルティング会社を経て、2010年に法律事務所アルシエンを開設。著書に『ホームページ担当者が知らないと困るネットショップ 法務と手続きの常識』(ソシム、共著)、『民事保全の実務』(創耕舎、編著)などがある。東京弁護士会の弁護士向け研修講座「ネット中傷への対処法」の講師を担当するネット誹謗中傷対策の第一人者。テレビ、ラジオ、大手新聞など多数のメディアに出演・寄稿している。

法律事務所アルシエン

URLhttp://www.alcien.jp/
お問い合わせ電話番号03-5510-8255(受付時間 平日10:00~18:00)
お問い合わせメールアドレスinfo@alcien.co.jp

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